2024/12/16
・巨匠のもとで水墨画を学ぶことになった大学生の霜介が、作品との向き合い方や一門の人々との交流を通して、自身の忘れがたい過去を乗り越えていこうとする話。
・10分に1回以上は何かしらの事件が起きる。多少の唐突さは引きに利用している。会話の中の話題をあえて完結させず中だるみを避ける。
・見やすさに特化したテクニックが満載で、エンタメとしての完成度が高い。
・三浦友和、横浜流星、清原果耶、江口洋介、主軸の配役の的確さに凄みを感じる。
・特に江口洋介の江口洋介力みたいなものがさすがだった。気のいいおっちゃんから気鋭の存在まで、いつもの江口洋介のままで役割の変化に完全に対応している。
・筆で線を引くというフィジカル要素の強い描写を、少なくとも素人目には嘘臭く感じさせないように見せてくれる。どういうバランスで撮影しているんだろう。
・題材となる水墨画。一見、シンプルに見えるぶん、寓意や哲学的な要素と結びつけやすい。
・「自分の線は自分で見つける」とか。
・水墨画のサークルで、初めて描いたであろう生徒たちの竹がそれなりに上手い。
・極めれば深いんだろうけど、四君子最弱の題材なのかも。
・弟子を取った理由、湖山先生も説明はしているんだけど、教え方から何から言葉で伝えるのが下手という点で一貫している。
・唐突さで言えば「空から女の子が降ってきた」と同じような始まり方なんだけど、それでもなぜ選ばれたのかわかるようになっている。
・何かを失ったからこそ得られた機会。こういうのがあるかないかで、作品に対する信頼度がまるで変わる。
・両親いないのにどうやって大学の学費を払って一人暮らししているのかは少し気になったけど、枝葉末節の範囲か。
・写実性の高さもその人となりでいいんじゃないだろうか。線が生きているかどうかみたいなスピリチャルな評のほうが危なっかしい気はする。
・とは言え、椿に生死のイメージを託して河川敷のシーンにつなげるのはとてもきれい。
・一人では向き合えない過去でも、二人なら乗り越えられたりする。恋愛よりももっと根本的な人と人が交わる意義のようなものを描いている。奥が深い。