先週は業務が立て込んでしまったため
投稿できずに申し訳ありませんでした。
出張先の空港で購入して今年最初に読んだ本が
「国家の品格」著者:藤原正彦だった。
その中で、ディベート(討論)に関する記述があり、
討論の結果は、討論の出発点次第という下りを
この一週間掛かりきりになっていた案件の中で
思い出した。
事業再生・倒産回避案件にも全く同じことが
当てはまり、どのロジックからスタートするかが
非常に重要であり、私自身も論理の出発点に
徹底的にこだわって仕事をしているつもりである。
一言で言えば、他人事であるか・自分事であるか
である。多角的で冷静な分析は当然であるが、
最後はこのロジックの出発点いかんにより、
成果が全く異なってしまうと確信している。
倒産回避に立ち向かう場面では、本音ベースでの
議論が交わされることになり、ステークホルダー全員
のスタンスが複雑に絡み合い、それをどのように
調整するかが、ポイントとなる。
利害や価値観が対立する中での調整作業は
透明性・衡平性・倫理観そして何より人としての
慈愛精神が必要だと思う。担当先企業にとって
最大の理解者であり協力者になることが、ステーク
ホルダー全員の利益に資すると信じて頑張っています。
三省堂提供「大辞林 第二版」
慈愛 我が子を愛するようないつくしみの気持ち。
以下のコラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。
99年6月21日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング
第1 「再建の見込み」とは何か
1.危機的状況下にある会社を再建させるべきか、
それとも閉鎖すべきかを判断するにあたり、
「再建の見込み」が問題となる。
「再建の見込み」があれば再建すべきであり、
その見込みがなければ再建すべきでなく閉鎖
すべきだからである。それも単なる主観の問題
ではなく。
2.そこで、そもそも「再建の見込み」とは何かが
問題となるが、その前にその見込み「あり」や
「なし」とは何なのかといえば、あらゆる角度から
見ても、再建の見込みが完全(100%)にないと
いえる場合以外は、再建の見込みありと考える
のである。
換言すれば、再建の見込みありとは、再建の
見込みが全く考えられないとはいえない場合と
いうことになる。
私としては、可能性として、90%はダメだろうと
見ても、10%は再建の可能性ありと考えられれば
再建の見込みなしとはいえない(再建の見込み
あり)と考えるべきと思っている。
そして、過去このような考えで会社の再建を進めて
きており、多数の関係者の意見においてダメ
だろうと言われていた会社を再建した例は枚挙に
いとまがなく、その体験が私の考え方の私の
自信となっている。
3.では、本題に戻って、「再建の見込み」とは
なんであろう。
ミクロ的には、組織としての企業を見ていくためには、
企業体を構成する「人」「物」「金」に照らしていく
必要があるが、その中でも特に重要な視点は、
次のマクロ的な視点である。(「物」については、
事業分野の特性、商品力、技術力等があるが、
ここでは割愛する)
①収益面から見て、営業利益段階で、近い将来
(1~2年)黒字化の見込みが確実視される場合。
②配当面から見て、今破産させた場合の将来の
将来の配当時点における破産配当率よりも、
1~2年五の収益弁済額の方が当該破産配当率
を上回る場合(或いは、会社更生法上の最長期限
の20年間の返済原資と配当率との比較)は、
会社を続けさせるべきとの判断。
③収支面から見て、旧債務の一時棚上げを前提に
向こう半年間で、会社の収入と収支を検討し、
そのバランス上少しでも繰り越し残が残る(営業
収支上黒字である)という資金繰り上の見方
(キャッシュフローの視点)等であり、そのそれぞれ
に理由がある。
④また、債権者側の視点として、会社を延命させる
ことでかえって自分の立場が今以上に不利益に
ならないか、換言すれば、会社の資産を食い潰して
いかないか、赤字のたれ流しがいつ頃止まって黒字
に反転するか等、債権者側の視点で把握することも
重要である。
4、但し、何よりも大切なことは、関与代理人弁護士
として、企業という船を操縦する船長たる経営者
その人から、「何としても会社を再建してみせる」
という意欲を読み取ることができるかに尽きるだろう。
そして、前述した計数上の利益・収益見通し、債権者
感情といった客観的判断要素を7割として、残りの
3割については、経営者のやる気といった主観的
要素にかかっているといっても過言ではない。
この利益見通し(客観的事情)と経営者のやる気
(主観的事情)を総合的に勘案して、当該会社の
再建の見込みを判断すべきである。
