この半世紀、フォトグラファーで立派なテキストを書ける人達が増えた。
写真業界は、それまで叙情的なものを下に見る風潮があったが、自分の写真集にテキストを添えることで作品への理解が寄り深まるのに気付いた写真家が出現し始め、今となってみれば、それは実証されるに至った。
『写真+テキスト』の裏返しで、その頃からテキストのみの活字本が衰退し始め、よりヴィジュアルなものが重要とされる時代になっていった。
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活字業界は未だにそれに気付いた風もなく文字の衰退を嘆いているが、昔の巨人V9時代の川上監督に名言がある —— 『スランプに陥ったら基本に返れ!』。
テレビ出現以前の時代、人々の重要な娯楽のひとつに新聞小説があり、人気作品掲載中に発行部数が伸びることすらあったほどだ。さらに、掲載終了後、一冊として上梓され、ベストセラーになったものも少なくない。
その間の事情に詳しい人なら、次の掲載作の執筆者の選定と共に『挿絵画家の選定にも新聞社の文芸部が神経を使った』のをよく知っているはずだ。