ホッキョクグマ(北極熊)は、動物界脊索動物門哺乳綱ネコ目(食肉目)クマ科クマ属に分類されるクマ。
分布
北アメリカ大陸北部、ユーラシア大陸北部、北極圏
形態
体長オス:200-250cm メス:180-200cm 体重オス:400-600kg(最大800kg)メス:200-350kg(妊娠時500kg)。生息地によっても大きさに違いがあり、ロシアのチュクチ海に生息する個体群が最も大型化する傾向がある。
他種のクマと比較すると頭部は小さいが、長い頸部を持つ。ヒグマと比べると、肩の盛り上がりや爪が小さい。吻端と足裏の肉球を除いた全身が体毛で被われている。夏季は汚れや油脂の酸化などにより毛衣が黄がかる個体もいる。
耳介は短く、寒冷地に適応している。
出産直後の幼獣は体重0.6キログラム。
体制は寒冷地に適応している。前述の長い首や流線型で小さな頭は遊泳への適応結果とされ、何時間も氷海を泳ぐ事ができる。また流氷に乗って長距離移動することもある。クマの中では高い視力を持つ。
全身が白い体毛に覆われているように見えるため、シロクマ(白熊)とも呼ばれる。多くの哺乳類の体毛がたとえ白色であっても光を透過しないのに対し、ホッキョクグマの体毛は光を透過し、内部が空洞になった特殊な構造のために、散乱光によって白く輝いて見える。ホッキョクグマの透明の体毛は陽光の通過を妨げず奥にある皮膚にまで届き熱をもたらす。
もたらされた熱はぶ厚い脂肪層と体毛に保護され、容易に失われることはない。それに加え体毛内の空洞も蓄熱の役割を果たすという巧みな保温機構を成立させている。体温が殆ど外に逃げないため、体から輻射される赤外線の量が非常に少ない。この特性から、赤外線カメラによる空中撮影の際は雪の反射光に遮られる為、ほぼその姿を捉えられないことが知られている。
なお、動物園などに飼育されている個体の場合、体毛の空洞に汚れが入り込むことで黄色っぽく変色したり、ときには空洞内に藻が発生し緑みがかかった色になってしまうことがある。
分類
ホッキョクグマは分岐分類学的にヒグマに極めて近い位置にある。ホッキョクグマとヒグマは、氷期だった約15万2000年前に共通の祖先から枝分かれした。そのため互いに交配し、生殖能力のある子孫を残せることが判明しており、野生下でも稀にこのような個体の存在が確認されている。
このためヒグマとホッキョクグマの生殖的隔離は不完全となっている。
昨今では温暖化の影響もあり、北上してきたヒグマと陸地に上がってきたホッキョクグマの生息域が重なり「ハイブリッド」と呼ばれるヒグマとホッキョクグマの交配種が確認されている。
ハイブリッドは体毛はホッキョクグマのように白いが、盛り上がった肩と土を掘るための湾曲した長い爪などヒグマの特徴を強く受け継いでいる。
2004年(平成16年)、アイスランドの地質学者が、ノルウェー・スバールバル諸島の地層からホッキョクグマのあご骨と犬歯を発見。ペンシルベニア州立大学などの欧米の研究チームは化石に残された遺伝子と、米アラスカ州に生息するホッキョクグマ2頭とヒグマ4頭の遺伝子を比較解析した。
その結果、氷期だった約15万2000年前にヒグマとホッキョクグマの共通の祖先から枝分かれし、最後の間氷期が始まる直前の約13万4000年前には現在のホッキョクグマに近い形で存在していたことが判明している。
道具を使うホッキョクグマ
大阪市天王寺動植物公園で飼育されているホッキョクグマのゴーゴ(オス、5歳)は、同動物園がゴーゴ用の遊び道具として置いてある棒やプラスチック製の筒を使って、ぶら下げてある餌の肉を落して食べる。ゴーゴは2009年(平成21年)9月頃からこのような行動をするようになった。カナダ環境省野生動物研究所のイアン・スターリングは「長年シロクマの観察を続けているが野生でも道具を使っているような例は見たことがない。非常に興味深い事例」と語り、また、北海道大学の坪田敏男は「クマは知能が高いとされているが、道具を使ってエサを取るというのは初めて聞いた」と語る。
和名と俗称
和名はホッキョクグマであるが、俗にシロクマと呼ばれることも多い。日本初のホッキョクグマは、1902年(明治35年)の恩賜上野動物園。この時、上野動物園では、新潟県で捕獲されたアルビノの白いツキノワグマを飼育しており、それを「シロクマ」と呼んでいた。そのため、北極の白いクマのほうには「ホッキョクグマ」という和名を付けたことが名の由来である。なお、日本においては国後島において白いヒグマの個体群が生息する事が近年判明しており(ヒグマ#分布参照)、前述の日本に二頭流れ着いた記録に関しては、上野で飼育されたようなアルビノの個体、或いは国後島の白いヒグマであった可能性も指摘されている。
生態
