コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。
日刊帝国ニュース 1999年11月15日
弁護士ウォッチング 弁護士 村松謙一
金融機関よ、モラルを回復せよ
銀行法第1条は、「この法律は、銀行の業務の公共性に
かんがみ、信用を維持し、預金者等の保護を確保すると
ともに、金融の円滑を図るため、銀行の業務の健全かつ
適切な運用を期し、もって国民経済の健全な発展に
資することを目的とすることを銀行の第一の使命と
することを明確に謳っている。
然るに、最近の金融機関のモラルの低下は甚だしいものが
ある。最近、とかく話題の商工ローンに対する融資も
然り。商工ローンの取立てが弱者たる借り手、保証人の
社会的生命を抹殺しかねない状態にあったことは、
貸し手たる金融機関の耳にも当然入っていたはずである。
社会的弱者を救済することこそ、公共性質を有する
金融機関の使命だったはずではないか。
もちろん、適正かつ取引先企業の経営を圧迫しないような
配慮をもって取引を継続している良心的銀行も数多く
見られるものの、一部の心無い金融機関(担当者)の
違法・不当とも思える行いが、時には人の命を奪って
いる現実から、決して目をそらしてはならない。
例えば、最近私は、そんな相談を受けた。
関西に本店を置く都市銀行の若きエリート社員であり
ながら、取引先の企業の資金繰りが悪化して、返済が
滞りがちになるや、60歳を越えている当該企業の
社長に対し、「数億円の生命保険を掛けて下さい。
加えて、死亡時の生命保険の請求権に、当銀行を
質権者とする質権を設定させてもらいます。
毎月の生命保険の掛け金を滞ることなく、必ず
生命保険会社に支払ってください。」
なんのことはない、社長の命と引き換えに借金の
返済を迫るのと何ら変わらないのではないか。
ここでは「人の命」と「お金」が全く同じ価値と
みなされているのである。
今日の大学や一流企業では、「お金」は「命」よりも
重いとでも教えているのだろうか。
ただでさえ当該会社は、毎月の資金繰りが苦しいのに
更に加えて毎月50万円に近い生命保険の掛け金を
払うのも相当にしんどいはずである。
これは、住宅ローンを組むにあたり、団体信用保険の
生命保険をセットすることとは全く次元が異なるので
ある。
この場合は、残された妻子の生活のために、住宅ローン
負債を帳消しにする目的があるが、前述のそれは、
この観点は全くなく、単に一企業としての「貸金回収
目的」以外のなにものでもないからである。
そこには、残された者の生活の安定を願う気持ちは
これっぽっちも見られないのである。
私は、件の相談者にこう回答した。
「今日のその筋の人でも、病気で寝ているご老人の
ふとんまではがして持ってはいかないですよ。
生命保険を盾に取るなんて、早く死んでくれた方が
助かると言っているのと同じじゃないですか。
そのような人の命をおもちゃにしているような
金融機関の指示に従う必要は一切ありません。
毎月の50万円の生命保険の掛け金は直ちに
やめて下さい。生命保険会社から解約されたって
いいじゃないですか。
毎月5万円前後の生命保険に掛け直して、自分の
老後か、奥さん、お子さん達の生活資金にして
あげて下さい」
会社再建のために金融機関と数多く交渉していると、
金融機関のモラルの低下というだけですまされない
犯罪行為すれすれの対応が目につくこともしばしばで
ある。
借り手側にあたる経営者の方々も、人間として問題に
なる行為には、絶対に目をつぶらないで欲しい。
返済が滞ったら、直ちに悪人になると誰が決めたの
だろうか。
一生懸命に返済しようとする姿勢こそが、人間として
一番大切なものではないだろうか。
このことだけは忘れないで欲しい。
どんなに大きな借金でも、マイナスにはならないと
いうことを。例えば、資産が10億円、それに対し、
借金が100億円あったとする。
単純に考えれば<10-100=マイナス90億円>
となりそうだが、法律上は、免責なり、償却なり、
放棄なりの手続きで、結局、借金はゼロとなって
しまうのである。
マイナスからでなく、ゼロからもう一度出発できる
のである。資産のない人からの回収は、コストのみ
かかるだけでどんなに優秀な弁護士でも不可能
なのである。
これに対し、失ってしまった命は、二度と再び元には
戻らないということを、決して忘れないで欲しい。
残された遺族の悲しみも永久に消えはしない。
