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「退職給付信託」の意外な活用法とは? -昔の名前で出ています-

2006-01-11 | 会計・株式・財務
私が自腹で購読している「旬刊 経理情報」の06年1/10・20合併号に地味ですが
興味深い記事がありましたので、ご紹介及びコメント。

H12年頃、退職給付会計導入の際に一時的ながら脚光を浴びた「退職給付信託」。
ここにきて財務ツールとして新たな活用法が注目され始めているようです。

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旬刊 経理情報 06年1/10・20合併号
「退職給付信託の新たな活用法と留意点」のポイント

■退職給付信託とは

・企業が保有する有価証券や現金などを信託契約に基づいて信託銀行に委託。
・当該信託資産の使途を退職給付の支払いや企業年金掛け金への充当に限定した契約
・一定の要件を満たせば、退職給付会計上の退職給付債務や年金資産のように、
 オフバランス化が容認される。

■退職給付信託のメリットとデメリット

①メリット
・積立不足の穴埋めが機動的に実施できる。
・バランスシートの改善効果がある。
・退職給付の支給原資が確保され、従業員・投資家の安心感高まる。
・保有株式の議決権を留保したまま拠出できる。

②デメリット
・使途が退職給付目的(退職金支払いや企業年金の掛金)のみに限定される
・企業年金のような税制優遇措置が無い。

■退職給付信託の新たな活用法

①団塊退職2007年問題への対応

・上場企業全体で見ても、会計上の退職給付引当はある程度進んでいるものの、
 実際の至急原資としての年金資産の充足度は決して高くない※。
  (企業によってバラツキが大きいこともあるが)

   ※1部上場1,536社につき試算。
      ①年金資産÷退職給付債務=平均50%
      ②(年金資産+退職給付引当金)÷退職給付債務=平均84%

・そこで、早晩必要となる退職給付金支給に備えた支給原資の確保が必要となる。
 退職給付信託がそのための手段の1つとなりうる。

②投資家対策としての積立不足の圧縮

・積立不足対策としての代行返上は一巡、かといって給付設計を見直すと
 従業員のモチベーション低下につながりかねない。打ち手は意外と限られている。
・より早期に積立不足を解消して投資家の評価を高めるために即効性のある
 退職給付信託を用いる。
 
③買収防衛策・株主対策
・事業資金に回す予定のない資金については、退職給付信託に拠出することで
 積立不足を圧縮し、近い将来に必要となる退職金支給原資としての「紐付け」を
 行ってしまう。

 →現金を退職給付信託に拠出。退職給付信託は、年金会計上はオフバラ化されるので
  投資ファンドや既存株主からの現金活用プレッシャーから逃れやすくなる、
  ということです!!

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(コメント)
①昨年5月、日産自動車が興味深い取り組みをしております。
 起債によって調達した2,280億円の現金を退職給付信託として設定すると
 発表したからです。
 バランスシート上では負債の置き換え(「退職給付引当金」→「社債」)に
 過ぎないのですが、
  a)団塊世代の大量退職に伴う支給原資への要請に対処しつつ積立比率を高める
    対応であったこと、そして、
  b)企業財務のリスク低減(キャッシュフローの安定)を通じて企業評価が
   向上すると見られた、
  ことから、概ね市場からは好意的に受け入れられたようです。

 従来、退職給付信託には持ち合い株などを信託するのが常道でしたが、
 今後もいろんなバリエーションが出てきそうです。


②団塊退職問題、大買収時代といった企業財務上リスクについて、その解決のヒントが、
 最近すっかり忘れ去られていた退職給付信託にあったとは・・・・。
 まさに、「温故知新」です。

③忘れてはいけないのが、以前、記事にしました「高齢者雇用促進法」の影響。
 意外と退職給付債務の削減に貢献するかも知れません。
 次の決算発表時に、次期業績予想のところでサプライズを起こる会社も出てくる
 かも知れません。(あてずっぽうですけどね。)

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