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V字回復型「中期経営計画」のカラクリとは?

2005-11-09 | この決算書・会計処理はおかしい
相変わらず冴えない記事ばかり続いておりますが、
それでも昨日は170名様にご覧頂いたようで、
有難い限りです。

さて、本題。

今や投資家にとって、企業側が作成する「中期経営計画」は
投資判断する上で欠かせないものになってきたのではないでしょうか
(そうでない投資家さんも多いでしょうけど)。


確かに、中期経営計画(以下、中計)では経営者の
ビジョンや戦略を「業績の目標」として数字で表現
していますから、分かりやすい。
投資家はそのストーリーの実現可能性をあれこれ考えて、
投資判断をするのが一般的ですよね。


でも経営者の立場からしますと、
掲げた以上は計画は達成させたい。
じゃぁ、そのために会計的に使えるテクニックは無いか?


この常套手段こそ、「いわゆるⅤ字回復型」シナリオです。


要は、先々生じるコストを前倒しで特別損失でドカンと計上。
翌期以降はコストが軽くなる分、利益は自ずと増える。
しかもさらに、収益まで前倒しにする会計方針の変更など
絡ませれば、効果抜群。
特別損失の金額にもよりますが1、2期の増益は
確保できるのではないでしょうか。


「コストの前倒し」の例では、楽天が、企業買収の際に生じたのれん
(20年以内で均等償却)を発生した期で一気に償却して大赤字、
っているのがありました。
(しかし、のれんの一括償却については、それを禁止する
企業結合会計基準が来年から適用されますので、
やるなら今のうちですけど)


そしてたまたま、これぞ中計(悪い意味で)っていうのを
見つけました。
今日の日経/企業財務欄に業績修正記事のあった消費者信用会社
セントラルファイナンスが、まさにこのパターンにハマっています。
実例で見てみましょう。


この会社のHPから「中期経営計画策定のお知らせ」
http://www.cfweb.co.jp/download/news_051108_04.pdf
の最終ページ(20ページ)の右下から抜粋します。
ここにはこの中間決算で計上する特別損益が書いてあるのですが、


「収益計上基準の変更 特別利益157億円」①
「営業債権の健全化に向けた引当強化(引当基準の変更)特別損失344億円」②

①-②により、特別損失のほうが▲187億円多いです。
経常利益に影響させないように、その“下“で多額の損を計上していますよね。


次に、中期経営計画の計画数値(14ページ)をご覧下さい。
数字を下に書き出しました。

      H17/3期実績   H18/3期  H19/3期 
経常利益   50億円      138億円   155億円
          ③         ④      ⑤

経常利益がH17/3期実績対比でどれだけ増えるか?って見てみますと、
 2期分合計で (④-③)+(⑤-③)=88+105=193億円

この中間期にネット特別損失 ▲187億円、
今後2期の経常増益幅の合計 +193億円

あたかも経常利益がその後増えるような計画になっていますが、
何のことはない、費用を付け替えているだけですよ。
これじゃぁ「朝三暮四」ですよ。
投資家さんが「猿」扱いじゃないですか?
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ちょうさん‐ぼし【朝三暮四】
《中国、宋の狙公(そこう)が、飼っている猿にトチの実を与えるのに、
朝に三つ、暮れに四つやると言うと猿が少ないと怒ったため、
朝に四つ、暮れに三つやると言うと、たいそう喜んだという
「荘子」斉物論などに見える故事から》
目先の違いに気をとられて、実際は同じであるのに気がつかないこと。
また、うまい言葉や方法で人をだますこと。
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ちなみに今日、この銘柄がストップ高になったやに聞きました。

まさか、こんな子供だましの計画に踊らされたのではないですよね?

エッツ?
「この手法だからこそ、計画の達成可能性が高いから、買ったんだ」って?
なるほど、おみそれしました!!。


でも、この手法って監査法人が認めないって聞いたけど。
しかも、今期予想の最終利益3億円。
これってバレバレで、数字作ってますよね。
(ギリギリ黒字確保)

エッツ? あの有名な監査法人が担当しているんですか?
やっぱり。
カネボウ粉飾の際は、最終利益を1億円以下としていましたけど、
株式相場が上がっているから3億円にしたんですかね?


皆さんもこういうカラクリがある、ということを踏まえた上で
賢い投資をして下さいね。 

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