倒産回避コンサルタントからの救命ロープ

倒産回避コンサルタント・中逵努のブログです。
恩師村松謙一弁護士ご本人のブログではないことを予めご了解ください。

倒産回避に向けたロジック

2006年03月29日 | 企業再建について
先週は業務が立て込んでしまったため
投稿できずに申し訳ありませんでした。

出張先の空港で購入して今年最初に読んだ本が
「国家の品格」著者:藤原正彦だった。
その中で、ディベート(討論)に関する記述があり、
討論の結果は、討論の出発点次第という下りを
この一週間掛かりきりになっていた案件の中で
思い出した。

事業再生・倒産回避案件にも全く同じことが
当てはまり、どのロジックからスタートするかが
非常に重要であり、私自身も論理の出発点に
徹底的にこだわって仕事をしているつもりである。

一言で言えば、他人事であるか・自分事であるか
である。多角的で冷静な分析は当然であるが、
最後はこのロジックの出発点いかんにより、
成果が全く異なってしまうと確信している。

倒産回避に立ち向かう場面では、本音ベースでの
議論が交わされることになり、ステークホルダー全員
のスタンスが複雑に絡み合い、それをどのように
調整するかが、ポイントとなる。

利害や価値観が対立する中での調整作業は
透明性・衡平性・倫理観そして何より人としての
慈愛精神が必要だと思う。担当先企業にとって
最大の理解者であり協力者になることが、ステーク
ホルダー全員の利益に資すると信じて頑張っています。

三省堂提供「大辞林 第二版」
慈愛  我が子を愛するようないつくしみの気持ち。


以下のコラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。

99年6月21日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  

第1 「再建の見込み」とは何か
1.危機的状況下にある会社を再建させるべきか、
それとも閉鎖すべきかを判断するにあたり、
「再建の見込み」が問題となる。

「再建の見込み」があれば再建すべきであり、
その見込みがなければ再建すべきでなく閉鎖
すべきだからである。それも単なる主観の問題
ではなく。

2.そこで、そもそも「再建の見込み」とは何かが
問題となるが、その前にその見込み「あり」や
「なし」とは何なのかといえば、あらゆる角度から
見ても、再建の見込みが完全(100%)にないと
いえる場合以外は、再建の見込みありと考える
のである。

換言すれば、再建の見込みありとは、再建の
見込みが全く考えられないとはいえない場合と
いうことになる。

私としては、可能性として、90%はダメだろうと
見ても、10%は再建の可能性ありと考えられれば
再建の見込みなしとはいえない(再建の見込み
あり)と考えるべきと思っている。

そして、過去このような考えで会社の再建を進めて
きており、多数の関係者の意見においてダメ
だろうと言われていた会社を再建した例は枚挙に
いとまがなく、その体験が私の考え方の私の
自信となっている。

3.では、本題に戻って、「再建の見込み」とは
なんであろう。

ミクロ的には、組織としての企業を見ていくためには、
企業体を構成する「人」「物」「金」に照らしていく
必要があるが、その中でも特に重要な視点は、
次のマクロ的な視点である。(「物」については、
事業分野の特性、商品力、技術力等があるが、
ここでは割愛する)

①収益面から見て、営業利益段階で、近い将来
(1~2年)黒字化の見込みが確実視される場合。

②配当面から見て、今破産させた場合の将来の
将来の配当時点における破産配当率よりも、
1~2年五の収益弁済額の方が当該破産配当率
を上回る場合(或いは、会社更生法上の最長期限
の20年間の返済原資と配当率との比較)は、
会社を続けさせるべきとの判断。

③収支面から見て、旧債務の一時棚上げを前提に
向こう半年間で、会社の収入と収支を検討し、
そのバランス上少しでも繰り越し残が残る(営業
収支上黒字である)という資金繰り上の見方
(キャッシュフローの視点)等であり、そのそれぞれ
に理由がある。

