きみの靴の中の砂

用途が特定・限定されるもの

 

 

 ヘンリー・デイヴィッド・ソローは、その主著『森の生活』に「暖炉で燃やす薪は、人を二度暖める」と書いた。薪割りで一汗かかせ、それを燃やし、部屋と身体を暖めてくれるというわけだ。
 世の中に存在するもので、用途・役割が複数考えられるものは多い。しかし、人は、そんなことを考えることもなく(そんな暇もなく)、当たり前のように日常を生きる。用途が特定・限定されるものを厳密にあげつらおうとすると、むしろこの方が難しいのに気付く。

 用途が特定・限定されるもの —— それって、一体どんなものがあるだろう❓

 思い浮かぶのは、旧来の、食パンを縦に二枚焼くトースター。一方、現代に普及しているオーヴン・トースターは一応万能で焼けるが、前者の食パンを立てて焼く伝統的なトースターは、それのみしか用途がない ーー だからか、後者は、メーカーのカタログにはあっても、実際に使っている人は身近には見当たらない。人に例えれば、専門職は『ツブシが効かない』ということになろうか。
 不況時や困窮時、何をしてでも食っていける人は、実に重宝・便利な存在と言える。

 

 

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