きみの靴の中の砂

エクリチュールの理論と実践の間で生じた深刻な問題


Roland Barthes


   『彼自身によるロラン・バルト』による(1)

 昨日のブログ『変形生成文法』で探究心に灯が着き、言語学つながりのロラン・バルト(Roland Barthes, 1915 - 1980)著『彼自身によるロラン・バルト(Roland Barthes par Roland Barthes, 1975)』を急に読みたくなって、書庫から引っ張り出してきた。

 発行元の『みすず書房』は1997年に装丁を改めて新装版としたようだが、僕の蔵書の方は1979年発行の佐藤信夫による日本語訳初版、バルト自身が描いた絵(『ジャン=レ=パンの思い出』)が表紙となっている、今となっては趣深いものである。

 さて、本書を未読の人が、書名から推測すると自叙伝と思うかもしれない。だが、実はそうではなく、著者が自分自身を対象として書いた評論もしくは評伝、あるいは自らによる自著の解説書という、めずらしい内容のものである。

 訳者のあとがきに、本書のアイデアは、編集者との雑談の中から生まれたとある。バルトはこれを、当初、一種のギャグ、もしくは娯楽のつもりで書こうとしていたようだ。ところが、あるインタヴューに答えたところによると、執筆を始めると状況が変わり、エクリチュールの理論と実践の間で深刻な問題が生じ、書き始める前の予想に反し、娯楽として書くわけにはいかなくなったという(309頁)。

 この先しばらく、奇書『彼自身によるロラン・バルト』を日々一節ずつ再読しようと思う。それにより、何かをインスパイアするパラグラフに遭遇した場合、自分なりにそれを模作してみようと企んでいる。そして、バルトが本書執筆中に体験した『エクリチュールの理論と実践の間で生じた深刻な問題』を追体験したい。


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Roland Barthes parle de Jules Michelet


TO BE CONTINUED.

 

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