④また、債権者側の視点として、会社を延命させる
ことでかえって自分の立場が今以上に不利益に
ならないか、換言すれば、会社の資産を食い潰して
いかないか、赤字のたれ流しがいつ頃止まって黒字
に反転するか等、債権者側の視点で把握することも
重要である。

4、但し、何よりも大切なことは、関与代理人弁護士
として、企業という船を操縦する船長たる経営者
その人から、「何としても会社を再建してみせる」
という意欲を読み取ることができるかに尽きるだろう。

そして、前述した計数上の利益・収益見通し、債権者
感情といった客観的判断要素を7割として、残りの
3割については、経営者のやる気といった主観的
要素にかかっているといっても過言ではない。

この利益見通し(客観的事情)と経営者のやる気
(主観的事情)を総合的に勘案して、当該会社の
再建の見込みを判断すべきである。

以降次回に続きます。
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村松謙一弁護士のコラム 2

2006年03月19日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


弁護士ウオッチング 99年5月31日 日刊帝国ニュース
     弁護士 村松謙一
「倒産」は決して悲惨ではないとの臨床的報告(その2)

第3 「倒産は悲惨ではない」との私の仮説の根拠の
大前提(憲法第25条)

1 私が倒産を悲惨的に考えてはいけないとする根拠の
大前提は、次のところにあるのです。
 確かに一方においては、借りたお金は返さなければならない
ことは、子供でも知っております。
 私もそれを否定するものでもありません。
 しかし、もう一方の極には、「健康で文化的な最低限度の
生活をする権利」或いは生命を維持する権利も我々国民は
基本的人権として併せ有しているのです。
 換言すれば、決して自己、家族の生活、生命を犠牲にして
まで、ましてや犯罪を犯してまで返済をしなくても良いと
いうことを日本国憲法は謳っているのです(憲法第25条)

 この憲法を受けて、前述の基本的人権を実践するために各種
法律が様々な人権擁護を謳っております。
(1)例えば、「生活保護法」では、「健康で文化的な最低
限度の生活」を維持できるよう一定額の金銭の支給を規定して
あります。
(2)「民法」の分野でも借入金を返済しない場合、貸主の
究極の債権回収方法として、強制執行(差押え=競売)が
規定されておりますが、但し、差押え禁止財産として、
①生活に必要な家財道具は、差押えを禁止されています。
特に東京地方裁判所では、破産法第6条3項により、
破産財団に属しないものとして、平成8年(96年)
11月に差押禁止動産目録を作成し、今後、家財道具に
ついては、特に高価なものがない限り、処分を要しない
扱いとしたい旨の通達が出されているくらいです。
 これによれば、ほとんどの家の家財道具は差押えが
できないことになっています。
 又、②年金受給権も差押えを禁止されていて、将来の
老後の生活の安定、安心を保証しています。
 ③差押えの範囲としても、例えば生活を維持するために
必要な「給料」については、上限があり(原則として
支給額の4分の1)、その全額を差押えできないことに
なっております。
 これは、給料全額を差押えてしまっては、その人の
生活権を奪うことになり、生きる権利すら奪うことに
なってしまうからです。
 同じことは、「退職金」についても4分の1しか差押え
できないという救済になっています。
 更に給料や退職金については、会社が潰れて払えない
場合、国が立て替えて払ってくれる「立替金制度」も
完備されています。
 このように、従業員は、法で厚く守られているのです。
(なお、役員報酬については別途の考察が必要)

(3)又、「倒産関係法律」の分野(例えば破産法)に
おいても、①一般破産債権の中でも従業員の給料等の
労働債権は生活のための必要最低な資金ゆえ、「優先
破産債権」として、一般破産債権よりも優遇されている
のです。
 ②又、破産宣告後に働いて得た賃金等は、破産者の
自由財産として、差押えも出来ず破産者の生活に使って
いいことになっています(解釈論)。

