▼遊牧民
(ゆうぼくみん)
あるいは遊牧民族(ゆうぼくみんぞく)
牧畜(遊牧)を生業とする人々や民族を指す。
似た概念に移牧民があるが、こちらは季節ごとに移動しても定住地を持つ点が異なる。
英語では、ノマド(nomad)がほぼ相当する言葉だが(語源はギリシア語のノマデス νομάδες)、牧畜以外の生業を取る移動型の人々(ジプシーなど)を含んでいる。
農業と採集をやってきた人類が遊牧という生活習慣を発見したのは、人類の歴史に大きく影響を与えてきた。
特にユーラシア大陸の歴史においては、遊牧を両立するようになった人類が騎馬技術を獲得したことで、歴史の流れを大きく変えたと言える。遊牧民と農業民に人口の差が存在したという記録や根拠はない。現在と違って歴史的な人口分布を見ると昔、遊牧民と農業民の人口の差は存在しなかった。 また、遊牧民と言っても農業と採集を主にしてきた人類が遊牧という生活を習得したことであり、遊牧民も農業を両立してきた。
モンゴルでは人間は「赤い食べ物」と「白い食べ物」で生きているという考えがあり、赤が肉、白が乳製品を指す。冬場は肉を食べる。干し肉等に加工して保存する。乳からはバター、チーズ、ヨーグルト、馬乳酒なども作る。朝は乳茶も飲む。肉食中心の遊牧民の生活において、馬乳酒は貴重な野菜の替りにビタミンやミネラルを補うものとして夏場を中心に大量に飲まれている。酒とはいうものの、アルコール分は1-3%程度であり、水分、エネルギー、ビタミンC補給源として赤ん坊から年寄りまで飲用する[8]。酒というよりは限りなくヨーグルトに近い乳酸飲料であり、これだけで食事替りにしてしまうほどの夏のモンゴルの主食的存在である。大体1日に0.5 - 1.5リットル位を摂っているという報告が殆どだが、中には1人1日平均4リットルを飲んでいるという驚くべき調査結果もある。馬乳酒を1日3リットル飲むと1,200キロカロリーに相当し、基礎代謝に相当する。発酵の過程で増殖する酵母や乳酸菌は、モンゴルでの乏しい食物繊維の替わりに、菌体が腸管老廃物を吸着して排出させている可能性がある。北京農業大学の研究では、馬乳酒には12種類の人体必須微量元素、18種類のアミノ酸、数種類のビタミン群が含まれていた。乳酸菌がビタミンCを生成し、野菜を摂らない遊牧民のビタミンC補給源となっている。馬乳酒にはビタミンCが100 mlあたり8-11 mg含まれている。馬乳中の乳糖は発酵によりその多くがアルコール、乳酸または炭酸ガスに変換されるので乳糖不耐症の問題も起こりにくい。。夏季に遊牧民が食事を摂らず馬乳酒のみで過ごしていることが旅行記に記されている。ただ乳糖不耐症のモンゴル人もなかにはいる。
チベットやモンゴルでは輸入品である団茶(固形茶)が貴重品ゆえに貨幣の役割をも担った。 淡水魚、野菜、果物は通常入手できないため、ほとんど食べない。 上記のように肉(馬肉や山羊肉。ホルホグなど伝統料理がある)、乳製品、馬乳酒が必要なエネルギーとタンパク質を提供し、不足している糖分は体内でのアミノ酸からの糖新生で補われ、ミネラル、ビタミン類は馬乳酒が提供し、酵母と乳酸菌が食物繊維の代替を果たしている。必須脂肪酸については、家畜が自然の草を餌とするため肉、乳製品、馬乳酒にω-3脂肪酸とω-6脂肪酸がほどよいバランスで含まれている。偏った食事ではあるが、必要な栄養素はすべてそろっていて健康を維持できることになる。また魚を食べることもある。
〔ウィキペディアより引用〕