今年の第36回東京国際映画祭でも、[ワールド・フォーカス:台湾電影ルネッサンス2023]という特集が組まれ、その健在ぶりを示した台湾映画。中でも『ミス・シャンプー』で、文字通り抱腹絶倒の思いを味わった方も多かったのでは、と思います。今夏香港で見た時は、「も~のすっごく面白いけど、台湾映画はなかなか日本の配給さんは買ってくれなくて、公開までは行かないからな~」とこちらに思いっきりネタバレを書いた私ですが、TIFFでの好評ぶりなら、配給さんが付くかも、です。下は香港の映画館にあった、『ミス・シャンプー』の宣伝コーナーです。
そんな台湾映画の勢いの土台となっている諸側面のうち、監督の活躍ぶりを中心にして、ここ20年ほどの台湾映画の歩みを追った本が出版されました。石坂健治監修、台湾文化センター&日本映画大学共同制作「台湾映画 ポストニューシネマ時代の監督ガイド」です。残念ながら市販本ではなく、また総ページ数も80ページというブックレットと言った方がいいかも知れない本なのですが、中身は超充実! まずはいただいた書影と目次を付けて、簡単にご紹介しておきます。
<目次>
台湾文化センターからのご挨拶
監修者のことば 石坂健治
台湾ポストニューシネマの時代を観る 稲見公仁子
台湾映画いまむかし 四方田犬彦×垂水千穂 司会:石坂健治
台湾ポストニューシネマ監督名鑑 稲見公仁子 石坂健治
名鑑掲載監督の日本上映記録一覧
近年の台湾映画に思うこと 市山尚三×暉峻創三 司会:石坂健治
台湾映像業界に生かされた日本人俳優の四半世紀 蔭山征彦
台湾ホラー映画と母と娘 赤松美和子
「こよみ」から観る台湾映画 栖来ひかり
わが偏愛する台湾映画ベスト3
オールタイム/ポストニューシネマ時代
稲見公仁子 四方田犬彦 垂水千穂 石坂健治 市山尚三
暉峻創三 蔭山征彦 赤松美和子 栖来ひかり
日本映画大学と台湾の縁
台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター
台湾西門町の映画館街(2017.11 by Cinetama)
2つの鼎談だけでもすごい顔ぶれでしょう? そして、これがまた面白いのです、いろいろ裏話も入っていて。5人の方それぞれに、台湾映画に関する「時代の証言者」なんですね。さらに、稲見公仁子さんと石坂健治さんによる「台湾ポストニューシネマ監督名鑑」も超充実。これまでの台湾映画の20年がよーくわかると共に、今後10年は役に立ってくれそうです。少々残念なのは、好評につき現在はこの本が少々入手困難なことで、そのあたりの事情は東京国際映画祭のこちらのサイトをご覧下さい。全国の台湾映画ファンの皆さん、しばらくお待ち下さいね(福岡や大阪辺りから、「ほしいよぉ~」「読みたいよぉ~」という声が聞こえてきそうな気がする...)。いっそこれを元に、ページ数をもっと増して監督顔写真等も入れ、市販本にして下さってもいいのでは、と思います。アジア映画に関心のある出版社の皆様、ぜひ企画書作りに走って下さい!