(4)「労働基準法」上でも、賃金(給料)については、
「現金払い」でなければならず、手形・小切手・現物支給
等現金以外の物で交付することは、厳しく禁止されて
おります。
 又、いくら貸付金があろうとも、その貸付金と「天引き
(相殺)」処理も禁止されているほど、給料というのは
厚く保護されているのです。

(5)「税法」の分野においてさえ、災害時には、特例に
より納税の猶予、延滞税の免除の規定が置かれているくらい
です(国税通則法第63条)

(6)そして、その最たるものが、「破産法」に言う
「免責」の決定でしょう。
 場合によっては、国家が借金を帳消しにしてしまう
「徳政令」を出してくれるのです。
 この免責は、借金がギャンブルや著しい浪費で増えて
いったものでない限り、原則として、「免責」となる
手続きなのです。

(7)又、再建するためにも、法は各種の法規を整備して
おります。
  会社更生法
  民事再生法
  商法上の整理
等です。
 特に法的手続きでは、①一時的に、一切の返済を停止する
「弁済禁止の保全処分」②借入金金利の劣後債権化(未発生)
③借入金残元金の大幅カット④会社の体力にあわせた返済
計画の是認、等の措置により、会社を救済するシステムが
用意されております。

(8)競売手続きにおいても、バブル経済崩壊後は、
不良資産の処理のためん、市場に競売物件が多く出過ぎて、
実際に買い手がつくものは本当に良い物などごくわずかで
あり、競落率も10件のうち、3~4件に過ぎないのです。
(注 執筆当時と比べ、不動産市況および競売環境が
少し変化しています。)
 競売の申立をされたからといって、直ちに立退く必要も
なく、競売を過度に恐れる必要はありません。最低競売
価格を若干上回る金額で、申立担保権者と協議して、
競売を取り下げてもらった例は多数あります。
 ただ、ここで誤解して欲しくないのは、なんでも
かんでも破産による免責を受けなさいと勧めているのでは
決してないということです。
 本当に八方塞がりで逃げ場を失ってしまった状態と
しても、いざとなったら「免責」という規定があるから
安心して事にあたりなさいという意味で、免責の規定を
頭の片隅で覚えてもらえば十分なのです。
 競売通知が届いたときに違法な手段を使ったり、暴力団、
事件屋、整理屋に依頼して事をすまそうとしては、絶対に
ダメです。
 法律に違反しては、せっかく倒産=悲惨ではないとの
考えが、倒産=悲惨に逆戻りしてしまうからです。
 寧ろ、「法律の範囲内での今まであまり知られて
いなかった様々な再建のテクニック」を次の章で説明して
いきますが、その根底には、債務者の誠意、真摯な対応
法の遵守と相手の立場に対する配慮、感謝の気持ちから
出発していることを決して忘れないで欲しいのです。
 特に再建の現場で大切なことは、「等しからざるを憂う。
知らざるを憂う。」という債権者心理と、絶対に裏切らない
という債務者の誠意です。
 特に債権者たる金融機関側の目で見れば、会社の収益力に
合った任意弁済であれば、金額の多い少ないではなく、
極論すればわずか10円の弁済でもよいのです。他の
債権者と比較して公平であれば文句のつけようがないのです。
誠実に返済努力をして、それしかできないならば仕方がない
のです。
 そして、私が説明するこれら様々な再建の手法の中に、
皆さんがこれまでに抱いていた怖さ、不安感、問題点の
対処方法を見出していただければ、このコラムを読み終える
頃には、「なんだそうなんだ。誠意を尽くして、真面目に
返済に取り組めば、直ぐには家屋敷が取られることも
ないんだ。競売ったって、場合によっては、しばらく家に
住んでいられるんだ。夜逃げをするまでもないのか。
一生借金に苦しめられることもないんだ。
 仮に借家住まいになったって、自分を頼りにしてくれる
妻や子供がいるじゃないか。暖かい灯し火が待っているじゃ
ないか。心の苦しささえ克服できれば、何よりも大事な
その家族を守れるんだ。生きていれば、きっと何か
良いことがあるさ。倒産と言っても命まで取られないさ」
と認識を新たにしていただければ、このコラムの役目は
十分にはたされたことになると考えます。

