この週末は経営分析の大御所による新著を読んでおりました。
著者の高田先生はダイヤモンドオンライン「大不況に克つサバイバル経営戦略」で、どこにもないファイナンス分析の手法を用いて、上場会社を例に取り苦境を克服するための経営戦略を解説されており、ご存知の方は多いでしょう。ただ、独自の分析用語を多用されていてちょっと難しいんですよね。
しかしこの本は、会計や経営分析に関する基礎知識を毒舌とユーモアたっぷりに紹介。これに加え、氏ならではの「為替感応度分析」「予算貸借対照表の作成方法」といった渋い分析手法も惜しげなく披露しており、アナリストなどの専門家、金融機関の与信審査担当者にも十分役立つ内容となっていると思います。
以下、粉飾決算・経理操作に関連した項目で、私が気に入った箇所・表現を自分のために書き留めておきます。
(具体的な分析手法等、詳細はぜひ現物でお確かめください)
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■粉飾決算はどこか恋愛に似ています。
本当の自分を偽り、他人を欺くものだからです。ロマンスといわれるものの多くは、「錯覚と欺瞞から成り立っている」と喝破したのは、19世紀に活躍したイギリスの作家、オスカーワイルドでした。
■「経理操作」に注目
粉飾決算を第三者が見破るのは至難の業です。万が一、上場企業の有価証券報告書から、粉飾決算の火種を見つけたとしても、それをるネットで呟くのは厳禁(風説の流布に問われかねないから)。
それに対して、経理操作については、財務諸表を注意深く観察することによって、比較的容易に見抜くことができます。粉飾決算には何らかの経理操作が伴いますから、経理操作の有無は経営分析を行うにあたって、留意すべき事項です。
経理操作がそのまま粉飾決算に化ける可能性が低いですが、粉飾決算の前段階として経理操作は必ず行われる、と思って差し支えありません。
■経営分析を行うにあたっての3つのキーワード
(1)収益性分析・キャッシュフロー分析ともに、「短期の眼」「長期の眼」でながめよう。
短期的には収益性と資金繰りとを同時に追求することは(増加運転資金発生等もあり)難しいが、長期的には収益性が上がれば資金繰りがうまくいく。これらが証明されるかどうか。
(2)経営分析の対象とする資料の信頼性に注意
企業から提出される財務諸表などは、全てコピーでしょう。これをそのまま信ずることはできません。筆者の経験から申し上げれば、公認会計士が行う会計監査は、コピー用紙に騙され続けた、苦い歴史の積み重ねです。
(3)その企業を実際に訪ねて、トイレを借りよう
前職の銀行員時代に『企業の心の変わりようを知るために、会社を訪問したら、ときどきその会社のトイレを借りるように。トイレがどれだけ清潔に維持されているかで、その企業の心がわかる。』と教えられたそうです。トイレが汚い会社の財務諸表は、十分注意して見なければなりません。いろんなシグナルが、トイレに込められています。大理石で固められた「個室」がある会社も要注意だと。
(抜粋終了)
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こんな具合で、ユーモアたっぷりに会計や監査の本質を伝えてくれます。
そうなんです、粉飾決算と経理操作は違うんですよね。
私がこのブログでちょくちょく指摘しているのは「経理操作の匂いがする」、「違和感がある」ということですので、そこはお間違いのないように。
3つのキーワードを見ますと、1つ目はオーソドックスでまさに経営分析の直球ド真ん中という印象がしますが、残り2つは実にユニークですよね。
「資料の信頼性」で思い出したのが、ドラマ「半沢直樹」第1話。
西大阪スチールが粉飾していたことが判った時の、半沢直樹と部下・中西とのやりとりを再現してみましょう。
半沢「この試算表は君がコピーしたのか?」
中西「いいえ、決算書などを要求したらこれが準備してありまして・・・・」
半沢「オリジナルは見たか?このコピーの原本を見たか?」
中西「いいえ、見てません・・・・」
半沢「(呟くように)・・・粉飾・・・・・・」
半沢直樹もコピーの犠牲者だったんですね。
残り2つのキーワードは「トイレの直樹さん」とでも組み合わせて覚えておきましょうか。試験には出ませんけどね。
この他、この本では「決算短信で使えるCVP分析」など実用ツールがふんだんに紹介されておりますので、今後の決算短信分析で随時活用してみたいと思います。
おあとがよろしいようで。
P.S.半沢直樹、また観たくなっちゃった・・・・。
[決定版] 新・ほんとうにわかる経営分析 | |
高田直芳 | |
ダイヤモンド社 |
