定期考査中の放課後。
教室の掃除。
水口イチ子に映画に行こうと誘われる —— 同じクラスになって以来、試験が始まるといつもこうだ —— 毎度、有無を言わせず連れ出される。
結果、合格点に至らず、追試や課題を提出させられるのは決まってぼくの方だけ。
確かにあの日に観た『夏の妹』は思い出に残ったけれど、現代国語の落第者用の課題『新聞(三大紙のうちのどれか)の社説を原稿用紙に十日分書き写し、それを製本して提出せよ』の苦労を考えると、なにもわざわざあの日に観に行かなくても良かったのではなかったかと、今も思うのではあるが...。