きみの靴の中の砂

パリでもローマでも





 パリでもローマでもアメリカ人観光客の多い表通りなら不自由なく英語が通じます。ところが、たった一本裏道に入れば、そこはもう、その国の言葉しか通じない街。そんな場所に、その国らしい文化があります。

 例えば午後2時、ローマの裏通りにある食堂では、近くの商店主らしき初老の男性が一人、遅い昼食を始めます。

 野菜サラダをたっぷり盛ったボウルを前に、丸い大きなパンをむしりつつ、溢れんばかりにビア・ジョッキに注がれた赤ワインを飲んでいます。サラダを食べ終わる頃、次に運ばれてきたのがトマトソース色した山盛りのスパゲッティ。これも豪快に平らげ、途中、ジョッキのワインをおかわり。それでお仕舞いかと思ったら、その後、ステーキまで運ばれてくる始末。さすがに古代ローマ民族以来の伝統の食欲です。

 私といえば、先程から同じ店の中で小イワシのマリネを頼もうとしているのに、英語がまったく理解されず、往生している最中。Small Fishes ですら理解してもらえない歯痒さです。 後で聞くと、イタリアの学校教育で行われる外国語教育は、そのほとんどがフランス語かドイツ語。英語をしゃべるよりも就職に有利のようです。そう言えば、テルミニ駅でもフィレンツェまでの明日の切符を買おうとするのに、どうしても Tomorrow が通じず、閉口したものです ----- もっとも Domani と言う単語を私が知ってさえいれば何の問題もなかったのですが...。

 小イワシのマリネに話を戻すと、結局、困り果てたボーイが私を厨房まで引っぱって行き、正にそのものを指差させたのでした。



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"Non son degno di te" Gianni Morandi


FINIS
 

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