お待たせしました。
ようやく記事を更新したいという気持ちが盛り上がってきました。
久々の更新で手が震えております。
早速いきましょう。
先日、会計士協会が
監査委員会報告第74 号「継続企業の前提に関する開示について」
の改正案を出しました。
いわゆる「ゴーイングコンサーン注記」(以下GC注記)の根拠規定です。
国際基準との整合性を踏まえてのことだそうですが、
「さぁこれから決算短信を出そうか」という絶妙タイミングでの変更ですので、
GC注記を減らしたいとする当局サイドの意図が痛いほど伝わってきます。
改正案では、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が
存在し、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお
継続企業の前提に関する「重要な不確実性」が認められるときは、
継続企業の前提に関する事項を財務諸表に注記しなさい、としております。
言い換えますと、
「重要な不確実性が認められなければ」注記しなくてよいことになったのです。
とにかく、これまでGC注記をしていた会社も、
H21/3期決算短信では経営改善策の存在などを理由に
「重要な不確実性なはくなった」として注記を免れる・・・・
・・・・というケースが出てきそうです。
もちろん、継続企業の前提に関する注記を開示するまでには至らない場合
であっても、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が
存在する場合には、有価証券報告書の「事業等のリスク」及び
「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に
その旨及びその内容等を開示することを求めております。
しかし、会計監査人の監査対象とならないため、実効性が期待できない公算は大。
だってそうでしょう?。みずから有価証券報告書の「事業等のリスク」欄に
「我々の会社には継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が
存在します」って記載するバカ正直な会社って、あるのでしょうか?
もしそういう奇特な会社があれば、それこそ、
各証券取引所が表彰する優良ディスクロージャー企業の有力候補ですよ。
ただ、一連のニュースで一番肩を落としているのはいうまでもなく夕刊紙。
かくなる上は、有価証券報告書まできっちりフォローして、たとえば、
「今回はGC注記を免れたけれどまだまだ安心できない○○○社」といった
執念あふれる特集を期待します。
最後に、株式投資的な観点から、
「GC注記解除に伴う買い戻し特需」はどの程度期待できるのか?
を考えてみました。
最近のGC注記は、借入の際の財務制限条項(例:2期連続赤字しない、
純資産を前期末の75%程度を維持するなど)に抵触し、
借入金の契約条項の履行が困難となってしまったケースが多いようです。
これに対して改正案によりますと、
①有価証券若しくは固定資産等の企業が保有する資産の処分に関する計画、
②新規の借入れ若しくは借換え、
③新株若しくは新株予約権の発行等の資金調達の計画
のいずれかを準備・作成して監査人に提示できるかがポイントとなるようです。
しかし、上記規定で救われる企業は売却可能ないし、担保提供可能な資産を
一定程度保有している、財務体力に余裕のある先に限られる可能性が大きい。
一方、新たなスポンサーを得るなどして新株発行等で脱出する企業もあるでしょう。でもその時は、ファイナンスに伴う希薄化となりますから
株価はどこまで上がるものやら・・・・。
・・・・・そうやって考えてみますと、
「GC注記解除特需」は不発に終わるかも知れませんね。
ではまた。
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GC注記で済まないような重度の不振会社について、監査意見差し控えで逃げることを防止する改正です。
国際基準との調和とかいってますが、この金融恐慌で意見差し控え乱発では証券市場がもたないと判断したための超緊急措置です。
(大手デベも意見差し控えが倒産の引き金になりましたし)
ポイントは「再建計画の合理性・実行可能性」の判断までを監査人が負うかどうかです。
改正前は負わせていたので、危ない会社の計画合理性なんか認められないとして意見差し控えしたわけです。
今回の改正により、重要な不確実性がある場合にGC注記して無限定適正意見をだすようになったので、監査人は意見差し控えで逃げられません。「重要な不確実性がない」などと軽々しく保証できないからです。ましてやこのご時世です。
いままでのGC注記会社についても、完全無欠の再建計画でもない限り、注記は保守的に継続されるでしょう。
なので、GC注記会社は一層増えるはずです。