 現に、私の周りには、生の絶望の淵から何とか生還して
新たな人生を迎えている経営者が多勢いるのですから。
 
 最後に、これだけは断言できます。

世の中で一番大切なものは、
お金や名誉や家(物件)の存在ではありません。
 そんなものは、後からどうにでもなります。
 本当の幸せとは、自分を励まし、勇気を与えてくれている
「家族の存在」なのです。
 逆に倒産で一番おそろしいのは、孤独感です。
そして家族の絆は、何人も、絶対に倒産によって
断ち切ることはできません。
否、絶ち切らしてはならないのです。
万一倒産しても、全てを失うわけではありません。
そして、このコラムは経営に苦しんでいる経営者の
奥様方にもぜひ読んでもらいたいのです。
さあ、勇気を出して、経営にあたってください。


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村松謙一弁護士のコラム

2006年03月17日 | 企業再建について
前回のブログでご紹介したように、
神戸の大震災を契機として私の人生は
絶望への坂を転がり始めることになりました。

しかし溺れて沈む私の指先に倒産回避・再建指導
の第一人者である村松謙一弁護士につながる
最後の藁がありました。
当時私の回りにいた顧問弁護士・顧問税理士などの
専門家が例外なく「倒産やむ無し」と断言した
経営状況を村松先生に救っていただいただけでなく
倒産回避のための実務ノウハウや法律知識 
それ以上に何物にも代えることのできない
人間として最も大切なものを
学ばせていただくことができました。

帝国データバンクが発行している日刊帝国ニュースで
村松弁護士が1999年5月から弁護士ウオッチングの
連載を開始され、血の通った再建の真髄が連載されて
いたことをご存知の方は少ないと思います。
貴重な村松弁護士のメッセージが歴史に
埋もれていくことは大きな社会的損失であると同時に
今の厳しい時代だからこそ、このメッセージを必要と
している方々に読んでいただきたいと思い、
村松弁護士に相談したところ、このブログでの掲載を
快くご了承いただくことができましたので
今後順次掲載させていただきます。

100回近く続いた非常に中身の凝縮されたコラム
なのですべてをご紹介するにはかなりの時間が
かかると思いますが、仕事の合間を縫って投稿
させていただきます。
この場をお借りして村松弁護士には改めて
心より御礼申し上げます。

なおご紹介するコラムの著作権は村松弁護士が保有
されています。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


弁護士ウオッチング 99年5月17日日刊帝国ニュース
        弁護士  村松謙一

第1 「倒産」は決して悲惨ではないとの臨床的報告 1

相手を知り、己を知れば、百戦して危うからず
(孫子)

1. 夜逃げ、精神破壊、病気、最悪は自殺や
犯罪行為等、これら私が現実に目にした倒産に
起因した悲惨な光景は、とても一口で言い表される
ものではありませんでした。

しかし、これらの悲惨的結末は、倒産を「悲惨なもの
と考えた」(認知)その結果、倒産=悲惨という考えが
人間をして絶望感、不安感等の奈落の底に突き落とし
極限状態に人間を落としめらしたことによる
その人間の次なる行動パターンが、これら逃避、
破壊、犯罪等の悲惨的行動となるわけです。

これらの行動は、心理学にいうところのフラスト
レーション耐性なのです。

倒産(事実)→頭の中で倒産を悲惨と考えること(認知)
→夜逃げ・自殺・病気(行動)

