倒産回避コンサルタントからの救命ロープ

倒産回避コンサルタント・中逵努のブログです。
恩師村松謙一弁護士ご本人のブログではないことを予めご了解ください。

金融機関には正直に窮状を打ち明ける 2

2006年04月23日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


99年7月12日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松 謙一

信用不安の回避=倒産の回避(中)

第4 借主側からの金利引き下げの具体的根拠

1. 金利に関する銀行との取り決めは、銀行取引
約定書第3条に規定されています。

 なお、「金利」についての様々な問題は、紙面の
都合上省略します。(興味のある方は、村松弁護士
著「貸し渋り対策マニュアル」(オーエス出版刊)
をご覧下さい)

2. 結論から言えば、金融機関側からの一方的な
金利の引き上げに無条件に応ずる必要はないと
いうことです。

3. 逆に、公定歩合が0.1%にまで下がっており、
政府において、企業の倒産防止、経営の安定化を
図るため、長きにわたり、金利の低利誘導を
している今日においては、約定書第3条1項にいう
「金融情勢の変化、その他相当の事由がある場合」
に該当し、借主側から積極的に金利の引き下げを
求めても、決して条項違反ではないと考えています。
否、従業員を守る立場の経営者の姿勢として、
積極的に金利の引き下げをお願いすべきでしょう。

4. この点、「借主側から金利の引き下げを求め
られるか?」については、約定書の規定の仕方から
議論がありましたが、通説、実務上は、借主側にも
金利の変更申出権があることで一致しております。

5. 特筆すべきは、住友銀行が独占禁止法の視点に
おいても、これまでの銀行取引約定書があまりに
銀行側に有利に作成されているとの批判を真摯に
受け止め、他の銀行に先駆けて、独自に新銀行取引
約定書を作成し、平成11年(99年)4月1日より運用
し、それまでの「差し入れ書形式」を「当事者調印
方式」に改め、また、金利変更の点についても、
「借主側にも変更の申出権を明記している」点は、
当事者公平の視点に立って開かれた銀行として
十分に評価に値するものです。

 但し、せっかく住友銀行が当事者対等の立場を
明らかにしているにもかかわらず、残念ながら追随
する金融機関の出足が遅いのが残念です。

6. 早急に金融機関の側でも、取引先の支援につき
弱者の気持ちを理解した、生まれ変わった金融機関
として、再度その協力を積極的に進めるべきで
あろう。

 公的資金の注入とは、金融機関の社会性、公的
性格を目覚めさせる意味であったはずだからです。

村松弁護士のコラム引用終わり

 再生の方向性や再生スキームのストラクチャーに
ついて金融機関の方々と打ち合わせする際に、重要な
ポイントとして実感するのが債務者である企業経営者
ご自身の日頃の姿勢なのです。

 債権者である金融機関の方々も債権者以前に人間
であり、日頃からその方なりに精一杯経営努力されて
いて債権者に対しても真摯に誠実に対応されている
企業に対しては、何とか救いの手を差し伸べて
あげたいという気持ちを持たれている銀行マンも実は
大勢いらっしゃるのです。
 債権者である金融機関には決して怖がらずに早い
段階で窮状を相談されることが重要なのです。

 また経営者の方々は早い段階で相談できるような
資料(資金繰り予定表・月次決算予定表)を作成の上、
常に経営状態を把握した上で早期に相談されることが
非常に重要なのです。

 さらに債務者からの要請として追加融資という形
での金融支援が一般的に期待されるのですが、
追加融資よりも元金返済凍結もしくは利息の一部減免
のほうが倒産回避・企業再生にははるかに効果的
なのです。

 追加融資を受ければ、返済額が増加してしまい、
目先の資金繰りは凌げても、その負担がその後
ボディブローのように効いてくるのです。

以前バスタブの例でご説明させていただいたように
資金収支(収入と支出)のバランスを常に監視
しながら、入りが減少すれば、出も減らすという
対応こそが倒産回避の鉄則なのです。どんなに
経費削減して販売管理費を減らしても収支の
バランスが合わないのなら、迷うことなく金融機関
へ返済軽減の依頼をするべきなのです。
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金融機関には正直に窮状を打ち明ける

2006年04月20日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


99年7月12日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松 謙一

信用不安の回避=倒産の回避(中)

