『作家のインデックス(1998)』----- 大倉舜二が写真撮影を担当した、作家の身辺記録。通読するというよりは、その日その日、気の向いた頁を開くというのが正しい。
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埴谷雄高(はにや・ゆたか 1909 - 1997)の晩年は、外出しない限り、浴衣の上に丹前を着て過ごした。
「こうしてりゃ、すぐに寝られるからね」
仕事机は赤外線炬燵。季節によって電源が入るかどうかの違いがあるだけ。
奥の和室には酒好きならではの酒のストック。好みは、シグロの白ワインやトカイの貴腐ワインだという。
「もっぱら考えて飲んでるだけで、頭は働かない。メモを書くだけで、小説にはならないよ」
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埴谷雄高の知的直観による形而上学的哲学小説『死霊』を読むと、売文家でない限り、書くなら同時代の批評に値するものを書かないとならないことに気付く。それは、面白い必要もなければ、沢山の人の目に触れる必要もない。その一瞬、その時間に存在する理由のあるものを書きたい。少なくとも、それを目標にしていたい。
【埴谷雄高お別れ会 / 加賀乙彦・島田雅彦】
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