きみの靴の中の砂

父と子と『涙のクラウン』


Feb 9th, 1965 Magazine add for TV Show


 『オギャー』と生まれた以上、男女に関わらず、必ず子供時代があり、中にはやがて親になる人も多い。親子というのは、外見上は、そういう単純な成長の流れの中にあるだけなのだが、親にまでなると親子関係の双方を経験することになる。さらに数年を経て、親子の理想的な関係とは、両者が等しく歩み寄り、理解し合う努力なくして成立しないことに気付く。どちらかが、少しでも優位に立とうとすればその関係は崩れる。何しろお互い人間なのだから.....。
「誰のお陰で、学校へ行かせてもらってると思ってるんだッ!」などといまだに言う親がいるとすれば、それは親自ら子供に対して、親子関係を良くするのは、もうこれ以上止めにしたいと宣言しているようなものだ。

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 ところで、芸能人にせよ芸人にせよ、笑いを提供することを仕事としている親の子は、結構学校でいじめに遭うと聞く。
「おまえのオヤジ、ばっかじゃねーのッ!」という具合なのだろう。だが、素の馬鹿がテレビに出られる訳はなく、役作りなのだからどうしようもない。苦労の種だ。それが理由で親子関係を悪くする芸能人は昔から多いようだ。そして、これは日本だけでなく、世界中のコメディアンが抱える問題でもある。

 アメリカにジェリー・ルイス(Jerry Lewis 1926 - )という超々コメディアンがいて、その息子はミュージシャンのゲーリー・ルイス(Gary Lewis 1945 - )。かつて、ゲーリー・ルイス&ザ・プレイボーイズ(Gary Lewis & The Playboys)というグループをやっていて、昔、よくラジオから聞こえていたものだ。
 ゲーリー・ルイスはアル・クーパーやレオン・ラッセルと同世代。日本では、大瀧詠一と同世代ということになる。
 そのゲーリー・ルイス&ザ・プレイボーイズがヒット曲『涙のクラウン (Everybody Loves a Clown)』で、息子としてコメディアンの父親を擁護している。
 『みんな、お笑いが大好きなんだよ』というこの曲、父親が司会を務めた歌番組で、父親の紹介により、この時、初めてオン・エアされている。
 この父と子には、きっと良い親子関係があるのだろう。


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"Everybody Loves a Clown(1965)" Gary Lewis & The Playboys

注1) プレイボーイズというグループ名は、彼らがそうであるということではなく、通っていた大学の社交クラブが『プレイボーイ・クラブ』ということからである。

注2) 大瀧詠一はこの曲が大好きで、メロディーの最初のフレーズにインスパイアされて『君は天然色』を作っている。

FINIS
 

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