2. 倒産=悲惨でない との仮説と
その立証をすれば、
事実→認知の段階で、そもそも倒産は本当に
悲惨と言えるのか(大前提)、即ちこの大前提が
否定され、「倒産→悲惨でない」との認知ができれば
この認知からくる夜逃げ、病気、自殺・犯罪などの
悲惨的行動に至らずにすむのではないか、との疑問
から、このコラムは出発しているのです。

私は、皆さんに倒産→悲惨でないとの認識を持って
もらいたい。
これは、単にプラス思考になりなさいと言っている
のではありません。
私のこれまでの体験から、「倒産→悲惨」との
大前提こそが、あまりよく解明されずに伝えられて
きたものであり、この大前提を否定するだけの事実が
数多くの倒産現場を扱った私の体験からも様々な
点で見えてきたからです。

3. ハイジャック事件での教訓
少し前になりますが、1995年6月に函館行きの
全日空機がハイジャックされた事件を記憶している
方々は多いでしょう。
あの事件は、犯人に某宗教の影がちらつくという
誤った情報が、毒物のサリン、プラスチック爆弾等を
連想させて、恐れ、恐怖の時間を過ごさせ、誰も
その間手が出せない状態を作り出してしまった
のでした。
その後、犯人は教団とは関係のない単独犯との
情報が入ったことで、その恐怖心も薄らぐことができ
全員救出という好結果が出せたのです。

4. 弁護士の使命
倒産もこの「情報→認知→行動」と全く同じなのです。
誤った情報の否定、最近の事例・情報を正確に
伝えることで、従来のような恐怖心を取り除き、
その結果、十分に悲惨的行動は回避できるのです。
悲惨的行動に出る人を少しでも少なくすることこそ、
人権擁護をむねとする弁護士の社会的使命であると
私は考えているのです。

第2 具体的不安内容の解明
もう少し分かりやすく説明しましょう。
皆さんは、倒産するといったい何が怖い・不安
なのでしょうか。
そもそも倒産に基づく不安・恐怖・悲惨とは具体的に
なんでしょうか。(思考段階を追ってみると)

(1) おそらく、金融機関に経営悪化が分かってしまう
(2) 融資ストップ、或いは返済の強制の怖さ
(3) 融資ストップによる資金の手詰まりの怖さ
(4) 資金手詰まりによる手形不渡りの怖さ
(5) 手形不渡りによる会社倒産および債権者の
    憤りの怖さ
(6) 会社倒産によりこれまで手に入れた資産、
   家を根こそぎ全部取られて無一文になってしまう
   のではないかとの怖さ
(7) 家・屋敷を取られてしまうことにより、一家が
   生活できなくなるのではないかとの怖さ
(8) 債権者に対する責任感および一家が生活できなく
   なることにより、人生に絶望し、もはや死ぬしか
   ないのではないか

多くの会社経営者の方々は、このような思考回路を経て
倒産=悲惨、恐怖、不安と何の疑いを持つこともなく、
言わば世の常識として考えていたのではないでしょうか。

しかしこれら(1)~(8)がそれぞれそのような怖さ、不安
は、昔と違ってそんなに怖いものではないのですよ。
或いは十分に回避することができますよ、と気休め
でなく、その具体的根拠・事例に基づいて答えてあげら
れれば、経営者の方々は、どんなにか勇気付けられ、
救われるのではないでしょうか。

現実に倒産=悲惨ではないということを理解した
おかげで、会社の再建に邁進し、今では立派に
会社を立ち直らせた経営者を私は何人も知っています。
次回は、倒産=悲惨ではないということを、法的根拠を
示して解説しましょう。

コラムは次回に続きます。


倒産回避のお手伝いをさせていただいている担当先の
皆様にこのコラムをお渡ししたところ、社長様以上に
奥様やご家族の方々の苦悩が和らいだとのお言葉を
多数いただきました。読者の方の周りで経営に苦しま
れている方に、このブログを通して村松弁護士の
メッセージが届くことを願っています。