第3 資金繰り交渉における借入金の金利交渉
について

1. そこで考え出されたのが、信用不安を回避すると
共に、資金繰り上も毎月の資金繰りを安定させる
ため、銀行等借入先との返済条件の変更や
金利減免の交渉がぜひ必要となるのです。

 金融機関は、「銀行秘密」という一種の守秘義務を
有しており、前述した取引先や下請先に猶予を
申し述べる場合と異なり、その猶予の申し出が
立ちどころに各取引先に知れ渡る→信用不安の
惹起ということはありません。

2. また、どの企業においても、金融機関への元利
合計の約定返済額は、毎月の様々な支払額の中
でも大きな比重を占めております。

 大体の会社は借入金を5年~7年で返済する予定
となっているでしょう。この毎月の借入金の元利金額
の返済について、内にあっては、社内経費の削減を
実施すると共に、外にあっては、金融機関に協議を
持ち掛けることは、決して悪いことではありません。

 むしろ、苦しいながらも無理をして、返済し続ける
ことで、ある日突然、寝耳に水の手形不渡り事故を
起こすことの方が、債権者としての金融機関にとって
も迷惑な話であり、避けたいことなのです。

 最近の例ですが、私の知り合いの銀行の支店長も
「もっと早く現状を打ち明けていてくれたら、もっと良い
アドバイス(返済条件の緩和等)を出してあげられた
のに、突然に、「このままでは、明日手形が不渡りに
なってしまう。お金を貸してくれ。なんとかしてくれ」
では助け舟すら出せやしない」と悔やんでいたもの
です。

3. この点、経営者の方々の考えは、全く逆で、
「銀行に窮状を打ち明けたなら、立ちどころに全てを
取られておしまいになってしまう」という考えの経営者
がいまだに多いことに驚かされます。

 もちろん、何の用意もなく、「会社が苦しい。だから
返済できない」といきなり飛び込んでは、かえって
不安を助長し、誤った情報により、債権回収に
走らせることになりかねません。

 正確な情報と金融機関が支援したくなるような内容
の説明書、正確な資料を用意することが必要です。

 金融機関が支援のために必要とする資料等に
ついては、次のコラムで説明する予定です。

4. むしろ、今回は、現在借入れている借入金の
「金利」のことについて触れたいと思います。

 仮に、10億円の借入金がある会社があるとします。
3%から2%へ金利を1%減額してもらうだけで、
年間1000万円の節減になります。

 ところで、この1000万円を売上によって稼ごうと
すると、営業利益率2%の比較的優良な会社ですら、
5億円の売上を従来の売上とは別個に獲得しなけれ
ばなりません。

 ただでさえ、売上が減少してきているこの時期に、
それとは別の売上を5億円も増やせとは、至難の
わざといっても過言ではありません。

 だからこそ、売上減少傾向のこの時期こそ、
「金利の引き下げ」は、売上増にかわるものとして、
強く意味を持つのです。

 しかも、決して貸倒れ等焦げ付くことのない売上
として、安心して計上できることも魅力のひとつです。

5. このように、重要な意味を有する「金利」の問題
にもかかわらず、企業経営者は、意外と「金利」に
ついては、触れることをタブー視しているようで、
企業経営が苦しくても、金利に触らない経営者が
なんと多いことか。(もちろん、金利に触る前に、
社内体質改善のため、全ての原価管理の見直し
や役員報酬はもちろんのこと、販管費の削減を
しておくことが大前提であるが)

次回に続きます。
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信用不安回避の重要性 2

2006年04月14日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


99年7月5日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松 謙一

信用不安の回避=倒産の回避(上)

第2 信用不安を回避するための資金繰りの
優先順位

1.私が会社を再建する際に、最も苦悩することが、
乏しい資金繰りの中でこの「信用不安」をいかに
回避するかなのです。

 そこで、乏しい資金繰りの中で、金融機関からの
新規借入に頼ることなく、いかに資金ショートをせずに
信用不安を回避するかについては、以下の点を考慮
する必要があります。

