コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。
99年7月12日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング 弁護士 村松 謙一
信用不安の回避=倒産の回避(中)
第4 借主側からの金利引き下げの具体的根拠
1. 金利に関する銀行との取り決めは、銀行取引
約定書第3条に規定されています。
なお、「金利」についての様々な問題は、紙面の
都合上省略します。(興味のある方は、村松弁護士
著「貸し渋り対策マニュアル」(オーエス出版刊)
をご覧下さい)
2. 結論から言えば、金融機関側からの一方的な
金利の引き上げに無条件に応ずる必要はないと
いうことです。
3. 逆に、公定歩合が0.1%にまで下がっており、
政府において、企業の倒産防止、経営の安定化を
図るため、長きにわたり、金利の低利誘導を
している今日においては、約定書第3条1項にいう
「金融情勢の変化、その他相当の事由がある場合」
に該当し、借主側から積極的に金利の引き下げを
求めても、決して条項違反ではないと考えています。
否、従業員を守る立場の経営者の姿勢として、
積極的に金利の引き下げをお願いすべきでしょう。
4. この点、「借主側から金利の引き下げを求め
られるか?」については、約定書の規定の仕方から
議論がありましたが、通説、実務上は、借主側にも
金利の変更申出権があることで一致しております。
5. 特筆すべきは、住友銀行が独占禁止法の視点に
おいても、これまでの銀行取引約定書があまりに
銀行側に有利に作成されているとの批判を真摯に
受け止め、他の銀行に先駆けて、独自に新銀行取引
約定書を作成し、平成11年(99年)4月1日より運用
し、それまでの「差し入れ書形式」を「当事者調印
方式」に改め、また、金利変更の点についても、
「借主側にも変更の申出権を明記している」点は、
当事者公平の視点に立って開かれた銀行として
十分に評価に値するものです。
但し、せっかく住友銀行が当事者対等の立場を
明らかにしているにもかかわらず、残念ながら追随
する金融機関の出足が遅いのが残念です。
6. 早急に金融機関の側でも、取引先の支援につき
弱者の気持ちを理解した、生まれ変わった金融機関
として、再度その協力を積極的に進めるべきで
あろう。
公的資金の注入とは、金融機関の社会性、公的
性格を目覚めさせる意味であったはずだからです。
村松弁護士のコラム引用終わり
再生の方向性や再生スキームのストラクチャーに
ついて金融機関の方々と打ち合わせする際に、重要な
ポイントとして実感するのが債務者である企業経営者
ご自身の日頃の姿勢なのです。
債権者である金融機関の方々も債権者以前に人間
であり、日頃からその方なりに精一杯経営努力されて
いて債権者に対しても真摯に誠実に対応されている
企業に対しては、何とか救いの手を差し伸べて
あげたいという気持ちを持たれている銀行マンも実は
大勢いらっしゃるのです。
債権者である金融機関には決して怖がらずに早い
段階で窮状を相談されることが重要なのです。
また経営者の方々は早い段階で相談できるような
資料(資金繰り予定表・月次決算予定表)を作成の上、
常に経営状態を把握した上で早期に相談されることが
非常に重要なのです。
さらに債務者からの要請として追加融資という形
での金融支援が一般的に期待されるのですが、
追加融資よりも元金返済凍結もしくは利息の一部減免
のほうが倒産回避・企業再生にははるかに効果的
なのです。
追加融資を受ければ、返済額が増加してしまい、
目先の資金繰りは凌げても、その負担がその後
ボディブローのように効いてくるのです。
以前バスタブの例でご説明させていただいたように
資金収支(収入と支出)のバランスを常に監視
しながら、入りが減少すれば、出も減らすという
対応こそが倒産回避の鉄則なのです。どんなに
経費削減して販売管理費を減らしても収支の
バランスが合わないのなら、迷うことなく金融機関