以降次回に続きます。
投稿できずに申し訳ありませんでした。
出張先の空港で購入して今年最初に読んだ本が
「国家の品格」著者:藤原正彦だった。
その中で、ディベート(討論)に関する記述があり、
討論の結果は、討論の出発点次第という下りを
この一週間掛かりきりになっていた案件の中で
思い出した。
事業再生・倒産回避案件にも全く同じことが
当てはまり、どのロジックからスタートするかが
非常に重要であり、私自身も論理の出発点に
徹底的にこだわって仕事をしているつもりである。
一言で言えば、他人事であるか・自分事であるか
である。多角的で冷静な分析は当然であるが、
最後はこのロジックの出発点いかんにより、
成果が全く異なってしまうと確信している。
倒産回避に立ち向かう場面では、本音ベースでの
議論が交わされることになり、ステークホルダー全員
のスタンスが複雑に絡み合い、それをどのように
調整するかが、ポイントとなる。
利害や価値観が対立する中での調整作業は
透明性・衡平性・倫理観そして何より人としての
慈愛精神が必要だと思う。担当先企業にとって
最大の理解者であり協力者になることが、ステーク
ホルダー全員の利益に資すると信じて頑張っています。
三省堂提供「大辞林 第二版」
慈愛 我が子を愛するようないつくしみの気持ち。
以下のコラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。
99年6月21日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング
第1 「再建の見込み」とは何か
1.危機的状況下にある会社を再建させるべきか、
それとも閉鎖すべきかを判断するにあたり、
「再建の見込み」が問題となる。
「再建の見込み」があれば再建すべきであり、
その見込みがなければ再建すべきでなく閉鎖
すべきだからである。それも単なる主観の問題
ではなく。
2.そこで、そもそも「再建の見込み」とは何かが
問題となるが、その前にその見込み「あり」や
「なし」とは何なのかといえば、あらゆる角度から
見ても、再建の見込みが完全(100%)にないと
いえる場合以外は、再建の見込みありと考える
のである。
換言すれば、再建の見込みありとは、再建の
見込みが全く考えられないとはいえない場合と
いうことになる。
私としては、可能性として、90%はダメだろうと
見ても、10%は再建の可能性ありと考えられれば
再建の見込みなしとはいえない(再建の見込み
あり)と考えるべきと思っている。
そして、過去このような考えで会社の再建を進めて
きており、多数の関係者の意見においてダメ
だろうと言われていた会社を再建した例は枚挙に
いとまがなく、その体験が私の考え方の私の
自信となっている。
3.では、本題に戻って、「再建の見込み」とは
なんであろう。
ミクロ的には、組織としての企業を見ていくためには、
企業体を構成する「人」「物」「金」に照らしていく
必要があるが、その中でも特に重要な視点は、
次のマクロ的な視点である。(「物」については、
事業分野の特性、商品力、技術力等があるが、
ここでは割愛する)
①収益面から見て、営業利益段階で、近い将来
(1~2年)黒字化の見込みが確実視される場合。
②配当面から見て、今破産させた場合の将来の
将来の配当時点における破産配当率よりも、
1~2年五の収益弁済額の方が当該破産配当率
を上回る場合(或いは、会社更生法上の最長期限
の20年間の返済原資と配当率との比較)は、
会社を続けさせるべきとの判断。
③収支面から見て、旧債務の一時棚上げを前提に
向こう半年間で、会社の収入と収支を検討し、
そのバランス上少しでも繰り越し残が残る(営業
収支上黒字である)という資金繰り上の見方
(キャッシュフローの視点)等であり、そのそれぞれ
に理由がある。
④また、債権者側の視点として、会社を延命させる
ことでかえって自分の立場が今以上に不利益に
ならないか、換言すれば、会社の資産を食い潰して
いかないか、赤字のたれ流しがいつ頃止まって黒字
に反転するか等、債権者側の視点で把握することも
重要である。
4、但し、何よりも大切なことは、関与代理人弁護士
として、企業という船を操縦する船長たる経営者
その人から、「何としても会社を再建してみせる」
という意欲を読み取ることができるかに尽きるだろう。
そして、前述した計数上の利益・収益見通し、債権者
感情といった客観的判断要素を7割として、残りの
3割については、経営者のやる気といった主観的
要素にかかっているといっても過言ではない。
この利益見通し(客観的事情)と経営者のやる気
(主観的事情)を総合的に勘案して、当該会社の
再建の見込みを判断すべきである。
以降次回に続きます。