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ソフトバンク、ボーダフォン買収に思う

2006-03-05 | 事業再生・M&A

 まだ会社側からの正式発表がありませんが、
日経新聞がこれまで具体的な観測記事を複数出しておりますので、
これを前提に、簡単にコメントしたいと思います。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
■ソフトバンク、ボーダフォン日本法人1.7-2兆円で全株取得へ

 ソフトバンクは英ボーダフォンから、国内携帯電話3位のボーダフォン日本法人
の全株式を取得する方向で大筋合意した。
買収額は1兆7000億―2兆円の見込みで、日本企業による買収としては過去最大級となる。

買収によりソフトバンクは固定電話から携帯電話まで手がける売上高約2兆5000億円の
総合通信会社となり、通信第2位のKDDIに匹敵する企業規模となる。

総額1兆7000億―2兆円の買収資金のうち、買収相手企業の資産を担保にして
資金を借り入れるLBO(レバレッジド・バイアウト)により、半分強の1兆円程度を
まかなう。日本企業のLBOで過去最大。

LBO以外では、ボーダフォン日本法人が実施する5000億―6000億円規模の増資
や、借り入れなどで資金を調達する見込み。
ソフトバンク自身は増資しない。
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【以下、コメント】

本日のテーマ:今回の買収金額(1兆7000億―2兆円)は妥当な範囲か?


ボーダフォンの05/3期有報と05/9半期報告書をベースにざっくりと計算してみます。
ただし、門外漢による非常にラフな計算ですので、戯言として読み流してください
05/3期有報
http://www.vodafone.jp/japanese/company/ir/pdf/sr19.pdf
05/9半期報告書
http://www.vodafone.jp/japanese/company/ir/pdf/sr20.pdf

EBITDAは05/3期の連結営業利益1,580億円と減価償却費2,369臆円で概算3,949億円。
しかし、収益力はその後低下しておりまして、 05/9期半期の連結営業利益435億円
(前年同期比▲440億円)+減価償却費1,084億円=1,519臆円。この2倍、3,038億円
保守的に、後者の数字を使いましょう。

企業価値をEBITDAの5~6倍としますと、
企業価値全体は、3,038億円×5~6倍=1.5兆円~1.8兆円
(仮に05/3期の数値を使うと 2.0兆円~2.4兆円)

株主価値=企業価値-有利子負債としますと、
株主価値=(1.5兆円~1.8兆円)-3,065億円(H17/9末)≒1.2兆円~1.5兆円
ちなみに、連結株主資本は7,350億円です。

しかし、3/5日経記事によりますと、英ボーダフォンが優先株を3-4千億円
引き受ける、としています。この資金で有利子負債を肩代わりすることも可能であるため、強引ですが企業価値から控除する有利子負債をゼロとしますと、

株主価値は 05/9中間期実績からみれば       1.5兆円~1.8兆円
         05/3期実績からみれば           2.0兆円~2.4兆円
となります。

このため、今回ほぼ100%買収での総額1.7-2兆円という計算は、
限られた情報の中で計算する範囲においては、妥当な水準だと思われます。

でも足元の収益力低下が気になりますし、英国の親会社が成長性から見て
日本市場に魅力がなくなったと判断したことも、少し気がかりですが・・・。


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2 コメント

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marufuku@mbr.nifty.com (marufuku)
2006-03-05 23:51:03
こんばんは、marufukuです。

またしても、先生に一件ご質問です。



事業価値算出のベースとしてEBITDAを用いられているのは何故なんでしょうか?



EBITDAは、営業CFとほぼ同じ数値になると思うのですが、事業価値算定の基本的な数値はFCF(=営業CF+投資CF)ですよね?



投資CFが殆ど無視できるような業態なら、営業CFをそのままFCFとみなしても良いと思うのですが、携帯電話会社はそこそこの固定資産(基地局や基幹ネットワーク)を持っています。それら設備は当然償却しますし、償却した分はそれを更新するための投資も必要になると思うのです。ましてや技術革新の激しい分野ですから、特に事業拡大を狙わなくとも設備の入れ替えは恒常的に発生するのではないかと。



ひょっとすると投資CFが差し引かれていない分は、EBITDAに対する倍率である「5~6倍」の中に織り込まれているのでしょうか?(事業価値=FCF × 8~10倍、というのも聞いたことがありますし、、、、)
返信する
自己レスですが、、、 (marufuku)
2006-03-06 01:04:03
検索していたら、こんなページが出てきました。



http://otumami.info/valuation/archives/2005/08/evebitda.html



なるほど、減価償却の方法、税率などが違う会社の事業価値相場を見積もるときに便利な計算方法、というわけですね。



とりあえず納得しました。
返信する

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