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「過大評価されるROE」に思う

2016-01-28 | 会計・株式・財務
コーポレートガバナンス・コード日本版スチュワードシップ・コード伊藤レポートは、「ガバナンス革命の3本の矢」と評されております。
伊藤レポートが登場したことによって、機関投資家が企業に対してROE(株主資本利益率)を高めるような圧力が高まっており、国内事業会社が付和雷同的に同調するような動きも見えます。へそまがりな私は、「本当にそうなのか?」と懐疑的なスタンスを取り続けているほうですが、本日見つけたレポートは「我が意を得たり」という内容でしたのでご紹介します。

藤田勉氏「日本ではROEが過大評価されている」


ROEが過大評価されている理由として、藤田氏は、

(1)コーポレートガバナンス・コードが効果を発揮している断言できる主要先進国は見当たらない、
(2)ROEを経営指標として掲げる世界の有力企業はない
(3)2つの会計上のマジック →高ROE企業には低成長企業が多い
               →高成長企業のROEは大きく低下する

などを取り上げ、実例を踏まえて解説しております。
詳細はレポート本文で確認頂きたいのですが、


例えば、米国の主力企業がどんな指標を重視しているのか。レポートから拾ってみると・・・
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【米国主要企業の経営指標・財務項目・銘柄指標】

エクソンモービル → ROCE

ジョンソン・エンド・ジョンソン → オペレーショナル売上成長、FCF、調整後オペレーショナルEPS成長

ウォルマート → 売上前年比、営業利益と営業費用の前年比(対純売上)、ROI、FCF

GE → 産業分野事業の有機的売上成長、利益率、FCF、産業分野事業のROTC

P&G → 有機的売上高成長、コアEPS成長、調整FCF生産性

AT&T → 売上高成長率、調整EPS成長、FCF、FCF配当性向

メルク →非GAAP純利益、非GAAP EPS(合併・分割・リストラ費用・利益等の控除)

Visa →純売上成長率、顧客インセンティブ(対総収入)、売上高利益率、調整後希薄化後EPS、FCF

ウォルト・ディズニー →調整後EPS、FCF、セグメント別営業利益合算

IBM → オペレ―ティングEPS、FCF
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FCF(フリーキャッシュフロー)が結構多いですね。将来キャッシュフローの総和が企業価値となり株式価値に結びつくのですから、当然といえば当然ですけど。
釈迦に説法ですが、マッキンゼーは、キャッシュフローこそが企業価値の源泉であるとして、以下のような企業価値創造に関わる原則を示しております。

 (1)価値創造の基本原則
    価値創造は、投下資本利益率(ROIC)と企業の成長率が、資本コストをどれだけ上回るかによって決まる。

 (2)企業価値不変の法則
    企業の生むキャッシュ・フローが変わらなければ、企業価値は変わらない。

米国の有力企業の多くがフリー・キャッシュ・フロー(FCF)を重視しているのもこうした考えが強く反映されているのでしょう。

まぁ、日本企業がどういう指標をKPIとしているのか(するのか)、その根拠もよくよく確認する必要がありますよね。
「ROEが重視されているから」という回答だけは勘弁して欲しいですよね。
そういう右へ倣え的な発想が「投資してはいけない企業」のシグナルになりかねいですから。


またいきます。

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