◆「財務アナリストの雑感」 2024◆

会計士兼アナリストによる屈指の歴史だけがウリの会計・財務・株式・金融ブログ。異常な経済金融環境を一刀両断!できるかな?

セーラー万年筆と「聞かん坊」

2016-01-27 | 会計・株式・財務
日経コラム「記者の目」に「セーラー、社長解職騒動の後に待つ難題」という興味深い記事がありました。
ざっとご紹介した上で、実際に業績を見てみましょう。

----------------------------------------------------------
<事実関係>

・2015年12月、創業100年を超える老舗文房具メーカー、セーラー万年筆で突然起きた内紛は、関係者と株式市場を驚かせた。旧大蔵省出身で直近6年間、社長の座にあった中島義雄氏を解職し、比佐泰取締役を社長とする人事を発表。中島氏は東京地裁に解職無効の仮処分を申し立て、泥沼の訴訟合戦になるかと案じられた。ところが24日になって始まりと同じくらい突然に両者は和解を発表した。中島氏は比佐氏に東京地裁に申し立てていた社長解職の決議無効の仮処分を、取り下げたいと申し出た。中島氏は社長を外れるが、取締役として残る道を受け入れた。


・中島氏は1990年代前半に旧大蔵省(現財務省)で主計局次長につくなど将来の事務次官候補と目されていた有力者だった。金融機関による接待問題などがきっかけで95年に引責辞任し、京セラや船井電機の役員として活躍していたところ、09年、当時の碓井初秋前社長がセーラーに招き入れた。碓井社長の死去に伴い、同年12月に社長に就任した。

それから6年。最大の課題だった早期の黒字転換はいまだ果たせておらず、決算書には継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に関する注記も付いている。社長解職に及んだ直接の理由についてセーラーは「中島氏は業績の赤字が続く中、講演などの私的活動に時間を割き本業に身を入れてこなかった」と説明した。

-----------------------------------------------------------


「社長、そろそろ本業に力を入れて下さいよ~」
「うるさい!、講演活動も立派な会社のPRだ!」

とまぁ、こんな具合にセーラーの幹部は「聞かん坊」社長に手を焼いていたのではないかと勝手に推測いたします。

さて、業績がどんなに酷いのか、調べてみました。
確かにすごい。


過去10期で9期赤字。これでは万年筆ではなく、万年赤字です。
最後の最終黒字は2006年12月期ですから、そろそろ10年。 
琴奨菊か、はたまたセーラーか。

直近10期合計(単位は百万円) 

売上高  74,065
経常赤字 ▲2,786
特別損失 ▲2,459(内訳、資産除売却損▲704、棚卸資産評価損▲502、減損損失▲983)
純損失  ▲5,386



ところがキャッシュフロー計算書の10期合計を見てみると、これが意外な展開ですわ。

営業活動キャッシュフロー  ▲169(意外と悪くない。非現金支出型特損の影響が大。運転資金負担の減少も。)
投資活動キャッシュフロー 1,089(投資有価証券の売却が大。設備投資はチョボチョボ。)
財務活動キャッシュフロー   213(2014年の増資ライツオファリング1,539が効いてる)

低空飛行の経営をしているのですが(あっ、それを言うなら「パイロット」万年筆か)
キャッシュのやりくりは結構うまいですよね。
さすが財務省出身(関係ないか?)


せっかく、多額の増資資金も得たんだし、ブランド再構築で勝負かけても良いような気がしますけどね。
セーラーとゆかりのある(?)、セーラームーンも20周年プロジェクトが動いているし、「セーラー服と機関銃」もリメイクされるようですし。ダメもとでタイアップしてみたら?

そして、どうしても打開策が見いだせないようでしたら、最後の手段です。あの小僧寿しのように、一般から再建策を公募するしかないっしょ。


またいきます。



 
 







コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「特別損失」の心理学 | トップ | 「過大評価されるROE」に思う »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

会計・株式・財務」カテゴリの最新記事