京の昼寝~♪

なんとなく漠然と日々流されるのではなく、少し立ち止まり、自身の「言の葉」をしたためてみようと・・・そんなMy Blogに

「阿蘭陀西鶴」/朝井まかて

2015-01-09 | Book

「阿蘭陀西鶴」/朝井まかて(講談社)



恋歌」で直木賞を受賞した朝井まかてさんの新作。
江戸前期に俳諧師・浮世草子作者として活躍した井原西鶴。
言うまでもなく、「好色一代男」、「世間胸算用」、「好色五人女」等の
浮世草子で知られている。 俳諧師としては、大矢数俳諧を敢行し、
一昼夜に多数の句を吟じ、23,000句を休みなく発する興行を
打ったこともあるが、その異端ぶりから、「阿蘭陀流」とも呼ばれた。
そんな西鶴の立身出世を、盲目の娘おあいの心象風景を通して描いていく。

あおいは9歳で死別した母みずゑから、盲目でも憂き世を生きられるよう、
音と匂いと手触りで生活する術を叩き込まれる。 なので料理も裁縫も、
健常者以上になんなくこなすのだった。
大きくなって、西鶴に習い、ひらがな五文字も書けるようになる。
亡くなった母と名を馳せた父に愛されながら、
ハンディをもったおあいは健常者以上に何でもこなし、
またハンディがあるが故に様々な部分で敏感で繊細な心を持つ。
また、あおいと女中・お玉のやりとりも面白いし、弟子たちとの係わり合いも
涙と笑いもものがたり。

さらに松尾芭蕉との確執や近松門左衛門との交流。
創作に一切妥協なし。 傍迷惑な天才作家・井原西鶴の人となりを、
娘・おあいの感性あるフィルターを通して描いていく。
このあたりは作者の他の作品にも共通する、
温かい血の流れを感じずにはいられない。

関西と関東の趣向の違いや芸の違いが、
人間づきあい同様、面白おかしく描かれているところは秀逸だ。


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