流氷水域、海岸などに生息する。冬季には流氷の南下に伴い南へ、夏季には北へ移動する。1日あたり70キロメートルを移動することもあり、年あたり1,120キロメートルの距離を移動した例もある。地域によっては直射日光、天候、外敵から逃れるための風通しの良い巣穴を作る[2]。流氷の間を数時間にわたって泳いだり、時速6.5キロメートルの速度で約65キロメートルの距離を泳ぐことができる。
雑食獣であるクマの中で最も肉食性が強い種であり、ヒグマに比べ歯がより特殊変化している。アザラシ(主にワモンアザラシ、次いでアゴヒゲアザラシ。時にズキンアザラシやタテゴトアザラシも捕食する)を主食とするほか、魚類、鳥類やその卵、イッカクやシロイルカなどの哺乳類、クジラ等の動物の死骸に加え、氷の溶ける季節には植物(コンブ、スゲ、イチゴ等)も食べる。アザラシを捕食する際は、優れた嗅覚で匂いを察知し、氷を掘って巣穴にいる個体を襲う、氷上にある呼吸用の穴や流氷の縁で待ち伏せる、氷上にいる個体に忍び寄るなどの方法を取る。
繁殖形態は胎生。3-6月に交尾を行う。受精卵の着床が遅延する期間も含めて妊娠期間は195-265日。11-翌1月に1-4頭の幼獣を産む。幼獣は生後28か月は母親と一緒に行動する。生後5-6年で性成熟する。生後21年で繁殖を行ったメスもいる。寿命は25-30年。
500kgの雄の個体の体重を維持するには1日に12000-14000カロリーを必要とし、これには1週間でアザラシ1頭の捕食を必要とする。このため食糧事情により個体差が大きく分かれ、飢え死にする個体も多い。食糧事情が乏しいときは、同種の子を狙うことも多い。これはオスばかりでなく子の母親でも同様である[脚注 3]。
交尾相手のメスをめぐり、オス同士が争うこともある。ただし、この争いは相手の殺害が目的ではなく、威嚇を重視したものでレスリングに近い。なお、仔の2頭に1頭は生後1年以内に死亡することが多く、この中にはホッキョクグマのオスの成獣に捕食される個体も多い。このため子グマをつれたメスはオスを大変に恐れ、警戒する。
生息地帯において銃を持った人間以外脅威となるものは殆ど存在しないが、ごく稀に水中活動中にシャチに襲われる例が確認されている。近年は海氷が激減したことにより、必然的に泳がなければいけない距離が長くなり、以前よりシャチに襲われる危険性が高まっている。ホッキョクグマに限らず、大型の海生動物の減少には、シャチによる捕食が拍車をかけているという指摘もある。
出典・ウィキペディアフリー百科事典。
分布
北アメリカ大陸北部、ユーラシア大陸北部、北極圏
形態
体長オス:200-250cm メス:180-200cm 体重オス:400-600kg(最大800kg)メス:200-350kg(妊娠時500kg)。生息地によっても大きさに違いがあり、ロシアのチュクチ海に生息する個体群が最も大型化する傾向がある。
他種のクマと比較すると頭部は小さいが、長い頸部を持つ。ヒグマと比べると、肩の盛り上がりや爪が小さい。吻端と足裏の肉球を除いた全身が体毛で被われている。夏季は汚れや油脂の酸化などにより毛衣が黄がかる個体もいる。
耳介は短く、寒冷地に適応している。
出産直後の幼獣は体重0.6キログラム。
体制は寒冷地に適応している。前述の長い首や流線型で小さな頭は遊泳への適応結果とされ、何時間も氷海を泳ぐ事ができる。また流氷に乗って長距離移動することもある。クマの中では高い視力を持つ。
全身が白い体毛に覆われているように見えるため、シロクマ(白熊)とも呼ばれる。多くの哺乳類の体毛がたとえ白色であっても光を透過しないのに対し、ホッキョクグマの体毛は光を透過し、内部が空洞になった特殊な構造のために、散乱光によって白く輝いて見える。ホッキョクグマの透明の体毛は陽光の通過を妨げず奥にある皮膚にまで届き熱をもたらす。
もたらされた熱はぶ厚い脂肪層と体毛に保護され、容易に失われることはない。それに加え体毛内の空洞も蓄熱の役割を果たすという巧みな保温機構を成立させている。体温が殆ど外に逃げないため、体から輻射される赤外線の量が非常に少ない。この特性から、赤外線カメラによる空中撮影の際は雪の反射光に遮られる為、ほぼその姿を捉えられないことが知られている。
なお、動物園などに飼育されている個体の場合、体毛の空洞に汚れが入り込むことで黄色っぽく変色したり、ときには空洞内に藻が発生し緑みがかかった色になってしまうことがある。
分類
ホッキョクグマは分岐分類学的にヒグマに極めて近い位置にある。ホッキョクグマとヒグマは、氷期だった約15万2000年前に共通の祖先から枝分かれした。そのため互いに交配し、生殖能力のある子孫を残せることが判明しており、野生下でも稀にこのような個体の存在が確認されている。
このためヒグマとホッキョクグマの生殖的隔離は不完全となっている。
昨今では温暖化の影響もあり、北上してきたヒグマと陸地に上がってきたホッキョクグマの生息域が重なり「ハイブリッド」と呼ばれるヒグマとホッキョクグマの交配種が確認されている。
