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「シャープ 偶発債務3,500億円」報道に思う

2016-02-26 | 会計・株式・財務
ようやく熱愛が成就したと思ったら、新たな大きな障害か。いやはや、下手な恋愛ドラマよりも面白い。
鴻海傘下入り(出資66%)が決定したシャープ。
これで一息と思ったら、まだありました。

まずは時事通信のニュースより。
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米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は25日、関係筋の話として、鴻海(ホンハイ)精密工業が、買収する予定のシャープから、総額約3500億円の「偶発債務(訴訟や会計変更などで将来返済義務の発生する恐れがある債務)」のリストを24日に受け取ったと報じた。
 鴻海は25日、シャープから新たな重要文書を受け取り、「内容を精査する必要がある」として、買収契約をしばらく見合わせることを発表した。鴻海は文書の内容は明らかにしていない。関係筋によると、鴻海はこの100項目のリストを精査しているが、買収は断念していないという。
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続いて日経新聞より。
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鴻海精密工業は25日、シャープ買収に向けた契約を暫定的に見合わせると発表した。「シャープから24日午前に受け取った文書に、はっきりさせなければいけない内容がある」としており、関係者によると「契約には数日かかる可能性がある」。この文書は約3500億円に達する財務のリスク関連情報で、退職金や他社との契約に関する違約金、政府補助金の返還などに関する内容が含まれているもよう
 鴻海はリスク情報についての協議を求めたが、シャープはそれに応えず「取締役会を開いて買収受け入れを決めた」(関係者)という。まだ鴻海は資金拠出を決める取締役会を開いていない。シャープはリスク情報の扱いを話し合うため、幹部を鴻海に派遣した。
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契約見合わせは、当然ですよね。
ちなみに、2016年3月期第3四半期連結会計期間(平成27年12月31日)の有価証券報告書に記載されていた偶発債務は以下の通り。

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偶発債務

(1)保証債務


従業員住宅資金借入に対する保証 12,478百万円

(2)ソーラーパネルの原材料(ポリシリコン)の購入契約関連

ソーラーパネルの原材料(ポリシリコン)の購入契約については、買付契約評価引当金を設定している。ソーラーパネルの原材料(ポリシリコン)の当第3四半期連結会計期間末における購入契約には転売が禁止されているものがあるため、将来使用見込が無くなった場合には回収が困難となり、追加の損失が発生する可能性がある。当該転売が禁止されている原材料の購入契約の買付契約評価引当金控除後の契約残高は28,314百万円である。

(3)生産拠点で使用する電気等の供給に係る長期契約関連

堺工場において太陽電池を生産するために必要な電気等の供給につき、複数のサプライヤーとの間で長期契約を締結している。当該契約の当第3四半期連結会計期間末の未経過残高は合計で39,581百万円(残年数は1.75年から13.25年)となっており、いずれも中途解約は不能である。

当該電気等の供給に関する長期契約により、年間480メガワットの太陽電池生産が可能となっているが、堺工場における実際の生産量は現在年間160メガワット程度に留まっており、これらの長期契約は、エネルギーソリューション事業の割高な生産コストの原因となっている。しかし、堺工場における電気等の市場価格や当該契約によらない場合の電気等の調達価格及びそれらに基づく適正な生産コストの算定はできないため、当該契約に係る損失の見積りは困難である。

(4)その他

TFT液晶事業に関し、欧州委員会競争総局等による調査を受けており、また、北米等において損害賠償を求める民事訴訟が提起されている。

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別の報道では偶発債務は「100項目」とあり、当然に上記項目も含まれているのでしょう。
しかし、多くの方が気にされているのは、「まさか本来、財務諸表に注記されるべき重要な事象が、注記されていなかったってことはないんだろうね」ということでしょう。新たな会計不信の火種になりかねませんからね。

偶発債務について会計監査上で重要なルールは、「債務保証及び保証類似行為の会計処理及び表示に関する監査上の取扱い」となり、これまでもこれに則って適正に処理されているとは思いますが、万が一、監査法人(あずさ)が「100項目もあるなんて聞いたことないよー」ともなると、恋愛ドラマが一大ドタバタコメディに発展するなることでしょう。

シャープも一連の顛末について投資家など利害関係者に対して迅速・誠実に説明すべきだったかと。
結局、こういう対応が迅速ができなかったからこそ、経営危機に陥ったんでしょうけど。

おあとがよろしいようで。

シャープ崩壊 ―名門企業を壊したのは誰か
日本経済新聞出版社










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