◎食物繊維Dietary fiber しょくもつせんい
「人の消化酵素で消化されない食物成分」と食物繊維を定義づけしています。
最近ではルミナコイドLuminacoidともいい食物繊維が小腸内で消化吸収されにくい食物中の成分で健康の維持、増進に役立つ生理作用をもつ食物中の成分をルミナコイドと呼ぶように働きかけをしています。Luminal(消化管腔内の)、accord(調和)、および- oid(―のようなもの物質、―質の)の3つの単語を癒合且つ縮合した造語です。
以前は、食物のカスとして栄養効果が期待できないものとして重要視していませんでした。がしかし1950年代の調査で、南アフリカの原住民と白人との食生活の違いから原住民に動脈硬化などのいわゆる生活習慣病が少ないことが認められていました。研究が進むにつれて食物繊維の摂取量との関連が1970年代に入って明らかにされるようになったのです。ここで一躍食物繊維は脚光をあびるようになりました。
食物繊維は、穀類、豆、野菜、きのこ、海藻のような植物性食品に多く含まれます。
主な食品の食物繊維は、100g中で
玄米ご飯1.4g、精白米ご飯0.3g、上新粉0.6g、白玉粉0.5g、
オートミール9.4g、小麦粉2.5g、食パン2.3g、乾麺2.4g、茹で麺0.7g、茹で中華麺1.3g、茹でスパゲティ1.5g、そば粉4.3g
乾大豆17.1g、茹で大豆7.0g、納豆6.7g、茹で枝豆4.6g、豆腐0.4g、茹でアズキ11.8g、つぶし餡5.7g
茹でほうれん草3.6g、茹でグリーンアスパラガス2.1g、茹でカボチャ4.1g、茹で竹の子3.3g、茹でトウモロコシ3.1g、人参2.9g、オクラ5.0g、生レタス1.1g、サラダ菜1.8g、生大根1.4g、生鮮白菜1.3g、トマト生1.0g、ナス生1.1g
生椎茸3.5g、なめこ3.3g、マイタケ2.7g
素干し昆布30g、塩昆布13.1g、昆布佃煮6.8g、湯通し塩蔵塩抜きワカメ3.0g、めかぶワカメ3.4g、干しひじき43.3g、焼きのり36g、塩蔵塩抜き沖縄モズク2.0g
いちご1.4g、さくらんぼ1.2g、桃1.3g、キウイ2.5g、バナナ1.1g、パインアップル1.5g、日本梨0.9g、りんご1.5g、みかん1.0g、金柑4.6g、柿1.6g、ぶとう0.5g、干しブドウ4.1g
炒りピーナツ7.2g、炒り胡麻10.8g、アーモンド味付けフライ11.9g、茹で栗6.6g、くるみ7.5g
皮ごと食べられるのがよくブドウ生で種子、果皮を除いた可食部で0.4g/100g中ですが干しブドウ20gで0.8gであり、豆類、胚芽、玄米に近いものに多くなります。
日本人の食生活は、景気の高度成長期まで食物繊維の豊富な食品の摂取ができていました。その後繊維の少ない動物性食品、加工食品、白米のように精製された食品の普及により食物繊維の取り除かれた食物を自然に取り入れているような結果になりました。1960年ぐらいまで20g/1日程度を維持できていましたが、その後は、1980年代でおおむね17~20gと推定しています。徐々に減少の一途をたどってきて近年は、15g/1日台にまでの減少です。
日本人の食品摂取量の年次推移を見てみましょう。
資料・国民栄養調査・国民健康栄養調査 一人一日当りg数
食品群別 |
1950年 |
1955年 |
1985年 |
1994年 |
1999年 |
2014年 |
穀類 |
471.3 |
474.9 |
308.9 |
280.7 |
254.4 |
435.9 |
種実類 |
0.9 |
0.4 |
1.4 |
1.7 |
2.2 |
2.0 |
芋類 |
127.3 |
80.8 |
63.2 |
62.2 |
67.7 |
52.9 |
砂糖類 |
7.2 |
15.8 |
11.2 |
10.0 |
9.5 |
6.3 |
菓子類 |
/ |
/ |
22.8 |
19.6 |
23.1 |
26.4 |
油脂類 |
2.6 |
4.4 |
17.7 |
17.6 |
16.5 |
10.5 |
豆類 |
53.7 |
86.2 |
66.6 |
66.8 |
70.4 |
59.4 |
動物性食品 |
81.8 |
114.9 |
318.7 |
347.0 |
350.1 |
315.3 |
野菜・きのこ |
282.5 |
290.5 |
402.3 |
360.1 |
409.7 |
380.5 |
海藻類 |
3.0 |
4.3 |
5.6 |
5.8 |
5.5 |
9.6 |
総量 |
1031.3 |
1072.2 |
1218.4 |
1171.5 |
1209.1 |
1,298.8 |
食品群別の摂取量を年次ごとに追ってみると食物繊維を多く含む野菜・果物にしても量は増加していることが判りますが穀類、芋類が減少傾向を示していることが読み取れます。今まで食物繊維というと野菜を積極的に取りましょうと言われて来ましたが平成26年度の調査で緑黄色野菜88.2g、その他の野菜類171.3g、きのこ類9.6gの摂取量で以前と大差ないように思えます。
米の精白といも類の取り方が少なくなったことが考えられます。米、いも類、豆類の食物繊維量を見てみましょう。
100g中、精白米:0.8g 胚芽精米:1.3g
馬鈴薯:1.1g さつま芋:1.7g
木綿豆腐:0.4g おから:9.8g(一回量50gで4.9g) 黄な粉:16.9g(一回量10gで1.7g)
大豆:17.1g(一回量10gで1.7g) 枝豆:10.1g(一回量30gで3.0g)
納豆:6.7g(一回量40gで2.7g) 味噌:4.9g(一回量15gで0.74g)
小豆:17.8g(一回量30gで5.3g)
穀類と芋類の摂取量の減少と加工食品の多用により 食物繊維量の取り方が少なくなってきていることが考えられるのではないでしょうか?
