◆「財務アナリストの雑感」 2024◆

会計士兼アナリストによる屈指の歴史だけがウリの会計・財務・株式・金融ブログ。異常な経済金融環境を一刀両断!できるかな?

企業合併審査基準の緩和に思う -何故か米SECでの開示リスクも高まる?

2006-05-22 | 事業再生・M&A

 いつも冴えない記事ばかりで恐縮です。
そして今回は、何だかさっぱりわからないタイトルで申し訳ありません。

「風邪が吹けば桶屋がもうかる」とまでは行きませんが、異なるネタを繋げてみると
意外と面白いことが見えてきたので、ご参考までにご紹介しておきます。
まずは読売新聞ニュース、続いてコメント。

--------------------------------------------------------------------
◆企業合併審査基準 国際競争視野に「緩和」経産省 公取へ見直し求める

 経済産業省は19日、公正取引委員会に対し、企業合併の審査基準を緩和する
よう求める省内研究会の報告書を公表した。国際競争力の観点から、合併基準を
見直すことや、企業が迅速な対応がとれるよう、審査の結果を見通しやすくすること
などを盛り込んでいる。  

 経済産業政策局長の私的研究会「競争政策研究会」がまとめた報告書では、
国際競争が激しい現状では、合併で国内シェアが高まっても、容易に国内価格を
引き上げることが出来ないと指摘し、合併による影響を国内だけで判断せず、
アジア市場などに拡大することも検討すべきとした。
具体的には、一定の条件を満たせば原則合併が認められる合併後の国内シェア
を、現行の「35%以下」から引き上げることを求めた。

 また、合併を希望する企業が公取委から独占禁止法上の問題点を指摘された
場合、どのような対応策が効果的なのかが不透明だとして、公取委に対し、
具体例を可能な限り提示し、選択肢を拡大するように求めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(コメント)

① 経済産業政策局長の私的研究会「競争政策研究会」報告書はこちらからどうぞ。
(発表資料一式) http://www.meti.go.jp/press/20060519004/20060519004.html
(概要) http://www.meti.go.jp/press/20060519004/kyousouken-gaiyou-set..pdf

 今回の報告書は、企業結合審査を担当する公正取引委員会に対する要望です
 ので、実現に向けてはまだまだ紆余曲折が予想されます。
 ただ、合併審査がネックとなって国内の業界再編が進まぬまま、来年5月の
 三角合併解禁などによる外資の買収攻勢を迎えてはたまらん!!という
 産業界の思いは理解できます。
 (事実、審査がネックとなって見送られた企業合併も多いようです。)

  M&A新時代に相応しい競争政策の見直し、既に「まった」無しかも知れません。
  (すいません、月並みなコメントで)


② では、企業合併審査基準が緩和されて、合併後の国内シェア50%超となるよう
  な企業再編も一気に加速すると仮定しましょう。
  その次に何が起きるのか・・・・。   

  あくまで可能性の問題ですが、
  「米国市場に上場していないのに、米SECの開示規制に引っかかるケースが
   増えるかも知れない」ということです。(いいですねー、こういうミステリー調)

  参考とさせて頂いたのはIRジャパンのレポートです。
  「SECの規則改定案がもたらす日本企業への法的開示リスク懸念」
   http://www.irjapan.net/pdf/irj_report_04.pdf
  (私が毎日チェックしている「経済レポート.com」に5月17日に登録されてました)
  私が注目したのは、以下の項目です。

  ・事業統合の際、存続会社の株式を対価として受け取る企業で米国居住者
  株主が10%を超えていると、米国SECに対し、フォームF-4という書類を
  提出しなければならない

  フォームF-4とは統合後の財務諸表(米国会計基準で作成!)から事業統合の
  背景等にまで詳細にわたり記述した資料です。

  ・ この開示義務は、事業統合が米国市場とは関係のない日本企業同士の
  ものであっても適用される

  このため、一定の外国人持株比率のある日本企業は
  全て、事業統合を行う際、米国での法的開示リスクを負っている、と。

  ・ 何故、こんな規制を受けるのか?
  米国では、株式交換等による企業の統合・合併の際に行われる株式の交付を
  「証券の募集」も該当するとみなすためです。

・・・・ですので、この規制があることで、日本企業同士の株式交換方式による
統合・合併ってのは今後進みにくくなるってことなのでしょうか?

上場企業さんにおかれましては、「実質株主構成の把握」、ますます重要になってきたと思いますね。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「小売のトヨタ・しまむら」... | トップ | ライブドア監査人の告白に思う »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

事業再生・M&A」カテゴリの最新記事