いつもご覧下さり誠にありがとうございます。
最近本屋に行きますと、中国関連では次のようなリスク喚起型の書籍が目につくようになりました。撤退指南本も数年前から出ておりますし、日本証券アナリスト協会でも中国撤退セミナーを大々的にやるようです。興味深いのは、その背景にはいわゆる「中国経済リスク」とはまた別の要因が働いていることです。
外務省統計によりますと日本企業は中国に33,390拠点を擁しています(2015年10月時点)。中国では土地は国有であり、日本企業は有期限の「土地所有権」を購入することしかできない。また、各現地法人には「営業許可年限」が課されており、最大50年間しか経営できない(一部特例を除く)。となると設立20~30年目を迎える、ゴーイングコンサーンでない中国現地法人については、EXITも有力な経営の選択肢になるかもしれない、というワケです。
そんな状況の中、週刊エコノミスト2月28日号に「会計監査のチャイナリスク 子会社資料に国家機密の壁」という面白い記事を見つけました。詳細は現物でご確認頂きたいのですが、以下、ざっくりとポイントを記載します。
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中国で、世界の監査基準を形骸化させかねない法令の整備が着々と進んでいる。
具体的には、中国現地子会社の監査資料を「国家機密」に指定し親会社の監査法人のアクセスを制限するという内容。
「中国の壁」の構築で投資家は連結財務諸表から異変の予兆を掴むことができなくなる恐れもある。
<中国の会計監査を巡る法令整備>
①2009年10月「国外における証券発行と上場に関連する機密と書類管理業務に関する規定」
国外上場している中国企業の監査資料について、上場先の国の監督機関から提出を求められた場合、それが中国の国家機密に該当するかどうか、事前に中国政府の判断を仰がねばならなくなった。
②2011年3月「国外会計士事務所の中国国内における臨時監査業務実施暫定規定」
外国の会計事務所が中国の国内企業を監査する場合、単独で監査するには臨時監査の許可が必要となった。許可には有効期限があり、香港・マカオの会計事務所は5年、台湾の事務所は1年、それ以外の国はわずか半年。
③2015年5月「会計士事務所が従事する中国内地企業 国外上場監査業務暫定規定」
海外で上場する中国企業の監査に、外国の会計事務所が単独で従事することを禁止。中国国内会計事務所との合同監査と、中国国内での監査調書の保管が義務付けられた。
④2016年11月「会計士事務所監査書類管理弁法」
中国国内の会計事務所が中国国内で作成した監査書類を、中国政府の許可なしに圏外に持ち出すことを禁止。
何より影響が大きいのは上記④。中国政府の裁量の余地が大きく、政府の許可を要するのが監査調書だけであれば、従来から大きな変更はないということになるが、付帯する資料も、あるいはメモ書き程度のものもダメとなれば事情は一変する。全ては中国政府の腹一つ。
監査資料の範囲の解釈次第では、日本側の会計士は中国の会計士が出した結論の裏付けとなるエビデンスをもらえないという事態もありうる。④については、新日本・トーマツは監査資料の対外提供を禁止する同法13条の規程について「ごく一般的な、どこの国の会計士も負っている守秘義務を明記しただけ」と解釈する一方、PWCあらたは厳正に解釈するなど足並みが揃っていないと。
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ムチャクチャですね。
私は昨年1月に江守ホールディングスの中国子会社での会計監査のデタラメぶりを記した「中国子会社、やめチャイナ」という記事を書きました。江守は特殊な事例で、キチっと経営されている会社が大半だと信じたい。しかし・・・・・日本から厳しいチェックが入りにくくなって、現地のデタラメぶりに拍車がかかることが大いに懸念しております。
ですので、今度の3月期決算では、重要な中国子会社を抱えている企業に対しては、必ずこう質問したい。
「監査法人による中国子会社の監査。ちゃんと出来ていますか?」と。
またいきます。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
