【サッカーが下手なヤツラにとっての希望の星】
※とあるインタビューの内容です。
なんつったってオレは周知の通り超のつくド下手だからな。それこそアンドレア(・ピルロ)みたいに上手いなら話は別だが、そうじゃないオレはもう走るしかない。人の2、3倍なんてレベルじゃないぜ。
技術だけなら精々セリエCの水準でしかないオレがAに辿り着くにはだな、それこそ少なくとも人の10倍は走る必要があったんだよ。マジで。そうでなけりゃこの超ド級に下手なオレがあの名門ミランに入って、イタリアを制して、CLにも勝って、挙げ句にW杯まで勝っちまうなんて、奇跡は絶対にあり得なかったよ。
「ド下手がジダンに立ち向かう術とは?」
「とにかく、グラスゴーでの1年(97/98シーズン)は何物にも代え難い経験だった。そのときの魂は遂に引退まで僅かさえも霞まなかったしな。
要するに、強靭な意志さえあれば誰だって目指す場所に辿り着ける。大切なのは、徹底して勇猛に戦い抜くこと。スピリットさえ持ってりゃぁ“タマ際に弱い”選手にはなり得ないわけよ。
競り合う相手が2メートルの化け物みたいな体躯の野郎でもオレは負けなかったし、むしろぶっ飛ばしていただろ? つまり、強靭な意志なくして“メディアーノ”は絶対に務まらないんだな。
でも、激しく走り続けたせいで、さすがのオレも身体はもうボロボロになっちまった……。一方で、我が盟友・アンドレアの野郎は35でも、まだ優雅に軽やかにプレーしてやがる。うらやましい限りだよ(笑)」
「つまり、君が考えるボランチに必要な技術的な要素とは?」
「気合い。これだけさ(笑)。このガットゥーゾが相手にしてきたのはジダンであり、CR7(クリスティアーノ・ロナウド)であり、あるいはロナウジーニョ、メッシだぜ。まともに渡り合える相手じゃないだろ?
しかも、何遍も繰り返すが、喋ってんのはド下手なガットゥーゾだぜ。そんなヤツが対ジダンに一体どう立ち向かってくか。そりゃぁ、気合いしかねぇってことになるんだよ(笑)。
ミラン時代のこと。あのアンドレア(・ピルロ)と一緒に練習する度に思ってたんだよ。“こいつの巧さはマジでヤバいぜ”と。さっきも言った通り、そんな超一流のヤツらとの差を埋める手段でオレが持っているのはただひとつしかないとね(笑)」
【“気合い”。闘犬らしい表現でボランチの哲学を語ったガットゥーゾ。】
『サッカーが下手なヤツラにとっての希望の星』なんだぜ、と(笑)。こんなにも下手なオレがW杯を獲れたんだ。そこら辺でボール蹴っている世界中のヤツらにも可能性があるってことだからな」