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大ショック恐怖会計基準

2009-01-27 | 会計・株式・財務

お疲れさまです。


最近あまり会計基準の動向などについて触れておりませんでしたので、
いくつか情報を整理しておきます。


まずは、国際会計基準IFRSについて。
最近、解説本がちらほら出ているようですが、
一方で日本基準もご案内のとおり国際基準へのコンバージェンスの動きが加速
(さらには最近ではアドプションの動きも)。

「結局のところ、現在、日本基準とどこがどう違うのか?」
というところがイマイチよく分からない。


そんな疑問に対して、新日本有限責任監査法人が一肌脱いでくれました。



日本基準と国際財務報告基準(IFRS)の比較【PDF】を作成・開示してくれたのです。



現在の実務において最も一般的に見られると考えられる相違点にできるかぎり
焦点をしぼりって記述されているとのことです。
この表を手掛かりに深堀りしていくとよろしいのではないでしょうか。



て、この資料のp.36「株式報酬以外の従業員給付」をご覧下さい。
おなじみの名称でいうと「退職給付会計」にあたる部分です。

その表の2段目「割引率」をご覧下さい。
抜粋しますと・・・・

(現行 同注解6,実務指針11)
 割引率は、一定期間(おおむね5 年以内の債券の利回りの変動を考慮して決定。
   ↓
(改訂基準2)
 上記取扱いは認められない。

そうなんです、基準が変更されました。
退職給付債務の計算に用いる割引率の設定方法に関して、
期末時点の債券の利回りを基礎として決定することを明記するため
「期末における」という文言が挿入され、
一定期間の債券の利回りの変動を考慮して決定することができることに
関する記述が削除(実務指針第11項、18項、59項、Q&A Q1、Q14)。

平成21年4月1日以後開始する事業年度の年度末に係る財務諸表から
適用することが予定されております。


つまり、実務上これまで一般的に使われていた過去5年間の平均値から、、
今回の変更によって、期末における安全性の高い長期国債などの金利に変更。

長期債の利回りの変化がダイレクトに割引率、ひいては退職給付債務、
退職給付費用に反映される。
しかも、世界的な金融危機を受けて金融緩和の流れ。
いきおい割引率もさらに低下するおそれも・・・・・。


で、割引率が低下しますと、私が聞いた話で記憶が正しければ、
低下幅をたとえば 0.5%低下としますと、これに平均残存勤務年数(日本企業の
平均約13年)を乗じた分だけ、退職給付債務が増えるとのこと。概算ですが。

この場合ですと、 0.5%×13=6.5%だけ退職給付債務が増える計算。
増えた分は「数理計算上の差異」として平均残存勤務年数以内の一定の年数で按分
されて費用処理(遅延認識)されることになり、
結果として毎期の業績に影響を与えることになります。


こうして割引率は、確かに国際基準に近付きます。
しかし、タイミングが悪い・・・・・。
退職給付会計が導入されたバブル崩壊末期H12年のことを思い出します。
一連の会計ビッグバンにおける大きな目玉でした。
トドメを刺された日本企業の多かったこと。



しかも、これだけでは終わりません。


1月22日、企業会計基準委員会 は「退職給付会計の見直しに関する論点
の整理」
を公表しました。
平成19年8月に公表した「東京合意」(会計基準のコンバージェンスの加速化に
向けた取組みへの合意)を踏まえ、平成23年を目途として、
退職給付に関する会計基準等を見直すこととしているのです。



この中の一つの目玉は、数理計算上の差異の会計処理。

ざっくり言うと、日本で認められている遅延認識を廃止して、
発生した差異について貸借対照表で即時認識するということ。

誤解を恐れずもっとザックリ言いますと、
たとえば、企業年金の運用が計画を大幅に下回ってしまうと、
その分、当該企業の財務内容がストレートに悪化してしまう、ってことです。

よりによって、金融危機で年金資産が大幅に目減りしている状況下での論点整理。

その他の有価証券などと共に、年金運用資産の時価変動がますます
株主資本、ひいては株価をボラタイルにさせていくことになります。


資産デフレの底が見えない中にあっては、
スパイラル的な株価下落を誘発する可能性は大きい。
「大ショック恐怖会計」と呼んでいいかも知れませんね。


本当に必要な改正なのか、疑問が残ります。


またいきます。

(以上の議論の中で、正確性を欠く表現があったかも知れません。
 予めお詫びしておきますね。


なかのひと

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