◎果糖Fructose・Fruit sugar かとう
店頭でには甘い香り豊かなさまざまの色彩豊かにフルーツが並べられています。フルーツに果糖が多く含まれ、糖尿病になりにくい低GI(Glycemic Index)食品として注目されていますがその真意はいかに検証してみましょう。その果糖(フルクトース・フラクトース)について調べました。
果物に多く含むことから名前が付けられています。
果糖(C6H12O6)は、ブドウ糖、ガラクトースと同じ分子式で構造が異なり、とくに蜂蜜、果物に多くブドウ糖と一緒になっていることが多く単独で自然界に存在していません。ブドウ糖に比べ結晶しにくく蜂蜜を長期に保存したり、冷却すると結晶化してきますが結晶しているものの多くはブドウ糖であり、果糖の大部分がシロップとして残っている部分にあります。蔗糖(Sucrose砂糖)を希酸、酵素(インベルターゼ)で加水分解するとブドウ糖と果糖になります。ブドウ糖に次いで重要な糖として存在します。単糖類のうちポリオキシアルデヒドの構造をもつものをアルドース、ポリオキシケトンに相当するものをケトースといいます。単糖類の炭素数に従って、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース(Hexose六炭糖)などといいブドウ糖はアルドヘキソース、果糖はケトヘキソースとなります。成分のイヌリン(多糖類)、スコロドース(四糖類)ラフィノース(三糖類)、スタキオース(四糖類)にもフルクトースを含みます。
吸湿性のある白色の結晶で水によく溶け砂糖の1.3~1.7倍の甘みがあり、糖の中で最も甘味が強く低温で甘味を強く感じさせます。温度が高くなると甘味度は低下し40度で蔗糖と同程度の甘味度になり40度以上でさらに低下します。α型とβ型がありβ型がα型よりよりおよそ3倍の甘味があり、加熱して50度を越えるとα型が増加し甘味度は著しく減少してショ糖の甘味度以下となります。ショ糖では、α型ブドウ糖(β型より甘い)とβ型果糖が結合し、甘味度の強いもの同士の結合で甘味を強く感じるのです。
吸湿性を利用し、カステラ、スポンジケーキに使われ乾燥してパサパサになるのを防いでいます。
よく清涼飲料などに果糖ぶどう糖液糖などと表示されていますが異性化液糖の1つで異性化糖の澱粉(馬鈴薯、さつま芋、とうもろこし)を糖化して、出来るブドウ糖に異性化酵素のブドウ糖を果糖に変えるイソメラーゼなどを作用させブドウ糖の一部に果糖をもった糖に変化(異性化)させた糖です。低温で甘味が強く固形化、粉末化が難しく主に液糖として清涼飲料水に工業的に使われます。水分活性を低くし、湿潤作用があり利用しています。
異性化液糖には、果糖含有率が50%未満でブドウ糖の方が多い「ぶどう糖果糖液糖」、果糖が50%以上90%未満の果糖の量が多く含む「果糖ぶどう糖液糖」、さらに果糖の含有率が90%以上の「高果糖液糖」がありJAS規格で示されます。
砂糖はぶどう糖1分子と果糖1分子が結合した物質ですが、異性化液糖はぶどう糖と果糖の混合物であり果糖が多いと甘味がより強くなるという違いがあります。1g 当たりのエネルギー量は砂糖も異性化液糖中のぶどう糖も果糖もほとんど変わりありません。
果糖(フルクトース)は、体内では、エネルギー源となり、ブドウ糖に変換したり、トリグリセリド(中性脂肪)の合成に利用されています。一旦ブドウ糖に変換してから後に、ひとつの過程を経て血糖値への影響を与えることになり、果糖が血糖値を上昇させにくい、吸収がゆるやかで太りにくいといわれる所以(ゆえん)となっています。
腸管からの吸収速度は、ブドウ糖より遅く血糖値を上昇させにくいといわれますが、代謝速度は、ブドウ糖より速く、太りやすいともいわれているのです。吸収速度は、ガラクトース(単糖類)110、ブドウ糖100、果糖43の順になります。小腸から吸収した果糖は直接インスリンに依存せず肝臓で主に酵素フルクトキナーゼによってジヒドロキシアセトンリン酸とグルセロアルデヒドに分解しています。一部のグルセロアルデヒドは、グリセロール、そしてα-グリセロリン酸に変えられて、中性脂肪(トリアシルグリセロール)の合成に利用されます。中性脂肪を加水分解する酵素リポ蛋白リパーゼは、インスリンの分泌によって働きを左右しています。
