倒産回避コンサルタントからの救命ロープ

倒産回避コンサルタント・中逵努のブログです。
恩師村松謙一弁護士ご本人のブログではないことを予めご了解ください。

金融機関には正直に窮状を訴える 6

2006年06月16日 | 企業再建について
出張続きでなかなか投稿できずに申し訳ありませんでした。
景気回復との報道があっても、それは限られたごく一部の
ようで、地方ではまだまだ不況感の拡散を実感しています。
大手都市銀行の不良債権処理が一段落した後、今後は
地方銀行・信用金庫の不良債権処理がスタートしています。
中小零細企業経営者の中には、必要な生活費すら削り
ながら、金融機関へ返済を続けておられる方も多いと
思います。そんな方はタイトルの通り「金融機関には
正直に窮状を訴えて」下さい。ただし、言葉だけでなく
メモ書きでも良いので、入金額と出金額を簡単な明細を
付けて説明してください。金融機関へは数字を使って
説明することが重要なポイントです。数字への落とし込み
方法をお知りになりたい方は、ご遠慮なくメールで
お問い合わせください。簡単な(でも効果的な)ポイント
をお伝えします。もちろん料金は一切いただきませんので
安心してお問い合わせください。

コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


99年8月16日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松謙一

5.清算貸借対照表の作成
1)前述の担保設定状況表とも関連しますが、今会社が
破産したなら、会社の資産を早急に処分して換金し、
債権者に配当した場合の配当率はどの位になるのかを
算出しておくのも得策です。

2)清算貸借対照表作成のポイント
なお、その際、忘れてはならないのは、現預金は
金融機関側の債権と相殺されゼロになること、
什器備品等はガラクタ価格となり、従業員の
解雇予告手当1か月分、退職金、裁判費用、
清算費用等は共益的債権として、一般債権者に
配当される前に優先的に換価金から支払われることに
なるということです。

3)更に、担保設定している不動産は全て担保権者に
配当されるため、担保などのない一般債権者への
配当実施にかかる期間はゆうに2~3年はかかるし、
その配当額も相当に低くならざるを得ず(通常は
2~3%)、この破産配当と再建計画による1~2年間
の返済額とを比較し、今破産しても、数%の返済
(実際に配当するのは更に2~3年先になることが
普通)であるならば、ここは再建に協力して、1~2年
以内に破産配当を上回る金額を回収して方が得策との
判断が確実に金融機関側にも働くのです。

6.社長の熱意と誠意
とかく経営者は金融機関に頭を下げるのが下手です。
もしくは、正直に窮状を打ち明けることが下手です。
 しかし、会社の一大事の時であり、大将自ら、
苦難を乗り切るために、率先して動かなければ、
誰が動くというのでしょうか。よく経理部長を
金融機関に行かせて説明させている方も見受けられ
ますが、金融機関側としても、「社長自身から
再建にかける熱意を読み取れるか」が、再建に
協力するか否かの重要な判断材料になっていることを
肝に銘じるべきです。(これは本当に重要なポイント
です)。
多くの会社の自主再建に携わってきた弁護士として
これだけは断言できます。
 取引先の会社がつぶれて歓喜する金融機関は
ひとつもないということです。むしろ金融機関こそ
被害者なのであり、相当なダメージを被ることに
なります。
「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」との格言があります。
早め早めに金融機関に相談を持ちかければ、金融機関
の方でいい知恵を出してくれるものです。あくまで
会社側の誠意が読み取れるかです。
 ゆめゆめ資産隠しなどを行ってはなりません。
経営者の方々に言います。
これからは融資に頼る経営ではなく、長期的展望に
立って、会社の収益力の範囲内での返済を実施する
企業が高く評価される時代です。いい機会です。
この際、会社のウミを出し切って、収益弁済を
柱にした会社に変身してください。
 叩けよ、さらば開かれんです。勇気を出して。



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金融機関には正直に窮状を訴える 5

2006年06月04日 | 企業再建について
前回の投稿以来長いインターバルとなってしまい大変
申し訳ありませんでした。更新頻度が低下していますが
これからも宜しくお願いします。

コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


99年8月16日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松謙一

信用不安の回避=倒産の回避(下の3)

3.返済計画書の作成
次に、前述の事業計画書から算出された返済原資並びに
その80%にあたる「具体的返済予定額」を頭にして
各金融機関、或いは未払金、未払租税公課の返済計画案
を算定することになります。

 ここで注意すべきことは、法的優先性のある返済と
一般債権の返済をまず区分けしておく必要があると
いうことです。

1)例えば、租税公課は破産法上、財団債権として、
最優先して支払われるべきであり、ユーザンスの
未払等についても、譲渡担保性を有する債権として、
優先して支払うことが公平でしょう。

2)又、工場等に担保設定していて、競売などを
されては再建計画が履行できないような担保権者に
対しては、別途、弁済協定書を取り交わし、返済を
続けている限りは、担保権の実行をしないで欲しい
旨の約束を取り付けることが肝要です。

3)一般債権者に対しては、全体の一般債権額を
分母に、個別の債権者の債権額を分子にして、
按分比率をした比率に基づいて、前述の「具体的
返済予定額」を割り付けていくことが、公平の
原則に合致します。

4)その際、極めて少額の債権者については、
実質上公平の原則、会社更生法上の少額債権者
救済の理念に基づき、一般債権者より若干返済額
において、有利に扱っても、不公平とは言えないし
その旨の理解は得られるものです。

4.担保設定状況表
1)会社の資産を全て明示し、各金融機関がどの
不動産に担保設定をし、その順位が全体として
どの位置にいて、自行の保全状況がどうなって
いるかを明確に示して、全金融機関に公示する
のが肝要です。

 これにより、金融機関側においても、自己の
担保のポジションが確認されると共に、万一
破産になってしまったら、保全状況がどの程度
悪化するか、換言すれば、破産せずに再建できれば
どの程度の保全状況の悪化(例えばマイナス3億
円)を防げるかの判断が可能となるからです。

2)担保設定状況表作成のポイント
 この担保設定状況表についても、再建時の
担保評価(ゴーイングコンサーンバリュー)と
破産となって会社を清算した場合の不動産の
処分評価(競売手続における評価)の2通りを
用意してあげると、両者の比較ができ、再建の
メリットをより強調できるでしょう。

以下次回に続きます。
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