追加担保の要求に対して
経営が悪化し、資金繰りが苦しくなって、金融機関に
条件変更のお願いをすると、中には、「親会社や
スポンサー会社の側で、担保を提供して欲しい。
そうでなければ、条件変更は受け入れなれない」と
木で鼻をくくった対応を示す金融機関があった。
金融機関としては、決していやがらせのつもりでは
なく、内部のマニュアルに書いてある当然の行為と
認識してのことであろう。
それはそれで理解できるのであるが、ちょっと
待って欲しい。
破産法第375条に「過怠破産罪」という規定がある。
この規定に違反すると、「5年以下の懲役または
30万円以下の罰金」という恐ろしい規定である。
その中の第3項に、「破産の原因たる事実あることを
知るに拘らず或る債権者に特別の利益を与うる目的を
もってなしたる担保の供与又は債務の消滅に関する
行為にして、債務者の義務に属せず又は、その方法
若しくは時期が債務者の義務に属せざるもの」と
規定され、当該企業の破産宣告が確定した時は、
5年以下の懲役等が待っているのである。
これは、破産状態時のような経営危機時、混乱時
には、全債権者のために公平・公正性が強く要求され、
そのうちの一債権者にのみ有利となるような抜け駆け的
担保設定や偏頗(へんぱ)返済などを禁止して財産の
散逸を防止し、全債権者に公正性を確保するための
規定である。
もう一度、当該金融機関にこの規定の存在を申し出て、
当該金融機関の申し出がこの規定に違反していないか
どうか、抜け駆け的担保設定ではないか、抜け駆け的
弁済(但し、本旨弁済は除く)ではないかなどと、
金融機関担当者、支店長と十分に協議した上で、
担保設定を考えてみて欲しい。
私の経験では、金融機関の要求のうち、義務なき
行為が見つかり、この規定の存在を金融機関の
支店長によく説明したところ、その後は、担保の
話はなくなって、スムーズに条件変更の話が
まとまった例もないわけではないことも付言
しておこう。
追記
金融機関には最後まで返済を続けた挙句、資金繰りが
行き詰まり破綻する企業が続出しています。
返済低減を金融機関にお願いするためには、経費
削減などの企業努力をしても、この程度の返済しか
できないという数値化した資料の提出が不可欠です。
逆に言えば、数値化された計画を出さずに、口頭で
お願いしますというような返済猶予を求めても、
金融機関としては協力のしようが無いというのが
実情です。
端的に言えば、金融機関との交渉は、言葉ではなく
数字で行わなければなりません。
金融機関への返済さえ低減できれば、息を吹き返す
中小零細企業はたくさんあります。
そのような企業の再建を精一杯応援しますので、
どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。
無料相談はメールでお願いします。
メールアドレス: consul-n@goo.jp
中逵(なかつじ)努
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。
日刊帝国ニュース 1999年11月15日
弁護士ウォッチング 弁護士 村松謙一
金融機関よ、モラルを回復せよ
銀行法第1条は、「この法律は、銀行の業務の公共性に
かんがみ、信用を維持し、預金者等の保護を確保すると
ともに、金融の円滑を図るため、銀行の業務の健全かつ
適切な運用を期し、もって国民経済の健全な発展に
資することを目的とすることを銀行の第一の使命と
することを明確に謳っている。
然るに、最近の金融機関のモラルの低下は甚だしいものが
ある。最近、とかく話題の商工ローンに対する融資も
然り。商工ローンの取立てが弱者たる借り手、保証人の
社会的生命を抹殺しかねない状態にあったことは、
貸し手たる金融機関の耳にも当然入っていたはずである。
社会的弱者を救済することこそ、公共性質を有する
金融機関の使命だったはずではないか。
もちろん、適正かつ取引先企業の経営を圧迫しないような
配慮をもって取引を継続している良心的銀行も数多く
見られるものの、一部の心無い金融機関(担当者)の
違法・不当とも思える行いが、時には人の命を奪って
いる現実から、決して目をそらしてはならない。
例えば、最近私は、そんな相談を受けた。
関西に本店を置く都市銀行の若きエリート社員であり
ながら、取引先の企業の資金繰りが悪化して、返済が
滞りがちになるや、60歳を越えている当該企業の
社長に対し、「数億円の生命保険を掛けて下さい。