ハイブリッドは体毛はホッキョクグマのように白いが、盛り上がった肩と土を掘るための湾曲した長い爪などヒグマの特徴を強く受け継いでいる。
2004年(平成16年)、アイスランドの地質学者が、ノルウェー・スバールバル諸島の地層からホッキョクグマのあご骨と犬歯を発見。ペンシルベニア州立大学などの欧米の研究チームは化石に残された遺伝子と、米アラスカ州に生息するホッキョクグマ2頭とヒグマ4頭の遺伝子を比較解析した。
その結果、氷期だった約15万2000年前にヒグマとホッキョクグマの共通の祖先から枝分かれし、最後の間氷期が始まる直前の約13万4000年前には現在のホッキョクグマに近い形で存在していたことが判明している。
道具を使うホッキョクグマ
大阪市天王寺動植物公園で飼育されているホッキョクグマのゴーゴ(オス、5歳)は、同動物園がゴーゴ用の遊び道具として置いてある棒やプラスチック製の筒を使って、ぶら下げてある餌の肉を落して食べる。ゴーゴは2009年(平成21年)9月頃からこのような行動をするようになった。カナダ環境省野生動物研究所のイアン・スターリングは「長年シロクマの観察を続けているが野生でも道具を使っているような例は見たことがない。非常に興味深い事例」と語り、また、北海道大学の坪田敏男は「クマは知能が高いとされているが、道具を使ってエサを取るというのは初めて聞いた」と語る。
和名と俗称
和名はホッキョクグマであるが、俗にシロクマと呼ばれることも多い。日本初のホッキョクグマは、1902年(明治35年)の恩賜上野動物園。この時、上野動物園では、新潟県で捕獲されたアルビノの白いツキノワグマを飼育しており、それを「シロクマ」と呼んでいた。そのため、北極の白いクマのほうには「ホッキョクグマ」という和名を付けたことが名の由来である。なお、日本においては国後島において白いヒグマの個体群が生息する事が近年判明しており(ヒグマ#分布参照)、前述の日本に二頭流れ着いた記録に関しては、上野で飼育されたようなアルビノの個体、或いは国後島の白いヒグマであった可能性も指摘されている。
生態
流氷水域、海岸などに生息する。冬季には流氷の南下に伴い南へ、夏季には北へ移動する。1日あたり70キロメートルを移動することもあり、年あたり1,120キロメートルの距離を移動した例もある。地域によっては直射日光、天候、外敵から逃れるための風通しの良い巣穴を作る[2]。流氷の間を数時間にわたって泳いだり、時速6.5キロメートルの速度で約65キロメートルの距離を泳ぐことができる。
雑食獣であるクマの中で最も肉食性が強い種であり、ヒグマに比べ歯がより特殊変化している。アザラシ(主にワモンアザラシ、次いでアゴヒゲアザラシ。時にズキンアザラシやタテゴトアザラシも捕食する)を主食とするほか、魚類、鳥類やその卵、イッカクやシロイルカなどの哺乳類、クジラ等の動物の死骸に加え、氷の溶ける季節には植物(コンブ、スゲ、イチゴ等)も食べる。アザラシを捕食する際は、優れた嗅覚で匂いを察知し、氷を掘って巣穴にいる個体を襲う、氷上にある呼吸用の穴や流氷の縁で待ち伏せる、氷上にいる個体に忍び寄るなどの方法を取る。
繁殖形態は胎生。3-6月に交尾を行う。受精卵の着床が遅延する期間も含めて妊娠期間は195-265日。11-翌1月に1-4頭の幼獣を産む。幼獣は生後28か月は母親と一緒に行動する。生後5-6年で性成熟する。生後21年で繁殖を行ったメスもいる。寿命は25-30年。
500kgの雄の個体の体重を維持するには1日に12000-14000カロリーを必要とし、これには1週間でアザラシ1頭の捕食を必要とする。このため食糧事情により個体差が大きく分かれ、飢え死にする個体も多い。食糧事情が乏しいときは、同種の子を狙うことも多い。これはオスばかりでなく子の母親でも同様である[脚注 3]。
交尾相手のメスをめぐり、オス同士が争うこともある。ただし、この争いは相手の殺害が目的ではなく、威嚇を重視したものでレスリングに近い。なお、仔の2頭に1頭は生後1年以内に死亡することが多く、この中にはホッキョクグマのオスの成獣に捕食される個体も多い。このため子グマをつれたメスはオスを大変に恐れ、警戒する。
生息地帯において銃を持った人間以外脅威となるものは殆ど存在しないが、ごく稀に水中活動中にシャチに襲われる例が確認されている。近年は海氷が激減したことにより、必然的に泳がなければいけない距離が長くなり、以前よりシャチに襲われる危険性が高まっている。ホッキョクグマに限らず、大型の海生動物の減少には、シャチによる捕食が拍車をかけているという指摘もある。
出典・ウィキペディアフリー百科事典。
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