お疲れ様です。
タイトルをご覧になってイブ・モンタン主演の名画「恐怖の報酬」
を思い出された方は多いでしょう。
高額の報奨金をゲットするために
油田火災の消火のためニトログリセリンを運搬する男達を巡る
第一級のサスペンス。衝撃的な結末は強く印象に残りました。
恐怖の報酬 [DVD]ビデオメーカー |
でも、今回は映画の話ではありません。会計の話。
勤務先の同僚・ハカセ君ことY氏にそそのかされて
週刊ダイヤモンド 1/31号の早売りをゲット。
(書籍代690円は皆様によるスポンサーリンク収入、約1週間分で賄うことができました。
この場を借りて御礼申し上げます。引き続きよろしくお願いします。)
週刊 ダイヤモンド 2009年 1/31号ダイヤモンド社 |
特集は「新興市場の断末魔」
(・・・別に新興市場だけじゃなくて株式市場全体が断末魔なんですけどね。)
最新データを通じて、あらゆる角度から新興市場に巣喰う問題企業をあぶり出し、
信頼回復に向けて何をなすべきかを問うと。
◆その中で私はp.54「許されざる“監査法人“」「に注目しました。
同誌では「市場の信頼を担保するべき監査法人が、市場から退出させるべき企業
の延命に手を貸している現状は許さざるを得ない」という厳しい視点から
幾つかのランキングを作成。
その1つが、「監査報酬の対売上高比率が高い新興企業20社」ランキング。
これは、
・監査リスクが高ければ監査報酬もそれに見合って高い、
・監査報酬は企業規模によって上下する、
といった傾向を踏まえて、売上高対比で並べたもの。
比率が高いほど監査リスクも高い可能性があるとの仮説に立つものと見られます。
自分の後学のために
順位、証券コード、監査報酬対売上高比率、担当監査法人の順でメモ。
(なお、末尾に★印のある先は、継続企業前提に疑義注記が付された先です)
①4567 9.80% ウイングパートナーズ ★
②7774 7.48% トーマツ
③2760 6.23% あずさ
④4571 5.73% あずさ
⑤4764 5.60% ペガサス大和 ★
⑥2342 5.09% トーマツ
⑦8462 4.52% 京都 ★
⑧3821 4.34% あずさ
⑨8489 4.04% アスカ ★
⑩2316 3.94% アスカ ★(上場廃止予定)
⑪6721 3.65% トーマツ ★
⑫2495 3.59% 新日本
⑬3787 3.59% 和宏事務所
⑭2477 3.43% 新日本 ★
⑮4565 3.39% トーマツ ★
⑯4815 3.34% 清友 ★
⑰8783 3.33% トーマツ
⑱4566 3.08% プライム ★
⑲ 3779 3.07% アスカ ★
⑳ 4352 2.90% フロンティア★
因みに、新興市場平均は0.34%ということです。
コンスタントに売上が確保できない創薬ベンチャーなど研究開発型の企業が
含まれている点にはご留意頂きたいですが、
この20社中12社に継続企業注記(★)が付されておりまして、
それなりに意味のある表ではないかと思います。
これに加えまして、
監査法人別に、監査対象(新興企業のみ)に占める、
上記比率の上位200位にランクイン企業数の割合を集計した
「監査報酬の対売上高比率が高い企業を多く抱える監査法人のランキング」「がコレ。
1位50.0% (6社中3社)
2位 45.5%(11社中5社)
3位41.7%(12社中5社)
4位37.5% (8社中3社)
5位33.3% (6社中2社)
6位 28.6% (7社中2社)
7位 28.0%(25社中7社)
8位 20.0%(10社中2社)
8位 20.0%(5社中1社)
10位19.0%(21社中4社)
10位19.0%(21社中4社)
定義など詳細は、同誌でご確認ください。
まっ、特にランキング上位は
ハイリスクハイリターン型監査と言われても仕方ないか・・・・。
以上で、表題の意味がおわかりかと・・・・・。
◆同誌では、ウィングパートナーズ監査法人・赤坂代表社員にインタビューを
しておりまして、気になったところをメモしておきます。
・所属会計士は5人に対して、関与先は20社まで拡大しているが
来年はさらに10社増を目指す。
・9月以後、問題企業の駆け込みが増えて2社に1社は断っていると。
・監査契約を結ぶ上場企業の基準は2つ
①会計基準に問題がないこと
会計処理にさえ問題がなければ、たとえ業績が厳しくとも
