久々に、台湾映画のご紹介です。台湾版『お葬式』とでも言うべき、『父の初七日』。ほんとに台湾らしい、暖かみのある映画でした。まず、データをどうぞ。
『父の初七日』 公式サイト(すぐに予告編が始まります)
(原題:父後七日/2009/台湾/92分)
製作・監督:王育麟(ワン・ユーリン)
原作・脚本・監督:劉梓潔(エッセイ・リウ)
主演:王莉[雨+文](ワン・リーウェン)、呉朋捧(ウー・ボンフォン)、陳家祥(チン・ジャーシャン)、陳太樺(チェン・タイファー)、太保(タイ・パオ)
※3月3日(土)より、東京都写真美術館ホール、銀座シネパトスにてロードショー
お話は、主人公であるキャリア・ウーマンのお父さんが死んだところから始まるのですが、このお父さんがとても大らかでステキなお父さんなのです。演じているのは、ジャッキー・チェン映画でお馴染みだった太保(タイ・パオ)。昔は広東語発音で、「タイ・ポー」と書かれていましたね。『悲情城市』 (1989)の出演以降台湾映画やドラマへの出演が増え、今ではすっかり台湾の俳優として活躍しています。ちょっと粋というか不良っぽくて、家族を笑わせるのが大好きなお父さん。ピッタリの役どころです。
© 2010 Magnifique Creative Media Production Ltd. Co. ALL rights reserved
そのほかの俳優では、道教の道士を演じる呉朋捧(ウー・ボンフォン)ぐらいしか顔を知らなくて、それだけにお話がやけにリアルに感じられました。台湾では、亡くなってから告別式までが3日~1ヶ月と、占いによって葬儀の日が左右されるため、人によってお葬式までの期間がまちまちなのだそうです。この映画では、自宅での通夜のような儀式の後納棺をし、さらに離れた場所に葬儀場を設営して、そこに弔問客が訪れたりした後に7日目で出棺、となっていました。それが、「父が亡くなってからの7日間」という原題になったわけで、邦題の「父の初七日」も初七日の法要のことではなく、「亡くなってからの七日」という意味なのです。日本とは風習が違うので、ちょっとわかりにくいですね。
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その7日間に起こった様々なことが描かれているのですが、泣き女の存在とか、誰か弔問客が来たら娘がその面前で泣いて見せなくてはいけないとか、ご本人たちは大まじめにやっているのに端から見るとコメディ、というシーンががいっぱい出てきます。お供物タワーを葬儀場の入口に建てるのにもびっくりで、それが倒れてきたりともう大変。そんなこんなですが、それでも亡くなった人を悼み、無事に天国(仏教も入っているので極楽かしら?)へ行ってほしいと願う親族の気持ちがとても丁寧に描かれています。
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それもそのはず、これは原作者劉梓潔(エッセイ・リウ)の実体験らしく、原作者自らが監督もした結果、観客の心にしっくりくるお話に仕上がったようです。娘役に映画初出演という女優らしからぬ王莉[雨+文](ワン・リーウェン)を起用したのも大成功。前述したように、リアリティがぐっとアップしています。
この映画を見ていて、昔台北で葬儀の車列に行きあったことを思い出しました。きれいな花飾りの車だな、と思って寄っていったら、何とこれがお葬式だったのです。土地土地によって随分違うのねー、と思ったものでした。
そんな台湾の薫りが、この映画の中にはいっぱい詰まっています。特に、道士さまとそのパートナーの女性阿琴(張詩盈/ジャン・シーイン)のエピソードは、どれもこれも台湾らしくて魅力的。台湾の暖かさ、懐の深さを感じたい方は、ぜひご覧になって下さいね。
台湾映画といえば、大阪アジアン映画祭で「セデック・バレ」が上映されるんですね~去年台湾に行った時にやっていたので、2日かけて前編・後編とも見たのですが、迫力があってとてもよかったです。族長のおじさん(おじいさん?)が渋くてめちゃめちゃカッコよかった
日本語字幕で見たいけど~、大阪まではちょっと行けないです…TIFFに来てくれないかしら…
香港映画祭も大阪だったんですね。ぜひ東京でも開催してほしいです
『父の初七日』のいわく因縁(?)も書いて下さってありがとうごさいます。そうなんです、やっと公開になってよかったです~。
『セデック・バレ』、大阪でご覧になる方は超ラッキーですね。私も見たかったですー。TIFFでの再上映を望む! 今回の大阪アジアン映画祭は、いつもにも増して「東京での再上映希望」作品が多いです。