 第1に、決済日の支払いをしなくても、信用不安に
ならない相手先はどこか。

 第2に、その支払いを受けられないことで、直ちに
経営危機や生活に支障が生ずる相手先か否か。

 第3に、法律上の優先債権的扱いをされている支払い
はどれか。

 第4に、その支払いをしないと、立ち所に会社自身、
息の根を止められてしまうような支払いか否か。

 第5に、担保により保全されている相手方、或いは
保護されている相手方か否か。

 このような5つの視点を考慮して、毎月の支払内容に
ついて吟味し直すと、各支払先におのずと優先順位が
出てくるのです。

 私が自主再建をするにあたり、考慮する支払いの
優先順位は、次の通りです。
(1)従業員の給料
(2)支払手形の決済
(3)買掛金の支払い
(4)社内経費
(5)借入金の利息
(6)租税公課
(7)借入金の元本

2.ところが、多くの経営者は、むしろこの順序とは全く
逆の(7) → (1)に向かって、支払っているのでは
ないでしょうか。

 乏しい資金を金融機関等の借入金の元利返済に
あてがい、いよいよ手形決済日には、資金がショートし、
手形不渡りにより事実上倒産し、倒産現場には、
従業員の給料が未払いとして残っているという
パターンです。

3.ここで特に注意していただきたいのは、はじめにも
申し上げた通り、この資金繰りの優先順位は、
「あくまで資金ショートを発見した際の会社延命の
ための緊急避難的な一時措置だ」ということです。

 この延命措置を使う大前提は、損益ベースで
営業利益が黒字化する見込みが十分に見込まれる
ことが大前提です。

 黒字化が見込まれてこそ初めて会社再建を
債権者の積極・消極の支援を仰ぎながら目指せる
からです。

 黒字化の見込みがないにもかかわらず、単に
資金繰りを操作しても一時の延命に過ぎず、
結局は、損害を拡大して、かえって債権者の方々
に迷惑をかけることになってしまうからです。
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信用不安回避の重要性

2006年04月09日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
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99年7月5日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松 謙一

信用不安の回避=倒産の回避(上)

第1 信用不安が生ずる仕組み
1.経営者の方々の中には、未だに売上高至上主義の
固定観念から逃げられずに、売上高の減少を
信用不安に結び付け、売上高の減少を隠そうと
粉飾操作をする経営者がおられるが、絶対に
やめて下さい。

 信用不安は、とどのつまり資金不足からくるもので
あり、売上高の減少は、遠因となっても直接の
原因とはならないからです。

 否、最近の経済状況下では、減収でも増益の体質
となっているか否か、また、そのように体質改善が
進んでいるかが、経営者に問われているのです。

2.そこで、信用不安を招く資金繰りのショートなの
ですが、現実に倒産してしまった経営者の方々に
一様にいえることは、残念ながら、資金繰りに計画性
がみられなかったということです。

 山道で乏しい食糧のまま遭難したならば、一日でも
長く生き延びるために、一日に食する量を考える
でしょう。

現在の経済情勢においては、大会社であれ、中小企業
であれ、皆雪山で遭難した旅人といっても過言では
ありません。

 少なくとも向こう3カ月及至6カ月程度の資金繰りが
明確になっていなければ、そもそも経営の舵取りは
困難です。最近よく言われるところのキャッシュフロー
経営です。

 ところが多くの経営者は、盲目的に日付のとおり、
支払日の順序で支払いをしていき、結局、月末
或いは数ヶ月先に資金ショートをして、はじめて、
どうしようかと頭を抱えてしまいます。(これを泥縄方式
或いはドンブリ勘定と呼んでいます)

 そこで、顔見知りの取引先に頼み込んでその支払い
を待ってもらったり、融通手形を出し合ったり、最悪の
場合は、街金融の魔の手にかかり、ズルズルと泥沼へ
はまり込んでしまうといったケースが目立ちます。

 人の口には戸が立てられないの如く、取引先に対する
支払猶予や手形ジャンプの依頼は、立ち所に取引先
全てに知れ渡り、申し入れとは逆に現金決済を要求
されたり、担保や保証人を要求され、結局資金繰りの
悪化に拍車をかける自滅への道を早める結果に
なります。