加えて、死亡時の生命保険の請求権に、当銀行を
質権者とする質権を設定させてもらいます。
毎月の生命保険の掛け金を滞ることなく、必ず
生命保険会社に支払ってください。」
なんのことはない、社長の命と引き換えに借金の
返済を迫るのと何ら変わらないのではないか。
ここでは「人の命」と「お金」が全く同じ価値と
みなされているのである。
今日の大学や一流企業では、「お金」は「命」よりも
重いとでも教えているのだろうか。
ただでさえ当該会社は、毎月の資金繰りが苦しいのに
更に加えて毎月50万円に近い生命保険の掛け金を
払うのも相当にしんどいはずである。
これは、住宅ローンを組むにあたり、団体信用保険の
生命保険をセットすることとは全く次元が異なるので
ある。
この場合は、残された妻子の生活のために、住宅ローン
負債を帳消しにする目的があるが、前述のそれは、
この観点は全くなく、単に一企業としての「貸金回収
目的」以外のなにものでもないからである。
そこには、残された者の生活の安定を願う気持ちは
これっぽっちも見られないのである。
私は、件の相談者にこう回答した。
「今日のその筋の人でも、病気で寝ているご老人の
ふとんまではがして持ってはいかないですよ。
生命保険を盾に取るなんて、早く死んでくれた方が
助かると言っているのと同じじゃないですか。
そのような人の命をおもちゃにしているような
金融機関の指示に従う必要は一切ありません。
毎月の50万円の生命保険の掛け金は直ちに
やめて下さい。生命保険会社から解約されたって
いいじゃないですか。
毎月5万円前後の生命保険に掛け直して、自分の
老後か、奥さん、お子さん達の生活資金にして
あげて下さい」
会社再建のために金融機関と数多く交渉していると、
金融機関のモラルの低下というだけですまされない
犯罪行為すれすれの対応が目につくこともしばしばで
ある。
借り手側にあたる経営者の方々も、人間として問題に
なる行為には、絶対に目をつぶらないで欲しい。
返済が滞ったら、直ちに悪人になると誰が決めたの
だろうか。
一生懸命に返済しようとする姿勢こそが、人間として
一番大切なものではないだろうか。
このことだけは忘れないで欲しい。
どんなに大きな借金でも、マイナスにはならないと
いうことを。例えば、資産が10億円、それに対し、
借金が100億円あったとする。
単純に考えれば<10-100=マイナス90億円>
となりそうだが、法律上は、免責なり、償却なり、
放棄なりの手続きで、結局、借金はゼロとなって
しまうのである。
マイナスからでなく、ゼロからもう一度出発できる
のである。資産のない人からの回収は、コストのみ
かかるだけでどんなに優秀な弁護士でも不可能
なのである。
これに対し、失ってしまった命は、二度と再び元には
戻らないということを、決して忘れないで欲しい。
残された遺族の悲しみも永久に消えはしない。
追加担保の要求に対して
経営が悪化し、資金繰りが苦しくなって、金融機関に
条件変更のお願いをすると、中には、「親会社や
スポンサー会社の側で、担保を提供して欲しい。
そうでなければ、条件変更は受け入れなれない」と
木で鼻をくくった対応を示す金融機関があった。
金融機関としては、決していやがらせのつもりでは
なく、内部のマニュアルに書いてある当然の行為と
認識してのことであろう。
それはそれで理解できるのであるが、ちょっと
待って欲しい。
破産法第375条に「過怠破産罪」という規定がある。
この規定に違反すると、「5年以下の懲役または
30万円以下の罰金」という恐ろしい規定である。
その中の第3項に、「破産の原因たる事実あることを
知るに拘らず或る債権者に特別の利益を与うる目的を
もってなしたる担保の供与又は債務の消滅に関する
行為にして、債務者の義務に属せず又は、その方法
若しくは時期が債務者の義務に属せざるもの」と
規定され、当該企業の破産宣告が確定した時は、
5年以下の懲役等が待っているのである。
これは、破産状態時のような経営危機時、混乱時
には、全債権者のために公平・公正性が強く要求され、
そのうちの一債権者にのみ有利となるような抜け駆け的
担保設定や偏頗(へんぱ)返済などを禁止して財産の
散逸を防止し、全債権者に公正性を確保するための
規定である。
もう一度、当該金融機関にこの規定の存在を申し出て、
当該金融機関の申し出がこの規定に違反していないか
どうか、抜け駆け的担保設定ではないか、抜け駆け的
