きみの靴の中の砂

カメラマン達の心意気




 先日、幼かった頃の娘の写真を撮ったゼンザブロニカのことを書いたが、今日のこの写真のカメラは、亡くなった父が、子供の頃のぼくを撮ったカメラである。

 このカメラ、名をコニカ II B という。戦後十年、日本中がまだまだ貧乏だった昭和三十年(1955)の発売。ズッシリ重く、メッキ部分がいまだに腐食しない頑丈な作りなど、戦中に軍用カメラ・陸軍飛行部隊の偵察用航空写真機製造で培ったノウハウが生きている。調達の問題か、発売時期により微妙に搭載標準レンズが異なる。この写真のカメラに搭載されているのは、Hexar 50mm/F3.5。メーカーである小西六写真工業の『六』の文字から6を表すヘキサ、そしてそこからヘキサーの名称が導かれている。戦後の傑作国産レンズである。露出計はなく、すべての絞り値で同一場面を撮影したことはないが、父の残した写真からは綿密な完成された描写がなされているのがわかる。

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 ぼくの自宅から車で十五分ほどの所にあった、小西六写真工業日野工場 ---- 小西六、国内最大の工場であった。
 同社の経営が衰退しつつあった末期、フィルムと言ったらフジという時代になっても、この工場周辺地域のカメラマン達だけはこぞってサクラフィルム、印画紙等、小西六製品を使い続け、最後の最後までフジのシェア逆転を阻む心意気があった。


 

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