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オリックスの「特別目的事業体を利用した取引」に思う

2006-06-29 | 会計・株式・財務
村上ファンド・福井総裁問題で一躍注目のオリックス。
総合月刊誌「テーミス」2006年7月号p.8でまたオリックス関係の記事がありました。
一部をご紹介しますが、「前歴」がありますので話半分で。

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・村上ファンドだけでなくオリックスに対して、SPC(特別目的会社)や
 投資事業組合を利用したファンド間の利益付け替えを疑う声もある。

・グループ傘下には一説にはSPCや投資事業組合などが数百社もあると見られる。

・4年前、宮内社長も出席した会社説明会で、
あるアナリストから次のような指摘があったと。

①当時のオリックスが積極化させていたノンリコースローン(非遡及型融資)に関する
SPCの活用について、不動産の譲渡価格が簿価になっている場合が目立つと。

②不動産評価損を一たん計上しておきながら、取得価格でもう一度SPCに譲渡後に
ノンリコースローンを供与する取引自体、問題あるビジネスモデルではないか?

③この取引では、原資産所有者が倒産した場合、破産管財人はSPCにおけるディール
を譲渡されたものと見なさず差し押さえられる点も問題、等


・本誌(テーミス)はオリックスに質問状を送付したが、
当社広報から次のような回答だったと。

Q1:ファンド間の利益付け替えが疑われているがどう思うか?
→A1:「事実無根である」

 Q2:SPCや投資事業組合の数は?
→A2:「お答えいたしかねます」

 Q3:有利子負債が多いのではないか?
(連結で4.57兆円と自己資本の約5倍)
    →A3:「そうは思いません」
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(コメント)

①SPCや投資事業組合の数ですが、本日明らかになった福井総裁の投資スキーム
とか見ていると、数百あっても不思議ではないでしょう。
数が多いから問題だとは思いません。


②この逆風の中では、「利益の付け替え」観測が出ても不思議はないでしょうが、
同誌は何か具体例を掴んでいるのでしょうか?

マスコミとはいえ、質問の「質」、低すぎないか?これではガキの使い。
また、①は、「ハイそうです」と答える訳がない。
仮に②③で回答が得られたとしても、何か言えるのだろうか。


③6月末ということで3月決算会社の有価証券報告書が続々とEDINETで開示されています。
オリックスの有報も開示されています。
因みに、当社のHPでは有報を開示していません。
(そういう会社は一般論として、見て欲しくない、見せたくないかも知れません)

ご関心ある方は、p.138から139までの注記
「特別目的事業体を利用した取引」をご覧下さい。

 まさにSPE(特別目的事業体)のデパートですね。

     1)顧客の資産の流動化のためのSPE
     2)顧客の不動産購入及び不動産開発のためのSPE
     3)不動産関連事業に関連して当社及び子会社が不動産を取得するためのSPE
     4)企業の再生支援事業のためのSPE
     5)貸付債権を購入するためのSPE

 中身をザーッと観ましたが、
 「VIE(変動持分事業体)の主たる受益者以外の重要な変動持分保有者」の注記
 が無いような気がしましたけど。

 また、6)組合ストラクチャー。ここがまさに注目点なのでしょうが、
 「組合ストラクチャーの一部であるSPEはVIEに該当するが、当社及び子会社が変動持分 を保有していないという結論を得た。よってこれらのSPEは連結されていない。」
 ということで、一切開示はありませんでした。

 まぁ、これだけでは分かりにくい。
 セルのアナリストらがプロの視点から掘り下げて分析してほしいものです。

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