夜半の東京の雪は、夜が明けたら消えてしまったが、春はこうして近づいてくる。
日本ほど種類はないにせよ、世界中どこにでも、季節の到来を告げる動植物がある。とりわけ口に入るものに人はこだわりがある。
フランスでは『タンポポのサラダ』が食卓にのぼると春を感じるという記述が、昔の文献に見える。
日本には、明治の開拓期に和種だけでは足りず、洋種のタンポポの種が北海道に輸入された記録がある。切り拓いた原野に堆肥代わりに用いられた他、飢饉の救荒食にも充てられたらしい。サラダや御浸しにすれば副植物としても心強い。
今の日本では、ホームレスのおじさん達が食に困って鋪道にはえたタンポポを食べているという話は聞かないから、こんな時代でも、まだまだ余裕があるんだろう。
ところで、レイ・ブラッドベリの著作に有名な『たんぽぽのお酒』があるが、てっきり創作上のものだと思っていたら、どうやら本当にあるらしい。イーストを使って発酵させるので強いアルコール度にはならないが、麦酒や甘酒達の仲間には入れてもらえるようだ。