昨年は、香港映画といえば香港の政治情勢をリアルに描く作品が公開されることが続きました。それによって、私たちは様々なことを知ることができたのですが、やはり以前のような、香港庶民の息吹が感じられる映画が見たい、という思いもいや増します。それに応えるかのような作品が2本、このほど<新世代香港映画特集2023>と銘打って公開されることになりました。次の2本で、5月19日(金)より新宿武蔵野館ほか全国で順次ロードショー公開されます。公式サイトはこちらですが、このブログでも簡単な紹介を付けておきます。
『私のプリンス・エドワード』
©2019 MY PRINCE EDWARD PRODUCTION LIMITED. All Rights Reserved.
2019年/香港/93分/原題:金都/英語題:My Prince Edward
監督:黃綺琳(ノリス・ウォン)
出演:鄧麗欣(ステフィー・タン)、朱栢康(ジュー・バクホン)、鮑起静(バウ・ヘイチン)、金楷杰(ジン・カイジエ)、林二汶(イーマン・ラム)、岑珈其(カーキ・サム)
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『縁路はるばる』
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2021年/香港/96分/原題:縁路山旮旯/英語題:Far Far Away
監督:黄浩然(アモス・ウィー)
出演:岑珈其(カーキ・サム)、張紋嘉(クリスタル・チョン)、蘇麗珊(シシリア・ソー)、梁雍婷(レイチェル・リョン)、陳漢娜(ハンナ・チャン)、余香凝(ジェニファー・ユー)
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香港映画ファンの方なら、どちらの作品の題名も聞いたことがあると思います。『私のプリンス・エドワード』は2020年の大阪アジアン映画祭で上映された作品で、同年の香港電影金像奨では主演男優賞(ジュー・バクホン)、主演女優賞(ステフィー・タン)、助演女優賞(バウ・ヘイチン)、脚本賞、編集賞(張叔平)、作曲賞、歌曲賞、そして新人監督賞にノミネートされ、黃綺琳(ノリス・ウォン)監督が見事に新人監督賞を獲得したほか、出演者でもあるイーマン・ラムが作曲賞を受賞しました。プリンス・エドワードとは旺角(モンコク)駅の次、太子駅の英語名なのです。その太子駅の南詰にある、結婚衣装店・結婚用品店がいろいろ入っているビル金都商場(ゴールデン・プラザ)が舞台なので、映画の中国語題名は「金都」となっています。ストーリーは結婚衣装店で働くフォン(ステフィー・タン)とその同棲相手で、ウェディング・フォト専門店のオーナーであるエドワード(ジュー・バクホン)との恋物語なのですが、いろいろ香港らしい複雑な背景が出てきて、中国との関係を考えさせられる作品です。「プリンス・エドワード」は地名であると共に、主人公フォンの相手のエドワードのことでもあり、ずっと昔、1922年にイギリスのエドワード王子が当時イギリス領だった香港を訪問し、ここの東西を走る通りが「太子道(プリンス・エドワード・ロード)」と名付けられたことも含んでいるようです。
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一方、『縁路はるばる』の方は、こちらも香港の地理と密接な関係があるのですが、ちょっと冴えない主人公のハウ(カーキ・サム)は付き合う相手がなぜか香港内の僻地とでも言うべき端っこに住んでいる女性ばかりで、車やフェリーを駆使して5人のお相手とデートを敢行します。行ってみるとそれぞれの土地の事情があったりして、ハウは香港についてこれまで知らなかったことを学んでいきます。それと同時に女性に関しても学んでいき、やがて奥手だったハウは...。
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原題にある見慣れない漢字は、「旮旯(カラ)」と読み、「旮(カ)」は「へんぴな所」という意味で、「旯(ラ)」は特に意味はなく、「カラ」で「すきま」というような意味になるようです。これに「山」が付く「サンカラ」は、「人里離れた所、へんぴな所、やまあい」という意味になります。「ポツンと一軒家」みたいなところが「サンカラ」なんですね。というわけで、相当変な物語なのですが、香港に何度も行った人でも、「ここ、どこ? 知らな~い」の場所ばかり出てくるので、なかなかに興味深いです。主人公を演じたカーキ・サムは、Play Timeというグループに属する歌手でもあり、映画だけでなくドラマにもいっぱい出ている人気者。『私のプリンス・エドワード』にも出ています。この作品も、2022年の大阪アジアン映画祭で上映されましたので、もうチェック済みの方もいるかも知れませんね。そうそう、あと今年初めには、東京外国語大学のTUFS Cinemaでも上映されました。
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さて、今日のご紹介はこのくらいにして、予告編を付けておきますのでご覧になって下さいね。画像や資料がいろいろあるので、もう1回ご紹介しようと思っています。
映画『私のプリンス・エドワード』『縁路はるばる』予告編