きみの靴の中の砂

深夜プラス1



 『パリは4月である。雨もひと月前ほど冷たくはない』

 これは英国の作家ギャビン・ライアルの代表作『深夜プラス1(Midnight Plus One)』の書き出しである。

 この作品は、ミステリーファンの総合的な評価では、『必読の古典的名作』に分類されるらしい。確かに冒頭の訳文一行をとっても、この原作者らしいレトリック —— 文章のひねり方の妙を感じる。詰まるところ、ハメットやチャンドラー程度には読まれて良い作家ということなのだろう。
 それ故、この特別魅力的なタイトルにインスピレーションを誘発された読書人は多く、例えば『読まずに死ねるか!』でライターとしても名を売った『日本冒険小説協会(Japan Adventure Fictions Association)』会長故内藤 陳は、その協会の本部たる自分が経営する飲み屋の屋号に『深夜 + 1』のタイトルを借用してまで、日々、冒険心をヒートアップさせていた。

 この写真は雑誌に掲載された一枚 —— メモをし忘れたため、掲載誌は不明だが —— これについては、余程感じ入るところがあったのか写真で残してあった。

 写っているのは『日本冒険小説協会』会長の自室。

 平積みの下の方にある本を読みたくなった時は、不用意に抜くと崩壊するため、同じ程度の厚さの本と瞬時に差し替えるテクニックが必要だという。

 


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