何万字と言われる中国語の漢字の中でも、最もシンプルなのが「一」。日本語と同じく、「ひとつ」の意味で、最初に子供が習う漢字です。しかし、この漢字に含まれる意味は、単なる「いち」だけでなく、更に奥深いものを含んでいるのです。
「一」は、中国哲学が認識する「宇宙の始まり」を表しています。神話によれば、宇宙が創造される前、説明のつかないような、無定形のかたまりが存在し、そのかたまりが爆発して数々の物質を形成したと伝えられています。
道教の創世説も、似たような認識をもっています。宇宙の始めの状態は、ひとつの虚無の境界で、そこから全ての世界、次元、生命が派生していったと考えられているのです。女性(陰)や男性(陽)が生まれる前は、完全なる「いち」であり、それはあまねく存在する「力」で、永遠です。それをすなわち「道」と呼びました。
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