食物繊維は、消化吸収されないということを利用しての働きが見なおされています。水溶性食物繊維は、保水性があり水を含んで便をやわらかくします。不溶性食物繊維は、残渣(ざんさ)となって便量を増やします。
消化器疾患(大腸がん・便秘・胆石症)の予防:便のかさを増やし排便を促進させるて食物が消化器を通過する時間が短縮され、有害物質の排出を容易にしています。大腸ガンについては、このところの研究により効果がないことが米国で先に発表されていましたが日本でも実証されてきているようです。
糖尿病、高脂血症、肥満の予防:糖質や脂質、他の栄養素の消化吸収にも影響を与えて抑制されることによって血糖値の改善、高脂血、肥満の改善されます。脂肪やコレステロールの吸収を抑えるといわれています。肝臓は胆汁酸を作って消化管に排出していますが食物繊維は小腸での胆汁酸の再吸収を妨げます。胆汁酸が吸収されなくなって肝臓に吸収されないと肝臓は失った胆汁酸を作らなければなりません。胆汁酸を作る原料がコレステロールなので血液中のコレステロールが胆汁酸を作るのに消費されて、血中のコレステロール値が低下することになるのです。
脂肪、コレステロールの吸収を押さえることは、同時に脂溶性ビタミンA、D、E、Kの吸収も抑制されることになりますので注意が必要です。特に水溶性の粘質性が効果が大きいと言われています。
解毒、代謝促進作用:食物繊維の吸着性、保水性、膨潤性を利用し有害物質を希釈したりして食品添加物、環境汚染物質にたいしても吸収を阻害しその有用性を報告しています。
さらに腸内に住む細菌、乳酸菌が食物繊維をエサとしてビタミンB群を生成する働きがあり腸内環境をよくしてくれているのです。
おもに日本人の摂取している食物繊維には、不溶性食物繊維、水溶性食物繊維の2種類に大別しています。
不溶性食物繊維:水に溶けない食物繊維で植物性食品に一般的に含まれています。
セルロース、ヘミセルロース・ペントザン(ペントサン)、キチン・キトサン〈海老・かにの甲羅〉、リグニン〈ココア・野菜〉
水溶性食物繊維:水に溶けて粘着性を持っています。
ペクチン〈果物に多い〉、アルギン酸・カラギーナン〈藻類〉、グルコマンナン〈コンニャク〉、イヌリン(キク科の根茎:温水に溶ける)、 アガロース(寒天)、グアガム〈グア豆〉
以上のことから食物繊維を摂取することの大切さが理解されましたでしょうか?努めて食物繊維を取るようにしなければなりません。野菜を積極的に取ることも大事ですが上手に取るには、加工食品の多用を避けて精白米から胚芽精米に替えてみるのもいいかもしれません。いも類、豆類(おから等)を献立に取り入れるよう努めましょう。よほど注意して取るようにしないと目標とする摂取量を取ることは難しいと言えるでしょう。たんぱく質について成人体重1Kg当り1g程度でも理想としています。適正体重を保ちましょう。
食物繊維の目標摂取量は、1000Kal当り10gとして日本人平均で20~25gとしています。2019年までの成人の目標量として17g~20gです。あくまでも消化吸収されないものですのでやはり度を越した多量摂取は好ましくありません。現状での平均的取り方を見てみると過剰摂取について神経質になることもないかと思われますが吸着作用によって大切な微量のミネラル(カルシウム、鉄、亜鉛)、ビタミンの吸収までも阻害しますので注意も必要です。
「健康日本21」では野菜350gを目指しています。一日三食栄養のバランスのとれた食事が基本であり大切なのです。
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