へ返済軽減の依頼をするべきなのです。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。
99年7月12日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング 弁護士 村松 謙一
信用不安の回避=倒産の回避(中)
第4 借主側からの金利引き下げの具体的根拠
1. 金利に関する銀行との取り決めは、銀行取引
約定書第3条に規定されています。
なお、「金利」についての様々な問題は、紙面の
都合上省略します。(興味のある方は、村松弁護士
著「貸し渋り対策マニュアル」(オーエス出版刊)
をご覧下さい)
2. 結論から言えば、金融機関側からの一方的な
金利の引き上げに無条件に応ずる必要はないと
いうことです。
3. 逆に、公定歩合が0.1%にまで下がっており、
政府において、企業の倒産防止、経営の安定化を
図るため、長きにわたり、金利の低利誘導を
している今日においては、約定書第3条1項にいう
「金融情勢の変化、その他相当の事由がある場合」
に該当し、借主側から積極的に金利の引き下げを
求めても、決して条項違反ではないと考えています。
否、従業員を守る立場の経営者の姿勢として、
積極的に金利の引き下げをお願いすべきでしょう。
4. この点、「借主側から金利の引き下げを求め
られるか?」については、約定書の規定の仕方から
議論がありましたが、通説、実務上は、借主側にも
金利の変更申出権があることで一致しております。
5. 特筆すべきは、住友銀行が独占禁止法の視点に
おいても、これまでの銀行取引約定書があまりに
銀行側に有利に作成されているとの批判を真摯に
受け止め、他の銀行に先駆けて、独自に新銀行取引
約定書を作成し、平成11年(99年)4月1日より運用
し、それまでの「差し入れ書形式」を「当事者調印
方式」に改め、また、金利変更の点についても、
「借主側にも変更の申出権を明記している」点は、
当事者公平の視点に立って開かれた銀行として
十分に評価に値するものです。
但し、せっかく住友銀行が当事者対等の立場を
明らかにしているにもかかわらず、残念ながら追随
する金融機関の出足が遅いのが残念です。
6. 早急に金融機関の側でも、取引先の支援につき
弱者の気持ちを理解した、生まれ変わった金融機関
として、再度その協力を積極的に進めるべきで
あろう。
公的資金の注入とは、金融機関の社会性、公的
性格を目覚めさせる意味であったはずだからです。
村松弁護士のコラム引用終わり
再生の方向性や再生スキームのストラクチャーに
ついて金融機関の方々と打ち合わせする際に、重要な
ポイントとして実感するのが債務者である企業経営者
ご自身の日頃の姿勢なのです。
債権者である金融機関の方々も債権者以前に人間
であり、日頃からその方なりに精一杯経営努力されて
いて債権者に対しても真摯に誠実に対応されている
企業に対しては、何とか救いの手を差し伸べて
あげたいという気持ちを持たれている銀行マンも実は
大勢いらっしゃるのです。
債権者である金融機関には決して怖がらずに早い
段階で窮状を相談されることが重要なのです。
また経営者の方々は早い段階で相談できるような
資料(資金繰り予定表・月次決算予定表)を作成の上、
常に経営状態を把握した上で早期に相談されることが
非常に重要なのです。
さらに債務者からの要請として追加融資という形
での金融支援が一般的に期待されるのですが、
追加融資よりも元金返済凍結もしくは利息の一部減免
のほうが倒産回避・企業再生にははるかに効果的
なのです。
追加融資を受ければ、返済額が増加してしまい、
目先の資金繰りは凌げても、その負担がその後
ボディブローのように効いてくるのです。
以前バスタブの例でご説明させていただいたように
資金収支(収入と支出)のバランスを常に監視
しながら、入りが減少すれば、出も減らすという
対応こそが倒産回避の鉄則なのです。どんなに
経費削減して販売管理費を減らしても収支の
バランスが合わないのなら、迷うことなく金融機関
へ返済軽減の依頼をするべきなのです。