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連鎖倒産回避 2

2006年03月03日 | 私の体験
私は最初からコンサルタント業に携わっていた訳ではなく
前職では自ら会社を経営する立場にありました。

平成7年1月に起きた阪神淡路大震災。
そのひと月前、平成6年12月に私は兵庫県尼崎市で
自ら経営する会社の支店と店舗を立ち上げたばかりだった。
オープン後わずか一ヶ月にして、辛うじて建物は残ったものの
その瞬間に残骸となった商品を前にして茫然自失となった。

神戸から通っていたスタッフの自宅が倒壊したとの
連絡が入り、知り合いから借りたバイクの荷台に
ミネラルウオーター・カイロ・米などの生活必需品を
積めるだけ積んで運んだ。
尼崎から西宮、西宮から芦屋。
西へ行くにつれ、神戸へ続く国道2号線の見慣れた景色が、
終戦直後へタイムスリップしたかのような光景へと変わり
スタッフの家族が避難している場所に近づくにつれ、
想像を絶する地獄絵図が現実のものとして目の中に
飛び込んでた。
11年たった今でも忘れることのできない
あの悲惨な光景、あのホコリの匂い、そして
崩れた建物から聞こえる「助けて」という声。
あの地震以降様々な経験をしたが
「命さえあれば、この日本で生きている限りなんとかなる」
結局私はひとつの結論に達することが出来た。

神戸大震災で商圏のお客様も甚大な被害を受けたことで
売上予測の四分の一以下になった。
が、当時の私は支店出店により増加した金融機関からの
借入金返済を減額することなく、律儀に払い続けた。
バスタブの例を持ち出すまでもなく、
収入より支出が大幅に超過している状態が約一年続き
手元資金がまたたく間に枯渇し倒産の危機に瀕した。
回りのあらゆる方々に相談したが、顧問税理士はもちろん、
親しい会社経営者仲間、知り合いの弁護士も一様に
全員の答えは「自己破産するしかない」
だった。

しかし、家族・親族が連帯保証人になっているので
自己破産すれば、連帯保証人全員に大きな迷惑を
かけてしまう。
これだけは何とか避けたいという気持ちで
梅田の紀伊国屋書店に行って必死で探し出したのが
私の師匠の著書だった。
ラストチャンスをこの先生に賭けることを決心して
先生のドアを叩いたのが師匠との
幸運な出会いのスタートだった。

資金繰り・財務諸表をチェックした後、
師匠は第一声
「今までよくひとりで頑張ってきたね。」
と労いの言葉を掛けてくれた。
師匠のこのひと言で全身の緊張感が抜け、
「もしかしてこの先生なら」という希望が
私の心に灯った時の感動を、現職になった今も大切にしている。
地震という不可抗力だから正々堂々と
返済条件を緩和してもらえば良かったのにねと
師匠がサラリと言われたのが当時の私では意外だった。

地震以降、金融機関に返済条件の緩和を
全くお願いしなかった訳ではなく、
何度か丁重にお伺いを立ててお願いしたところ
金融機関は首を縦に振ってくれなかったので、
止む無く約定弁済を続けていたというのが実情である。

地震などの天災だけでなく、取引先の突然の倒産などの
不可抗力によって資金繰りが悪化した、
もしくは悪化することが確実な場合は、
その悪化がわかる資金繰り表を作成した上で
金融機関に返済猶予を正々堂々とお願いし
そのままでは資金ショートするという緊急事態であれば
自己防衛のためにも金融機関が首を縦に振らなくとも
元金返済を一時凍結するくらいの勇気が必要である。

「晴れの日に傘は貸してくれるが
雨の日には傘を貸してくれない」
というのが、多くの金融機関の基本スタンスであり
雨の日には新しい傘を貸してくれる先を見つけることよりも
勇気を持って自己防衛することこそが連鎖倒産回避の
基本行動である。
突発的に発生した問題の対処次第では、その問題を
味方につけることもできるのである。


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