きみの靴の中の砂

どこかで知った娘

 

 

 子供時代の十年は長く感じるのに、年寄りの十年は短い。この違いは、既に説明がついているらしいが一般に周知されていない。言ってみれば誰にとっても24時間は24時間なのだから、そんな話はどうでもいいことなのかも知れない。

 ところで、コンピュータの記憶装置にはRAMとROMがある(知らないけど興味はあるという人はWiki.へ)。人間の記憶にも同様の機能があって、『習熟したこと、常識的なこと』は脳内のROMに相当する部分に記憶される。これは思い出すまでもなく反射的に実行される。一方、RAMに相当する部分には、今は必要だが、これが過ぎれば忘れてもいいことが記憶される。

 ある時、何か過去の記憶を呼び戻す必要が生じた場合、『習熟したこと、常識的なこと』は瞬時にROMから呼び出され実行される。反面、忘れてしまったことや知らないことについては調べるなり人に聞くなりすることが必要になり、結果を得るまでに多少の時間を要する。
 つまり、子供より人生経験の長い大人の方がROMに蓄積された知識がはるかに多く、テキパキとROMを参照し、スムーズに事を進められる。よって、反射的に作業を進められる大人の時間の方が、いちいち検索をかける必要のある子供の時間より何倍、何十倍も短く感じてしまう —— そういう理屈だ。

 しかし、大人のROMには、忘れてしまってもいい、優先順位の低い余計なものも多く残るもので、いつしか、記憶装置の増設が望まれることもあるが、こればかりはビックカメラへ行ってUSBを買うようには簡単に事は運ばない。

                    

 人の記憶には、何十年も前のほとんどどこの誰かも定かでない人の面影も残る。
 
 

 

【The Monkees - The Girl I Knew Somewhere (Live)】

 

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