東京都江東区高橋に『魚S酒場』はある。
海が目と鼻の先なだけに魚が豊富でしかも安いので、マニアの間では有名な居酒屋である。グルメ・ガイドによれば平均予算は一人千五百円。料理単価が平均三百円くらいだから-----100円のモノだってあるゾ-----一杯180円の酒を飲んで締めて二千円を払おうものなら、アンタは酒豪と言えよう。
この店のすごいところは、店内の品書きに出世魚が一遍に全部書いてあったりする。本当に全部あるのか? 全部注文して、仮に全部出てきても、その線引きは切り身にしたら誰も解らないだろうけど.....。
ところで、この店のホールのオバチャンの-----いたるところのブログで話題にされている-----サービスについて解説しておく。
例えば、大阪の下町方面でいえば-----天王寺から岸和田辺りまで含めてもいいだろう-----コテコテでディープな筋金入りの大阪のオバチャンに余所者が太刀打ちできないのと一緒で、東京の下町に生まれて還暦も過ぎたような居酒屋のホールのオバチャンに下町育ち以外の者が太刀打ちできるはずがない。つまり、大阪でも東京でもローマでもマドリッドでも、下町のオバチャンはすべて『口は悪いが気は良い』という不文律をよく理解しておかないと、ついついブログなんぞに悪口を書きたくなる。
ということで、この下町の居酒屋で一杯180円のコップ酒を頼むとしよう。
「お姉さん、お酒、冷やで下さい」
「ハイよ」と言って出てきたのが燗酒だったらどうなるか.....。
「お姉さん、頼んだの冷やだけど.....」
「うちは安いんだから、我慢して飲もう!」と嫌みなく、サラッとおっしゃる。この呼吸を理解しないと、下町の酒場では飲めない。ついでに言えば、オバチャン達、頼んだ肴を出す時、
「あ~、このイカ納豆頼んだ人、どこ?!」と客に手を挙げさせることがある。手を挙げそびれると、即座に、
「誰か他に食べたい人?!」と言って、その場で転売にかかる。ちなみにこの転売の場合、それに手を挙げたからといって、決して無料にはならない。
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浅草などは世界中からの観光客であふれかえっているが、ここ江東区高橋付近は歴史ある暖簾の店も多い割りに、地理的に、観光客も含めて余所者には踏み込みづらいエリアだ。
仏蘭西料理と合体した居酒屋メニューで仏蘭西高級ワインも飲めるという居酒屋『山利K』だの、東京の馬肉料理の王者『みのY』などもあり、一晩では堪能しきれない。それと忘れてはいけないのが江戸の味『どぜう 伊せK』。量産体制をとる『駒形どぜU』を『カステラの文明D』だとすれば、『福砂Y』に相当するのが『どぜう 伊せK』-----大川へと続く小名木川の袂にある。
ほとんどの人が、こういう本物を食べずに亡くなっていくのかと思うと、気の毒である。
FINIS
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