最近本屋に行きますと、中国関連では次のようなリスク喚起型の書籍が目につくようになりました。撤退指南本も数年前から出ておりますし、日本証券アナリスト協会でも中国撤退セミナーを大々的にやるようです。興味深いのは、その背景にはいわゆる「中国経済リスク」とはまた別の要因が働いていることです。
外務省統計によりますと日本企業は中国に33,390拠点を擁しています(2015年10月時点)。中国では土地は国有であり、日本企業は有期限の「土地所有権」を購入することしかできない。また、各現地法人には「営業許可年限」が課されており、最大50年間しか経営できない(一部特例を除く)。となると設立20~30年目を迎える、ゴーイングコンサーンでない中国現地法人については、EXITも有力な経営の選択肢になるかもしれない、というワケです。
親会社が気づいていない中国子会社のリスクとそのマネジメント~リスク事例から学ぶ事前予防・事後対策~ | |
殷宏亮,郭望,顧麗萍,周加萍,徐大鵬,叢厳,李鵬 | |
第一法規株式会社 |
そんな状況の中、週刊エコノミスト2月28日号に「会計監査のチャイナリスク 子会社資料に国家機密の壁」という面白い記事を見つけました。詳細は現物でご確認頂きたいのですが、以下、ざっくりとポイントを記載します。
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中国で、世界の監査基準を形骸化させかねない法令の整備が着々と進んでいる。
具体的には、中国現地子会社の監査資料を「国家機密」に指定し親会社の監査法人のアクセスを制限するという内容。
「中国の壁」の構築で投資家は連結財務諸表から異変の予兆を掴むことができなくなる恐れもある。
<中国の会計監査を巡る法令整備>
①2009年10月「国外における証券発行と上場に関連する機密と書類管理業務に関する規定」
国外上場している中国企業の監査資料について、上場先の国の監督機関から提出を求められた場合、それが中国の国家機密に該当するかどうか、事前に中国政府の判断を仰がねばならなくなった。
②2011年3月「国外会計士事務所の中国国内における臨時監査業務実施暫定規定」
外国の会計事務所が中国の国内企業を監査する場合、単独で監査するには臨時監査の許可が必要となった。許可には有効期限があり、香港・マカオの会計事務所は5年、台湾の事務所は1年、それ以外の国はわずか半年。
③2015年5月「会計士事務所が従事する中国内地企業 国外上場監査業務暫定規定」
海外で上場する中国企業の監査に、外国の会計事務所が単独で従事することを禁止。中国国内会計事務所との合同監査と、中国国内での監査調書の保管が義務付けられた。
④2016年11月「会計士事務所監査書類管理弁法」
中国国内の会計事務所が中国国内で作成した監査書類を、中国政府の許可なしに圏外に持ち出すことを禁止。
何より影響が大きいのは上記④。中国政府の裁量の余地が大きく、政府の許可を要するのが監査調書だけであれば、従来から大きな変更はないということになるが、付帯する資料も、あるいはメモ書き程度のものもダメとなれば事情は一変する。全ては中国政府の腹一つ。
監査資料の範囲の解釈次第では、日本側の会計士は中国の会計士が出した結論の裏付けとなるエビデンスをもらえないという事態もありうる。④については、新日本・トーマツは監査資料の対外提供を禁止する同法13条の規程について「ごく一般的な、どこの国の会計士も負っている守秘義務を明記しただけ」と解釈する一方、PWCあらたは厳正に解釈するなど足並みが揃っていないと。
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ムチャクチャですね。
私は昨年1月に江守ホールディングスの中国子会社での会計監査のデタラメぶりを記した「中国子会社、やめチャイナ」という記事を書きました。江守は特殊な事例で、キチっと経営されている会社が大半だと信じたい。しかし・・・・・日本から厳しいチェックが入りにくくなって、現地のデタラメぶりに拍車がかかることが大いに懸念しております。
ですので、今度の3月期決算では、重要な中国子会社を抱えている企業に対しては、必ずこう質問したい。
「監査法人による中国子会社の監査。ちゃんと出来ていますか?」と。
またいきます。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。