秀春氏の一連の作品の中で、僕がはじめに接したのが三体の白いねずみでした。
正式には「時間と変容のルール、、」という風に名付けられていますが、この写真にうつっている作品は通称「おじいちゃん」。展示のためにとっかえひっかえ並べながら、いろいろ試している時などは、「ちょっとおじいちゃんどかして」とか「あ、おじいちゃん連れてきて」とか。まるで人間扱いです。ほかに「ちびちゃん」とか「ふりかえりくん」とか「ぶら下がりくん」など。通称で呼んでいると、どこかの家族のことを話しているようです。
立体作品を撮影する時の困難は、キメの角度というか、「こう見る」という画面を決められないこと。
普通に考えればそれは当たり前で、二次元の表現である写真に簡単におさまってしまう作品なら、立体である必要はないですものね。ずっと見つめていると、とにかく視線がぐるぐると回るように誘導されている気分。視線の流れが止まらない。なので、撮影する側には思い切りが大事になってきます。
一枚撮って、それで表現しきることができたら、それは撮る側(見る側)の勝利なのかもしれませんが、作品は簡単にはそれを許さない。完成しているはずの作品が時間の中で生きはじめると、とても1ショットでは片がつかない。それで、なんどもなんども作品を巡る光を追いかけることになるのです。