夜空から、糸が一本、するすると、おりてきました。
見上げると、金色に光るまん丸のお月さまが、ありました。
今夜は満月です。
その糸は、お月さまと同じ金色をしていました。
わたしは糸のはしっこを手にしました。
糸の先は、夜空にすうっと伸びていて、
お月さまに、つながっているようでした。
金色の糸は、とてもやわらかく、やさしい手ざわりです。
そうだ。
わたしは、糸の先を持ったまま、家まで帰ることにしました。
とちゅう、糸は切れることはなく、ぶじに、持ち帰ることができました。
糸の反対がわの先は、お月さまにつながったままです。
その糸で、マフラーを編むことにしました。
まいばん、少しずつ、編みました。
細い糸なので編み進めるのに時間はかかりましたが、
少しずつ、少しずつ、長くなりました。
マフラーが、長くなるにつれ、
お月さまは、少しずつ、細くなっていきます。
月の糸で編んだマフラーは、
気持ちがやわらぐような手ざわり、はだざわりでした。
なので、
編んでいるとちゅう、かなしいことがあったり、つらいことを思い出すたびに、
それを首にまいたり、顔にあてたり、涙をふいたりしていました。
やさしいまきごこち、ふきごこちは、
少しだけ、かなしみを、わすれさせてくれるようでした。
新月の夜になりました。
今夜もつづきを編もうとしましたが、
あれ?
どこをさがしても、マフラーがありません。
マフラーをおいていた、テーブルの上には、
小さな水たまりができていました。
水がこんなところに?
何もこぼした覚えはないのに。
なめてみたら、食塩水のようにしょっぱかったので、
ああこれは涙かもしれない、と、思いました。
でも今までに流した涙のわりには、少なかったので
きっとほとんどは、(マフラーの)糸が吸い取ってくれたのでしょう。
もしかして……
糸は、月へと、また帰っていったのかもしれない。
新月から、お月さまは、また、丸くなっていきます。
お月さまはお月さまを編むために糸が必要なのかもしれません。
お月さまは、その糸で自分を編んでいるのかもしれませんから。
月の糸はまたわたしのもとへ降りてきてくれるでしょうか。
次の満月の夜、金色の糸をさがしてみることにします。
(画像提供は「写真AC」サンサンさんより。ありがとうございます。)
見上げると、金色に光るまん丸のお月さまが、ありました。
今夜は満月です。
その糸は、お月さまと同じ金色をしていました。
わたしは糸のはしっこを手にしました。
糸の先は、夜空にすうっと伸びていて、
お月さまに、つながっているようでした。
金色の糸は、とてもやわらかく、やさしい手ざわりです。
そうだ。
わたしは、糸の先を持ったまま、家まで帰ることにしました。
とちゅう、糸は切れることはなく、ぶじに、持ち帰ることができました。
糸の反対がわの先は、お月さまにつながったままです。
その糸で、マフラーを編むことにしました。
まいばん、少しずつ、編みました。
細い糸なので編み進めるのに時間はかかりましたが、
少しずつ、少しずつ、長くなりました。
マフラーが、長くなるにつれ、
お月さまは、少しずつ、細くなっていきます。
月の糸で編んだマフラーは、
気持ちがやわらぐような手ざわり、はだざわりでした。
なので、
編んでいるとちゅう、かなしいことがあったり、つらいことを思い出すたびに、
それを首にまいたり、顔にあてたり、涙をふいたりしていました。
やさしいまきごこち、ふきごこちは、
少しだけ、かなしみを、わすれさせてくれるようでした。
新月の夜になりました。
今夜もつづきを編もうとしましたが、
あれ?
どこをさがしても、マフラーがありません。
マフラーをおいていた、テーブルの上には、
小さな水たまりができていました。
水がこんなところに?
何もこぼした覚えはないのに。
なめてみたら、食塩水のようにしょっぱかったので、
ああこれは涙かもしれない、と、思いました。
でも今までに流した涙のわりには、少なかったので
きっとほとんどは、(マフラーの)糸が吸い取ってくれたのでしょう。
もしかして……
糸は、月へと、また帰っていったのかもしれない。
新月から、お月さまは、また、丸くなっていきます。
お月さまはお月さまを編むために糸が必要なのかもしれません。
お月さまは、その糸で自分を編んでいるのかもしれませんから。
月の糸はまたわたしのもとへ降りてきてくれるでしょうか。
次の満月の夜、金色の糸をさがしてみることにします。
(画像提供は「写真AC」サンサンさんより。ありがとうございます。)