名前は辛うじて存じているのだけど、この度アメリカで仙骨を骨折して救急搬送され、30万支払ったとの記事をみた。
しかも骨折しているのに、入院はさせてくれないとか。
でも歩く事も出来ない患者を拒否するのかしら。ゴネたら入院させてくれないかしら?
でも、アメリカで入院したら、今度は骨も痛いだろうけど懐も痛くなるだろう。
ハワイで、夫が救急車に乗った時も、タクシーで10分位の病院迄救急車代が500ドル位だった($1が¥128の頃)
救急病棟に運ばれた夫は、折角のオニューのアロハシャツとパンツを、ぐちゃぐちゃに切られて、病院着を着せられて、頭部に包帯を巻いていた。
頭を「5ステッチ縫った」と医師は言った。一瞬脳裏に「クロスステッチの絵面が浮かんだ私」は悪妻だろうか。
後は事務員に聞いて下さいと言われ、事務員の叔母様と面会。
叔母様にこにこして、A4の用紙を見せて「AかBにチェックをしなさい」と言う。
それは「A=ターミナル迄の治療を望む」「B=保険以内でよい」だそうで、つまり、カネが無いなら、保険だけにして、後はむにゃむにゃと言うことだった。
迷わず「A]にチェックをして、何とか入院。
救急病棟は満員だった。
隣の部屋に、又救急患者が搬送されて来た。それが日本人だった。
看護婦は日本語が話せず、患者は日本語しか話せない。
「通訳してくれないかしら?」と頼まれたので、隣室に行くと、体格の良い初老の男性が、枕もせずに「まっすぐ」に横たわっていた。
看護婦が「何か言ってるんだけど、あなた聞いてあげて」と言うので、お聞きすると、
「いやいや、すみませんねえ。ちょっと右足が痒くて、掻いて貰えませんか」とおっしゃる。
それを看護婦に言うと、ふんと鼻先で笑って「頸椎折れているのに、足の感覚なんて無いわよ」と彼の親指を思いっきり抓った。
私はびっくりしておじさまに「まだ痒いですか?」と聞くと、
「いや~、あはは、何も感じないんだよね。困っちゃったね」と笑っておられる。
聞けばどこかの中小企業の社長さんで、社員旅行でマウイ島に来たそうだ。
で、年甲斐も無く、サーフィンをやって、岩に打ち付けられて、ヘリでオアフ島へ搬送されたんだとか。
私が素人判断で余計な事を言うのもためらわれるので、「隣ですので、いつでもお声かけて下さい」と夫の病室に逃げ帰った。ああ、なんて事だろう。
暫くすると、奥様と、後継ぎの息子さんが挨拶に来られた。
社員旅行は明日迄なので、奥様は社員と一緒に帰国する。息子は、滞在を伸ばして父の側へいるとの事だった。
奥様は「私が残ってもいいんですけどね、英語はさっぱりなもので、おほほ」と笑っておられた。
何と言ってよいやら、「はぁ・・・」としか言えなかった私。
息子さんが来られた後、夫は、何が何でも帰国すると言い、私に退院交渉をしてくるように命令した。
案の定医師は大反対、頭を打っているし、内臓もどこか破損しているかもしれない、このまま入院だと言われたが、夫の決心は固く、医師と口論になったものの、「何があっても医師を訴えません」という書類にサインをして、2日で退院。
請求書は日本円で300万円だった。飲まず食わず点滴のみで一日150万円・・・・・
退院前に社長さんの病室へ行き、息子さんともお別れの挨拶をした。
息子さんが「さっき医者が来て、脊椎が折れているから、1か月は入院だと言ってるんですよ、参ったなあ、会社もあるのに」とご機嫌悪そうだった。
入院費は退院時の精算迄分からない。社長さんは、保険に入っておられただろうか。
1日150万円で1か月・・・
クレジットカードの付帯保険なぞ、入院すれば「1日分」だ。
もし、事故ったら、這ってでも空港へ行き、そのまま帰国する!!
血ぃだーらだら流してたら、流石に搭乗拒否されるかなあ??
日本の保険制度は素晴らしいと私は思う。保険料が高いだとか、文句を言う人もいるけれど、アメリカの医療事情にぶち当たった者として、日本は「病気に関しては手厚い制度を持つ国」だと思うのだ。