 信用不安の怖さは、与信取引から現金取引に転化
させられ、助けられる企業をも殺してしまうという
怖さなのです。最も怖いのは、取付騒ぎです。

次回に続きます。
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中小零細企業再建への両輪

2006年04月06日 | 企業再建について
倒産回避・企業再生案件に携わる中で、業種・規模
が違えど、経営不振を招くことになった原因として
二つの要因が共通して見受けられる。それは
①資金繰り管理 と ②損益管理 がほとんど
的確に行われていないことである。
真の会社再建・再生のためには、この両輪を
正確に実施することが不可欠となる。

①資金繰り管理
経営危機に陥った企業から相談・依頼を受けた時に
まず最初に行うのが資金繰りの確認である。
企業の血液ともいえるお金の流れを正確に把握
して、今後の資金繰りを維持するための止血を図る
作業である。

相談・依頼を受ける企業のみならず、ほとんどの
中小零細企業の資金繰りの現状は、例えて言えば
足元だけを照らす懐中電灯を持って、暗闇を歩く
ような資金繰りではないでしょうか。少なくとも
3~6ヶ月後の資金繰り状況が予測できなければ
突然のアクシデント(取引先の倒産や売掛金の
回収遅延)に対して、目先の対処・問題先送りでしか
対応できず、どんどん傷口が広がってしまうような
対処療法に結果的にならざるを得ない。

そのような状況になってしまってからでは、普段の
金融機関からの資金調達は難しくなってしまい
利率の高い先からの調達で凌ぐしか無くなってしまい
急速に資金繰りが悪化してしまい、倒産への坂道を
転げ落ちる結果になってしまう。

目先を凌ぐのような管理ではなく、最低3~6ヶ月の
資金繰りが予測できる資金繰り管理が中小零細企業に
とって会社を守るためには絶対に必要なのです。

②本業の損益管理
倒産回避・企業再生で資金繰り管理と双璧を成すのが
損益管理です。簡単に言えば、いくら儲けた・損したの
把握です。目先の資金繰りに追われ、来月の手形を
落とすために必要な資金を確保するための営業活動
ではなく、単月ごとの儲け・損失を予想・把握する
ことで、徒労に終わることのない地に足のついた
経営が実現するのです。

①資金繰り管理のためには月次資金繰り予定表
②本業の損益管理のためには月次決算予定表

この2つの予定表を作成して、初めて正確な経営
状況が把握できるのです。例えて言えば、視界ゼロの
雲の中を飛行機が飛ぶためには、このふたつの
メーターがなくては安全な運行ができないようなもの
です。

具体的なフォーマットが必要な方は、会社名・住所・
電話番号・担当者名を明記の上、下記メールアドレス
までご請求いただければ、ご説明させていただきます。
この2つのメーターを導入するだけで、会社経営が
劇的に変わることは多くの担当先で実証済みです。
  
メールアドレス t.nakatsuji@funai-zc.co.jp


この2つのメーターはあくまで、会社を生き返らせる
ためのスタートにすぎません。もちろんこのスタートを
切れるだけでも倒産回避可能性は一気に高まるのは
間違いありません。しかしターンアラウンドマネージャー
として是非皆さんにお伝えしたいのは、そこから
先の話なのです。2つのメーターを完全に装備して
からが、本当の事業再生の始まりであり、中小企業・
零細企業の抱えた本質的な問題点にメスを入れる
ことで、組織に活力がよみがえり、社員の皆さんが
生き生きと働く職場へと生まれ変わるのです。
そのキーワードは「仕組み作り」です。

「仕組み作り」については別コラムで書かせていただき
ます。
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リストラに対する考察

2006年04月05日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


99年6月21日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松 謙一

第2 安易な人員整理(整理解雇)は慎むべし

みんなで渡れば怖くないの掛け声よろしく、世間では
リストラの名を借りた安易な人員整理には厳しい
警鐘を鳴らす必要があろう。

1.会社経営者にとって、会社の従業員はいわば自分
の子供と同様である。
 いかに経営者といっても、当該従業員とその家族
の人生を左右するような独裁者的権限を与えられて
いるものではないし、決して支配者などではないので
ある。
 自分が助かりたいからといって、子供を見捨てる
ような親がどこにいようか。

