BLT(いかにもアメリカ人らしいネーミング)もどきのサンドウィッチとチキンスープが今日のランチ ----- 作るに多少手を焼くメニューだ。かじると、トーストしたパンの耳のクズが、パラパラとテーブルに散らばる。
さて、食べながら読んだ古雑誌の映画欄に、パトリス・ルコントの『暮れ逢い』が載っていた。原作は、シュテファン・ツヴァイクだという。
ツヴァイクは、東京オリンピックの頃、みすず書房から全集も出ていたほどの作家だが、その後、なぜか読まれなくなる。辛うじて生前の児玉清さんが、彼の『チェスの話』は学生時代からの愛読書であると公言したため、ここ数年地味に読まれているようではあるが...。
ツヴァイクというのは奇妙な人で、オーストリアのユダヤ人だった彼は、第二次欧州大戦を逃れ、英国、米国と逃避し、行き着いた先のブラジルで我が帝国陸軍のシンガポール占領のニュースにショックを受け、睡眠薬を飲んで(不眠症ではあったらしいが)自殺したという。浮気ネタの小説も平気で書くほどの作家なので、もう少ししたたかな人かと思っていたが...。
同じ頃のベンヤミンの自殺の状況に比べても理由が薄弱である。まさか、トロツキーの暗殺のあとのことだったから、迫るナチスの暗殺者の妄想にでも駆られたか...。
急に人気を失った作家というところで上司小剣を思い出し、作家の揺れ動く心境を察したところで尾崎喜八を思い浮かべた。そして、ここまで書いて一息ついたら、フォークナーやドス・パソスも記憶の端に見え隠れし始めた。
昼食のトーストしてカリカリのパンの耳で、今日はめずらしく口の中に傷を作らずに済んだ。それで少し幸せな気持ちになっている。
The Cowsills / The Rain, The Park And Other Things
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