週刊エコノミスト05.12.27号にモルガン・スタンレー証券、
大橋英敏証券金融戦略部長の論稿がありました。
実は大橋氏とはかつて同じ職場で仕事をしたことがありまして
(先方は私のことなど忘れているのでしょうが)、
そういうこともあって今回勝手にご紹介。
株式市場では企業の利益成長力などに注目しているのと異なり、
クレジット市場(主に社債市場)ではムーティーズの格付けのように、
企業の債務返済能力に注目しています。
株式投資家の方には違和感のある話かもしれませんが、
クレジット市場での評価いかんでは、極端な話、
倒産に追い込まれることもある訳でして、
見方によっては株式投資のヒントもあるかも知れません。
(以下、ポイント要約)
-----------------------------------
・景気拡大やデフレ脱却イコール「クレジット市場」
(→主に社債市場と見てください)の好転と捕らえてはいけない。
・本格的に景気が回復し、堅調な株式市況になると
①企業の財務政策の積極化
具体的には、設備投資の活発化、M&Aの増加など
②システムサポート(政府による公的支援制度)の低下、
③金利の上昇
などの可能性があり、
いずれも企業の信用リスクを高める要因になるのである。
・①について:銀行からの負債調達の活発化がポイント、
→負債増加(財務レバレッジ)の上昇はネガティブに評価される。
②について:日本政策投資銀行の民営化と貸出残高圧縮が叫ばれる中、これまで
その恩恵に与ったセクターや企業への影響が懸念される。
③について:金利が上昇による企業の借入れコスト(支払利息など)の増加、
投資家のクレジット投資意欲の減退(金利↑=債券価格↓)
②+③について:政府によるさまざまなサポートの終焉
→非効率企業のあぶり出しを誘発
・信用リスクの面からみる「要注目2業種」
総合電機業界
過剰供給状態にあり、デジタル家電などの製品価格下落が著しい。
総花的な事業を展開し、単独での研究開発・設備投資には限界があり、
業界再編も視野。
下位メーカーは僅かなミスで莫大な設備投資が水泡に帰すリスクを
絶えず秘めている。
航空業界
実質的に日本航空と全日空の寡占状態。
政府はユニバーサルサービス(赤字地方路線をイメージして下さればよい)
の維持を実質的に義務化、その見返りとしてシステムサポートを提供
(政策投資銀行による長期の低利融資)
・クレジットから見る「要注目」6企業
▼信用力の方向性が下向き
・三洋電機=問題の根幹は事業再構築と「何で儲けていくか」
・エルピーダメモリ=業績が大きく触れれば負債に頼る
ビジネスモデルに大きな疑問符が付く
・日本航空=燃料価格の高止まり、運航トラブルによる客数低下
などで自己資本は危険水域。
・住友不動産=不動産市況に依存した経営体質。
金利上昇に伴うj-REITなどのスローダウンなどを
契機とした不動産市況の転機がリスク
▲信用力の方向性が上向き
・住友金属工業=業界再編を通じた価格支配力と供給量
コントロールが最も機能した業界。
・イー・アクセス=06年11月のモバイル・ナンバー・
ポータビリティが導入されると
業務上の問題が解消。など
---------------------------------------------------------------
(コメント)
・要は、景気がいいからとか株高だからといって、浮かれなさんなよ、と。
M&Aがブームになりそうですし、株式投資家サイドもそれを後押しする
機運が高まっています。
そうした要請の一方で、いかに財務の規律を保っていくか、
すなわち、自己資本と負債のバランスを崩さずに資金を調達していくか。
企業の財務部門の腕の見せ所かも知れません。
・日本航空については、このブログでも以前ご紹介したとおり
「ハインリッヒの法則」が当たらないことを切に願っております。
大橋英敏証券金融戦略部長の論稿がありました。
実は大橋氏とはかつて同じ職場で仕事をしたことがありまして
(先方は私のことなど忘れているのでしょうが)、
そういうこともあって今回勝手にご紹介。
株式市場では企業の利益成長力などに注目しているのと異なり、
クレジット市場(主に社債市場)ではムーティーズの格付けのように、
企業の債務返済能力に注目しています。
株式投資家の方には違和感のある話かもしれませんが、
クレジット市場での評価いかんでは、極端な話、
倒産に追い込まれることもある訳でして、
見方によっては株式投資のヒントもあるかも知れません。
(以下、ポイント要約)
-----------------------------------
・景気拡大やデフレ脱却イコール「クレジット市場」
(→主に社債市場と見てください)の好転と捕らえてはいけない。
・本格的に景気が回復し、堅調な株式市況になると
①企業の財務政策の積極化
具体的には、設備投資の活発化、M&Aの増加など
②システムサポート(政府による公的支援制度)の低下、
③金利の上昇
などの可能性があり、
いずれも企業の信用リスクを高める要因になるのである。
・①について:銀行からの負債調達の活発化がポイント、
→負債増加(財務レバレッジ)の上昇はネガティブに評価される。
②について:日本政策投資銀行の民営化と貸出残高圧縮が叫ばれる中、これまで
その恩恵に与ったセクターや企業への影響が懸念される。
③について:金利が上昇による企業の借入れコスト(支払利息など)の増加、
投資家のクレジット投資意欲の減退(金利↑=債券価格↓)
②+③について:政府によるさまざまなサポートの終焉
→非効率企業のあぶり出しを誘発
・信用リスクの面からみる「要注目2業種」
総合電機業界
過剰供給状態にあり、デジタル家電などの製品価格下落が著しい。
総花的な事業を展開し、単独での研究開発・設備投資には限界があり、
業界再編も視野。
下位メーカーは僅かなミスで莫大な設備投資が水泡に帰すリスクを
絶えず秘めている。
航空業界
実質的に日本航空と全日空の寡占状態。
政府はユニバーサルサービス(赤字地方路線をイメージして下さればよい)
の維持を実質的に義務化、その見返りとしてシステムサポートを提供
(政策投資銀行による長期の低利融資)
・クレジットから見る「要注目」6企業
▼信用力の方向性が下向き
・三洋電機=問題の根幹は事業再構築と「何で儲けていくか」
・エルピーダメモリ=業績が大きく触れれば負債に頼る
ビジネスモデルに大きな疑問符が付く
・日本航空=燃料価格の高止まり、運航トラブルによる客数低下
などで自己資本は危険水域。
・住友不動産=不動産市況に依存した経営体質。
金利上昇に伴うj-REITなどのスローダウンなどを
契機とした不動産市況の転機がリスク
▲信用力の方向性が上向き
・住友金属工業=業界再編を通じた価格支配力と供給量
コントロールが最も機能した業界。
・イー・アクセス=06年11月のモバイル・ナンバー・
ポータビリティが導入されると
業務上の問題が解消。など
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(コメント)
・要は、景気がいいからとか株高だからといって、浮かれなさんなよ、と。
M&Aがブームになりそうですし、株式投資家サイドもそれを後押しする
機運が高まっています。
そうした要請の一方で、いかに財務の規律を保っていくか、
すなわち、自己資本と負債のバランスを崩さずに資金を調達していくか。
企業の財務部門の腕の見せ所かも知れません。
・日本航空については、このブログでも以前ご紹介したとおり
「ハインリッヒの法則」が当たらないことを切に願っております。