 会社経営者としては、まず自己の食いぶちを減らし
てでも、子たる従業員の食事は確保してあげる姿勢
が肝要である。
 それをあの人とあの人は辞めてくれという名指しの
解雇は、最後の最後の手段でなければならないし、
労働法上も、色々な手を尽くした、その後での
「せざるを得ない」といった最後の手段であることが
必要である。
 整理解雇の適正要件としては、①客観的な必要性
逼迫性、②解雇回避の処置済み、③人選の妥当性
客観性、④労働者との十分なる協議との厳格な
4条件を全て満たす必要がある。
 現在行われているリストラの名のもとの整理解雇が
これらの4条件を全て満たしているかは、大いに疑問
が残るところである。
 そもそも従業員は、家族を守るために働いている
のである。
 その従業員の気持ち、生活を無視する権限は、
いくら会社経営者といえども与えられてはいない。

2.かといって、沈没しそうな船に潤沢な食糧などありは
しないことも十分に承知している。
 とすれば、乏しい食糧を皆で計画的に分け合って
食べるしかない。
 賃金を1人当たり20%ダウンすることで、5人に1人
を解雇しなくて済むのである。
 親たる経営者はもちろんのこと、従業員同士も
みんなで苦難を分け合い、1人の犠牲者をも出さない
工夫をすべきた。賃金が右肩上がりなどとは誰も
決めていないのである。ないものねだりは、もはや
やめなければならない。
 役員の報酬は、半減してもやむを得ないであろう。
何も一生そうしなければならないというのではない。
危機水準を脱するための1~2年の辛抱だ。

3.そこで今の会社の人件費等が現在の販管費総額の
約50%を超えているようだと、明らかに人件費水準は
高額傾向といえる。人件費の削減=賃金ダウンを
考える必要があろう。

 案の定、賃金ダウンの指示を受けて、会社に文句を
いう社員が出てくるであろう。
 そのような自己中心的社員は、沈没しかかっている
船の乗組員としては不向きであり、その時は、脱出
してもらって結構だ。
 要は、危機的状況下の会社は、会社全体で犠牲
(リスク)を分散することが肝要であり、何の落ち度も
ない特定少数の従業員を犠牲(スケープゴート)に
してはならない。

4.具体例として、従業員数100人規模の会社を想定
しよう。
 平均給与30万円(賞与割付済み、福利厚生費含む)
として、月額3000万円の人件費が必要となる。
このうち、20名の解雇を実施したとしよう。人件費と
して、月額600万円の節約になる。(年間7200万円)
 これに対し、全従業員に対して、平均15%(4万5千
円)の賃金ダウンをしたとする、月額450万円の節約
になる。(年間5400万円)
 併せて、銀行にも、金利の引き下げ協力依頼をする。
(銀行取引約定書第3条1項の公定歩合の引き下げ
による条件変更)
 ちなみに、従業員100人で人件費年間3億6000万円
規模の会社としては、年商は少なくとも50億円は超えて
いなければいけない。(粗利15%で7億5000万円、
販管費6億5000万円程度、営業利益1億円(売上高
の2%)程度とすれば、当該会社の借入金の限度は
せいぜい20~30億円前後であり、金利3%平均として
年間6000~9000万円を支払っている計算である。)

 この金利につき、3%を平均2%へと、1%のレート
ダウンを実施していただくことで、年間2000万円~
3000万円の金利引き下げ効果が期待できる。
 先の賃金ダウン5400万円と約3000万円の金利
引き下げ効果により、年間合計8400万円の経費削減
効果となり、20名の特定人のスケープゴートを出さなく
て済むのである。
 もちろん以上はひとつの例であり、具体的ケース毎に
経費削減効果は異なるであろうが、要は諸経費の
見直し、金利の見直し、返済期限の延長等の内外一体
となった会社支援で、1人の犠牲者も出さずに難局を
乗り切る努力が肝要なのである。

5.以上、人員整理の前に、金融機関等の債権者に
ついても、若干の犠牲を覚悟(=協力)していただか
なければならないのである。
 企業の再建は、企業にかかわる全ての関係者が
少しずつ犠牲を負い、その会社の復旧に尽力し、
軌道修正後完全に再建のめどが立った時点で、
当該犠牲分を取り戻していけばいいのである。
 債権者としても、目先の利益や損失に目を奪われ
てはならないのである。
 真の債権回収とは、北風と太陽よろしく、良き指導者
の言に耳を傾けることが第一義なのである。
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