goo blog サービス終了のお知らせ 

 ◆「財務アナリストの雑感」 2024◆

会計士兼アナリストによる屈指の歴史だけがウリの会計・財務・株式・金融ブログ。異常な経済金融環境を一刀両断!できるかな?

会計バトル 3.2頂上決戦 親会社説vs経済的単一体説、結果はいかに?

2006-03-03 | 会計・株式・財務

 最近更新が遅れて申し訳ありません。
今日は新人君とカラオケに行きました。
行きつけの店が今日半額サービスだったもので。


まずは大型ファイナンスを発表した楽天。
2日の株価は予想通り、希薄化したほどは落ちませんでしたね。
やはり市場はある程度織り込んでいました。


さて本題。
2月18日付拙稿「会計バトル 3.2頂上決戦 親会社説vs経済的単一体説」
http://blog.goo.ne.jp/dancing-ufo/e/1c11c6af2c03f26c131502451956e307
でご紹介した
「インターナショナル・カンファランス-会計基準のコンバージェンス(収斂)に向けて-」
http://www.asb.or.jp/seminar/seminar_info.php?s_code=FS10104

行ってまいりました。
参加費タダ。しかも会計士協会のCPE(継続的専門研修)の単位も付いてきます。
国際会計基準審議会(IASB)のTweedie IASB議長、斎藤 静樹 企業会計基準委員会(ASBJ)委員長による基調講演などに続き、お目当てのバトルへ。

IASBとFASBから公開草案が出され、今後、日本基準と大きく相違する可能性の
ある「連結/企業結合」をテーマに取り上げ、問題の核心である親会社説と経済的単一体説を
中心に、ASBJとIASBの代表者によるパネル・ディスカッション! です。


何だかさっぱり分からないという方のために、論点を整理してみましょう。

■ 親会社説とは?

連結財務諸表作成の基本的な考え方に関する1つの説。
親会社の株主の視点から財務情報を作成・開示すべき、という立場でして、
連結財務諸表を親会社の財務諸表の延長線上に位置づけております。
この考え方は、これまで日本、米国、国際基準、いずれも採用していたと
いわれております。
ところが、昨年、IASBと米国財務会計基準機構FASBが発表した
連結・企業結合関係の公開草案では、
経済的単一体説の考え方にシフトしたのです。


■ 経済的単一体説とは?

これも連結財務諸表作成の基本的な考え方に関するもう一方の説。
企業集団全体の視点から財務情報を作成・開示する立場。
連結財務諸表を、親会社とは区別される企業集団全体の財務諸表と位置づけます。


■ 親会社説と経済的単一説がもたらす会計処理等の相違点は何か?

(1) 連結財務諸表上の表示
     少数株主持分・・親会社説では「資本」とは区別        
                経済的単一体説では「資本」に含める
     少数株主損益・・親会社説では、当期の損益から控除
               経済的単一体説では、損益計算書での表示なし。  

(2)100%未満の取得における「のれん」の認識
        親会社説では、部分のれん
        経済的単一体説では、全部のれん
            (少数株主持分に対応するのれんまで計上する!)

(3) 支配している場合における親会社持分の変動
    (親会社持分の変動により生じる差額の処理
          親会社説=損益取引
          経済的単一体説=資本取引

(4)支配の獲得および支配の喪失    
   (既存の投資額を、時価に評価替えしないのか(親)、するのか(単一))


■ パネルディスカッションの勝敗は?

親会社説(日本側)の優勢勝ちという印象ですね。
 これまで米国では2度、経済的単一体説にチャレンジしていますが、
 多数の反対にあって断念した経緯があります。
 また今回の公開草案も、ロンドン等では市場参加者よりかなり厳しい批判を
 受けていたようでして、松下電器からご出席のパネリストも「市場の声を聞け!」と
 かなり憤慨のご様子でした。

・ では経済的単一体説の何が問題なのか?
  ① 財務諸表の目的は親会社の株主に対するものではないのか?
  ② IASBの企業結合基準は親会社説に立っており、矛盾している、
  ③ 少数株主持分は負債じゃない→ならば資本、っていう発想がおかしい。
   ④ 「全部のれん」を認めてしまうと、非支配部分(=少数株主持分)に対応する
    部分は「自己創設のれん」となってしまう。            などなど

  IASBの考え方の根底には、
  ・少数株主持分は負債じゃないから資本に入れるべき。
  ・資産も負債も今後、全面時価評価にしていくんだから、少数株主持分だけ
  やらないのもおかしい、
 といった考え方があるようなのですけど、イマイチ説得力に欠けましたね。

・・・・しかし、市場の声を聞け、っていう攻め方も他力本願的な感じがします。
   この件に関しては市場の声を自論に有利な方向に使うことができますが、
   他の論点ではかえって日本基準を追い込むことにならないか?とも思いました。

まだまだこの問題、紆余曲折がありそうです。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 楽天の公募増資1080億円に思う | トップ | どろんこ経営 -ヤマノホー... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

会計・株式・財務」カテゴリの最新記事