ゴーイングコンサーン注記を付ければいいだけの話
(↑この割り切りが凄い)
②反社会的勢力との関係がないこと
このウィングに断られた50%ってのも
どこかが引き受けたんですよね。
凄く包容力のある業界ですね。会計監査業界って。
◆もちろん会計士協会・増田会長のコメント(p.58)も紹介しないといけません。
「みすず監査法人の廃業で監査難民が続出するという観測があったのに、
結果として、大騒ぎにならなかったということは、
本来は引き受けちゃいけない監査を引き受けた監査人がいたということ。」
「でも、大手が見放した上場企業を中小・個人が引き受ける場合は、
よほど慎重に考えないといけない。
時と場合によっては、監査を断る勇気も持たないと。」
「新興市場の問題についてよく監査法人の責任を問われるが非常につらい。
監査人の99%はまじめにやっているんですよ。」
↓
↓
会計士は約1万9000人。
ということは1%・190人も不届者がいるってことですか。
結構多いッスね。
しっかりチェックして下さい。その1%を。
◆そして、私は増田会長の、泣きの入った一言が
最も強く印象に残りました。最後にご紹介。
「監査法人だって厳しいんです。
一例を挙げれば、繰延税金資産。
次の決算期における利益見通しが立たなければ、繰税は計上できない。
でも、100年に一度という激動期に来期のことなんてわからない。
当の上場企業にだってわからないのに、
監査法人が(上場企業の財務諸表を)保証できるわけがないんです。本来は。」
おっしゃる通り!
おそらく、今度の決算で「繰延税金資産」の監査を担当される方は、
100年に一度の難問に苦しむことでしょう。
関与先の業績の先行き不透明感という「恐怖」と向き合う報酬、
もうちょっと引き上げていいかも知れませんね。
また行きます。
※スポンサーリンク、「もしご興味のあるものがございましたら」クリック下さいね。
金融経済ド素人で長いこと消費者金融に支払い続けており、先頃“過払い”なるものを知り、弁護士経由では無く個人で交渉成立させた方まで居るとの事。
そこで弁護士費用が気になりまして、こちらが詳しそうなので暫し閲覧させて頂きます。
ご挨拶まで。
コメントありがとうございました。
しかし、こちらのブログでは
弁護士費用がどうとかといった情報を
取り扱う予定は、まずないと思います。
それでも時折ご覧ください。
無事に過払い返還されることを祈念いたします。
こちらでその商売に対する「考え方」を参考にさせて頂きました、金融会社も商売、こちらもデメリット覚悟で借りた訳ですからきっちり返済して行く方針に切り替えました。
お陰様で腹が決まりました、有難う御座居ます。
会計士補のまま監査業界を離れたい今、貴重な監査業界情報を入手させていただき、深謝いたします。
さて、ハイリスクのクライアントを引き受ける監査法人があることは、一般的にはネガティブに捕らえられますが、個人的にはありがたいことと思っております。
というのも、大手法人が無責任にもハイリスククライアントを切りまくっている今、当該企業の監査人が見つからず上場廃止になった場合、迷惑こうむるのは一般投資家です。
そのことを考えると、ハイリスククライアントを引き受けてくれる監査法人があるのはありがたいことと思っております。
漏れ聞こえるところでは、中小監査法人も、へたうてはパートナー個人の責任に繋がるわけですから、最低限のところは押さえて監査していると聞いておりますし。
GCが必要なら、注記しなければ契約解除だよ、とむしろ強い態度で望めると聞いております。
もちろん、監査基準のもとめるハイレベルな品質管理はできていないでしょうが…。(大手以外監査基準のもとめる品質管理はどうせできませんが)
私はむしろ、大手法人がハイリスククライアントを無節操に切りまくっているほうが問題で、協会は、ちゃんと合理的な理由により契約解除しているのかモニタリングすべきだと思います。
大手がハイリスククライアントを契約解除するのは、彼らの開示姿勢の問題だけでなく、監査法人が事業計画を精査する能力がなくて、GCなどに対応ができず、契約解除と安易な手段に流れていることもあると思いますし。それに社内の審査面倒という理由もあるかと。
大手法人が責任持って監査、開示させれば中小が落ち穂拾いして批判されることもなくなります。
大手法人は、責任持って戦って欲しい、というのが私の思いですがいかがでしょうか。