弁済(但し、本旨弁済は除く)ではないかなどと、
金融機関担当者、支店長と十分に協議した上で、
担保設定を考えてみて欲しい。
私の経験では、金融機関の要求のうち、義務なき
行為が見つかり、この規定の存在を金融機関の
支店長によく説明したところ、その後は、担保の
話はなくなって、スムーズに条件変更の話が
まとまった例もないわけではないことも付言
しておこう。
追記
金融機関には最後まで返済を続けた挙句、資金繰りが
行き詰まり破綻する企業が続出しています。
返済低減を金融機関にお願いするためには、経費
削減などの企業努力をしても、この程度の返済しか
できないという数値化した資料の提出が不可欠です。
逆に言えば、数値化された計画を出さずに、口頭で
お願いしますというような返済猶予を求めても、
金融機関としては協力のしようが無いというのが
実情です。
端的に言えば、金融機関との交渉は、言葉ではなく
数字で行わなければなりません。
金融機関への返済さえ低減できれば、息を吹き返す
中小零細企業はたくさんあります。
そのような企業の再建を精一杯応援しますので、
どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。
無料相談はメールでお願いします。
メールアドレス: consul-n@goo.jp
中逵(なかつじ)努
元金は少しです。
100年にいっぺんの不況時なので今迄 支払ってきた金額を元金を払ったこととみなし その分元金を小さくして(減らして)見直しすると言う方法とかはないものでしょうか?
consul-nです。
メッセージありがとうございます。
ご質問に対するアドバイスですが、
借入内容によっては元金が減額できる
可能性があります。
一般的にグレーゾーン金利と呼ばれる
利息制限法で規定された上限金利と
出資法で規定された上限金利の差額
については返還請求できる可能性が
あり、貴殿の借入があてはまるようで
あれば見直しは可能です。いわゆる
サラ金・商工ローンでの借入の場合
利息の過払いに該当する可能性が高い
と思います。
またグレーゾーン金利でない場合で
あっても、対処法の検討は可能ですので
借入の詳細内容をご連絡いただければ
具体的なアドバイスをさせていただきます。
メールはこちらまでお願いします。
consul-n@goo.jp
主人が脳梗塞で去年倒れて再起不能の状態になってしまいました。
恥ずかしながら私は経理には全くうとく 店頭で販売にばっかり頑張ってきました。
平成3年に地銀系列の抵当証券から6千万 5千万
7千万 3千万の借り入れをしました。
25年払いで融資を受けて いつどのような世の中になるかも知れないので一回に支払う金額ができるだけ少ない方法を選びました。
最初から厳しい状況だったのですが、自己資金を吐き出す形で居たのですが、突然 借入先の抵当証券が無くなるので系列の地銀の方へ移されました。
知識のない私どもは何がなんだかわからないまま承諾書にハンを押したようなものでした。
今に よくなると 信じつつ 自己資金を吐き出してきたのですがいよいよ厳しくなってこのままでは先が見えております。
店を手伝っている息子(44歳)に迷惑掛けないで継がせるには 借り入れ金額を下げてもらうしかないのではないかと思い
今迄 コツコツと元利共支払ってきた金額はざっと概算してでも1億2千6百万えんです。
利息が主な支払いですから残は1億6千900万円です。
これを5千万円くらいまで下げてもらういい方法はないものでしょうか?
大企業は何百億債務免除とかバンバンやってワレワレ
零細企業にはなんら免除がない
私は 常識で考えて不公平だと思います。
何かいい知恵はないものでしょうか?
何回も支払いは見直しかけて主人と私の生命保険まで担保に入れて入院給付金の果てまで支払っているのです。
借り入れした方だけ身を切って融資したほうも今迄まじめに支払ってきた誠意を汲み取って融資したほうも身を切ればいいと思います。
こんな考えは 通用しないものでしょうか?
浅はかな女の叫びです。
カマタリ様の置かれた大まかな状況は
わかりました。
ただ具体的なアドバイスを差し上げるためには
さらに詳細な状況を把握する必要がありますので、
私あてに直接メールいただけませんか。
ブログ上で詳細な情報交換をするわけには
参りませんので宜しくお願いします。
メール送付先
consul-n@goo.jp
以上宜しくお願い申し上げます。