ほとんどのフルーツには果糖が含まれていますが、たとえば、りんごに含まれる果糖は糖全体の4~5割近くあるのに対し、バナナ、みかんは多くがショ糖、ブドウ糖です。果糖を多く含む果物は、冷やすと甘味が増します。
果糖の多い果物 りんご、日本梨、西洋梨、びわ、ぶどうなどです
果糖の少ない果物 桃、すもも、みかんとなります。
付け加えて糖度の高いフルーツは、ショ糖の多いバナナ、柿の類です。
果糖・ブドウ糖共に多いのはブドウなどです。
果糖は、フルーツ内部の温度が10℃前後でもっとも甘さを強く感じるといわれます。冷やしすぎもよくありません。温度が果糖では40℃で砂糖とほぼ同一ぐらいに感じるといいます。
Glycemic index(GI:血糖指数)があります。
炭水化物は、最終的にブドウ糖(グルコース)まで分解されるのでブドウ糖を100としてGI値を定める時の指標にしています。
食品100gあたりで
・ブドウ糖(基準):100、・麦芽糖:110 砂糖:50~59、果糖:20
・精白米飯:85、胚芽米飯:70、玄米飯:50~55、・もち: 85 ・食パン:95 ・フランスパン:95 ・パスタ:65 ・全粒粉パスタ:50 ・うどん:50 ・ソバ:54 ・中華麺:61
・じゃが芋(ゆで):70 ・果物:40~60 ・バナナ:60 ・りんご:40 ・オレンジジュース:50 ・緑黄色野菜:<30 ・牛乳:25 ・肉・魚類:40~50 ・バター:30
で果糖が、ブドウ糖より、からだへの吸収も遅く、ブドウ糖と同じエネルギー量なのに、甘味が1.5倍も強いので 甘さを求めるのに使用量が少なくて済む利点があります。血糖値も僅かしか上げないので欧米では糖尿病者用の甘味料として薦められたこともあるようです。
血糖値が穏やかに上がる食品を「低GI食品」として一般にGI値60以下としています。注意したいことは、精白米飯50g、りんご150gで80kcalになるということで、果物の摂取も、一般に一度に摂取する量、さらに果物によって果糖を含む量が異なることを考えることも大切です。
炭水化物が吸収され、精白した米、小麦などで作られた食品は食品の組み合わせによって吸収を穏やかにすることもできますが、過剰摂取では、高血糖のまま長時間推移することになります。
果糖の過剰摂取では、中性脂肪に変換され、その増加を招き、やがては肥満につながり、肥満はインスリンの分泌の不足により血糖値の上昇をまねくことになるようです。
ブドウ糖が血液中に過剰になることにより血糖上昇に影響を与えています。 果物が血糖値を上げにくいといわれていますが過剰摂取により脂肪の蓄積につながり、肥満の原因に、やがては、インスリンの分泌不足に、つながります。肥満は、糖尿病の予備軍です。
中性脂肪に変換された果糖は、絶食時、空腹時には、中性脂肪が加水分解されてできたグリセリン〔グリセロール〕からグルコース〔ブドウ糖〕が肝臓で糖新生〔糖以外のものからグルコースを生成する〕しています。その結果、果糖が最も肝臓に脂肪が蓄積することが分かったのです。
血糖値を下げるのは、果物に多く含むペクチン(食物繊維)の作用によることにもよります。
ショ糖(砂糖)は、体内で胃の中で分解し果糖とブドウ糖になり小腸で吸収され、果糖がいったん中性脂肪に、ブドウ糖はグリコーゲンとして肝臓に蓄えられ随時エネルギー源として脳の活性化に重要な働きをしています。そしてインスリンの作用を受け血液中の値を一定に保たれています。果物も果糖の含む量を知ることもよいですし、やはり適量の摂取が望ましいのではないでしょうか。
国連機関の消費量統計によれば、日本人の一日一人当たりの果物の消費量は150g弱で、消費量筆頭の中米のベリーズ(約700g)の約5分の一です。諸外国に比べ果物の摂取量は少ないといわれています。日本人は、飢餓に強い民族といわれ、近年の飽食の時代では糖尿病になりやすい民族でもあるようです。果物の摂取量が少ないといわれていますが、中米などに比べスイカ、みかん、りんご、柿などに見られるように、野菜のように殆ど全量が食用にできるわけではなく、廃棄率、価格が高くなっています。果物だからといってすべてが果糖というわけではありません。
メタボリック・シンドローム対策としては、精白の少ない食品、そして食物繊維を多く含む食品で野菜類の積極的摂取が望まれるようです。果物でもやはり、過剰摂取を避けて適量の摂取が望まれます。