著者の高田先生はダイヤモンドオンライン「大不況に克つサバイバル経営戦略」で、どこにもないファイナンス分析の手法を用いて、上場会社を例に取り苦境を克服するための経営戦略を解説されており、ご存知の方は多いでしょう。ただ、独自の分析用語を多用されていてちょっと難しいんですよね。
しかしこの本は、会計や経営分析に関する基礎知識を毒舌とユーモアたっぷりに紹介。これに加え、氏ならではの「為替感応度分析」「予算貸借対照表の作成方法」といった渋い分析手法も惜しげなく披露しており、アナリストなどの専門家、金融機関の与信審査担当者にも十分役立つ内容となっていると思います。
以下、粉飾決算・経理操作に関連した項目で、私が気に入った箇所・表現を自分のために書き留めておきます。
(具体的な分析手法等、詳細はぜひ現物でお確かめください)
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■粉飾決算はどこか恋愛に似ています。
本当の自分を偽り、他人を欺くものだからです。ロマンスといわれるものの多くは、「錯覚と欺瞞から成り立っている」と喝破したのは、19世紀に活躍したイギリスの作家、オスカーワイルドでした。
■「経理操作」に注目
粉飾決算を第三者が見破るのは至難の業です。万が一、上場企業の有価証券報告書から、粉飾決算の火種を見つけたとしても、それをるネットで呟くのは厳禁(風説の流布に問われかねないから)。
それに対して、経理操作については、財務諸表を注意深く観察することによって、比較的容易に見抜くことができます。粉飾決算には何らかの経理操作が伴いますから、経理操作の有無は経営分析を行うにあたって、留意すべき事項です。
経理操作がそのまま粉飾決算に化ける可能性が低いですが、粉飾決算の前段階として経理操作は必ず行われる、と思って差し支えありません。
■経営分析を行うにあたっての3つのキーワード
(1)収益性分析・キャッシュフロー分析ともに、「短期の眼」「長期の眼」でながめよう。
短期的には収益性と資金繰りとを同時に追求することは(増加運転資金発生等もあり)難しいが、長期的には収益性が上がれば資金繰りがうまくいく。これらが証明されるかどうか。
(2)経営分析の対象とする資料の信頼性に注意
企業から提出される財務諸表などは、全てコピーでしょう。これをそのまま信ずることはできません。筆者の経験から申し上げれば、公認会計士が行う会計監査は、コピー用紙に騙され続けた、苦い歴史の積み重ねです。
(3)その企業を実際に訪ねて、トイレを借りよう
前職の銀行員時代に『企業の心の変わりようを知るために、会社を訪問したら、ときどきその会社のトイレを借りるように。トイレがどれだけ清潔に維持されているかで、その企業の心がわかる。』と教えられたそうです。トイレが汚い会社の財務諸表は、十分注意して見なければなりません。いろんなシグナルが、トイレに込められています。大理石で固められた「個室」がある会社も要注意だと。
(抜粋終了)
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こんな具合で、ユーモアたっぷりに会計や監査の本質を伝えてくれます。
そうなんです、粉飾決算と経理操作は違うんですよね。
私がこのブログでちょくちょく指摘しているのは「経理操作の匂いがする」、「違和感がある」ということですので、そこはお間違いのないように。
3つのキーワードを見ますと、1つ目はオーソドックスでまさに経営分析の直球ド真ん中という印象がしますが、残り2つは実にユニークですよね。
「資料の信頼性」で思い出したのが、ドラマ「半沢直樹」第1話。
西大阪スチールが粉飾していたことが判った時の、半沢直樹と部下・中西とのやりとりを再現してみましょう。
半沢「この試算表は君がコピーしたのか?」
中西「いいえ、決算書などを要求したらこれが準備してありまして・・・・」
半沢「オリジナルは見たか?このコピーの原本を見たか?」
中西「いいえ、見てません・・・・」
半沢「(呟くように)・・・粉飾・・・・・・」
半沢直樹もコピーの犠牲者だったんですね。
残り2つのキーワードは「トイレの直樹さん」とでも組み合わせて覚えておきましょうか。試験には出ませんけどね。
この他、この本では「決算短信で使えるCVP分析」など実用ツールがふんだんに紹介されておりますので、今後の決算短信分析で随時活用してみたいと思います。
おあとがよろしいようで。
P.S.半沢直樹、また観たくなっちゃった・・・・。
半沢直樹 -ディレクターズカット版- DVD-BOX | |
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