アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

ルナナまであと何キロ? 『ブータン 山の教室』へ行こう!<3>

2021-04-15 | 南アジア映画

行ってきました、『ブータン 山の教室』へ。平日の昼間の上映だったのですが、結構お席が埋まっていてびっくり。私と同世代のシニアの方が多く、男女カップルがかなりの割合を占めていました。上映中の岩波ホールは、感染予防のために席を空けて座るようになっているのですが、その配置に工夫がしてあって、思わず座席表をパチリ。

こんな風に、真ん中のパートはカップル席、両翼は主としてお一人様席で、両翼部の前列と後列はカップルで座れるようになっています。工夫してあっていいなあ、と思っていたら、困っていた方が出現。何と3人組でいらしていた方で、結局両翼の一人席に、一人と二人で2列に分かれてお座りになりました。開映前のおしゃべりがしにくそうでしたが、おしゃべりしない方が感染予防になるので、これも劇場側のアイディア勝ちというところです。上の座席表で、黒くなっている席には右横写真のようなシートが掛けてありました。

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『ブータン 山の教室』は風景が本当にきれいなので、大きなスクリーンで見たかったため劇場に行ったのですが、新しい発見もいくつかありました。その1つが「ドマ」。偶然にもこの映画の配給会社もドマ(DOMA)なのですが、ブータンの「ドマ」はビンロウジュの実のことです。ウゲンが赴任するためにバスで首都ティンプーを離れる時、見送りに来た友だちが「持って行けよ」とビニール袋に入れたゴロッとした果実の小山をくれます。台湾の街中で売っている檳榔(ビンロウ)のように青くないので、干したものではと思いますが、これをそのまま噛んだり、インドのパーンのように葉っぱに包んで噛んだりするようです。こちらに説明がありますが、あまりおいしいものではなさそうで....。そのサイトの最後に出てくる「かっちかちのチーズ」はヤクのミルクから作ったチーズでは、と思うのですが、そう言えば昔、食べたことがあります。勤めていた研究所のチベット語研究がご専門の先生から、チベット土産にいただきました。「固いですぅ~」と涙目になったら、「それはね、なめるものなんだよ」と教えていただいたのでした。映画の中に登場したヤクのチーズは、歌の上手な娘さんセデュが村長のお宅に持ってきたもので、もっとやわらかくておいしそうでした。ほかにもおいしそうな晩ご飯がいろいろ出てきますので、それが盛られている器と共に注目していて下さいね。

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ビンロウと言えば、本作のパオ・チョニン・ドルジ監督の奥様は台湾人で、お名前はステファニー・ライ(頼梵耘)さんと言い、本作のプロデュ-サーでもあります。台湾や香港の記事を見てみると、ステファニーさんの父は、かの有名な劇作家で、映画『暗戀桃花源』(1986)などの監督でもある頼聲川(スタン・ライ)なのだとか。パオ・チョニン・ドルジ監督のインタビューによると、お子さんが二人いて、台湾で育ててらっしゃるそうです。ここ数年、台湾や韓国など東アジアの女性プロデュ-サーが、南アジアの映画人に力を貸して作品作りに貢献しているケースが目立ちます。みんな英語が達者で、南アジアの若き映画作家たちも英語でコミュニケーションできるため、大きな映画祭に招かれるような秀作が東アジアと南アジアとのコラボで何本も誕生しているのです。本作も、その1本と言えると思います。なお、台湾や香港での公開題名は『不丹是教室(ブータンは教室)』で、「これぞまさに最高学府」というキャッチコピーもあって笑ってしまいました。確かに、標高が一番高いところにある学校かも知れません。

中身がぎっしりのパンフレットも買いました。こちらでも思わず笑ったのは、最後の出演者一覧にちゃんと「ヤクのノルブ・・・・・ナカ」と載っていたことで、「動物は傷つけていません」どころか、「動物も出演者の一人です」ですね。劇中で歌われる「ヤクに捧げる歌」の歌詞も載っており(残念ながら訳詞だけ。ローマナイズの歌詞もほしかったです)、この歌ではヤクの名は「ハダル」。「ノルブ」は「宝」の意味でしたが、「ハダル」や「ナカ」はどんな意味なのでしょうね。「ヤクに捧げる歌」は、歌の上手な女性セデュのほか、彼女から習った主人公の教師ウゲン、そしてルナナ村の村長も歌うので、いろんな人の歌声が聞けます。YouTubeにも男声による歌でアップされていますので、これから映画をご覧になる方はこちらを予習にどうぞ。

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何度見てもいろんな発見がある『ブータン 山の教室』。ヤクのノルブことナカも、そして本名で出演しているかわいい子供たちも待っていますので、ぜひ岩波ホールまでお運び下さい。上映時間がチラシに印刷されているものとは若干違っていますので、岩波ホールのHPでご確認の上、お出かけ下さいね。そうそう、昔は1階にあったチケット売り場でチケットを買ってから、10階にある岩波ホールにエレベーターで上がる、という形だったのですが、1階のチケットブースはなくなり、直接10階に行ってチケットを買う形になりました。チケットには整理番号が印刷してあり、上映10分前になると、その番号順に左前方の扉から座席のあるホールに入れるようになっています。それまではロビーで下のような写真を見たり、パンフレットを買ったり、トイレに行ったりしてお時間をつぶして下さい。

YouTubeには予告編の他、本編映像を使ったこちらこちらなど、前もってちらっと見られる『ブータン 山の教室』映像がいろいろアップされています。お近くの映画館で上映されるまでお待ちにならないといけない方は、ぜひこちらを楽しんで下さいね。公式サイトの最後を見ると、どんどん各地での上映が決まっているようです。桜前線ならぬヤク前線が日本中を北上&南下中です。どうぞお楽しみに。

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