木村龍治先生から、今年も年賀状が届きました。
・・・ほっとしました。
・・・先生のお体を心配していたので・・。
木村龍治先生は、東大の名誉教授。気象予報士会会長も歴任された方で、
私のような田舎の整体師がご縁を得る機会など、あり得ないのですが、
~~今から22年前のこと、
当時の私は、人の体について、次のようなことを考えていました。
「自然界は重力が働き、リンゴは木から落ちる(ニュートン力学)」
「人は皮膚で包まれ、皮膚の内側は液体に満たされている」
「水環境で発生する体内の力学的現象は、流体力学から学ぶところが大きい」と。
整体という仕事は、体の外から体内環境に働きかけをします。
「流体力学を知らずして、優れた整体師にはなれない」
そう考えた私でしたが、 流体力学なんて全く無知。
一から勉強を始めた私に、やさしく解説して下さったのは、
「流れの科学・自然現象からのアプローチ」という本でした。
その本の著者が、木村龍治先生でした。
私は、著者へのお礼を伝えたく、出版社宛てに手紙を書きました。
その手紙の中に、
「回転椅子の実験がよく理解できない」などの疑問を書いたりしました。
~~すると~~~、
・・しばらくして、、、、
著者の木村龍治先生から、お手紙が届いたのです。
「説明してあげるので、東大の研究室をお訪ね下さい」と。
・・・ビックリ ッ・・!!!!!
東京大学海洋研究所という建物に到着し、案内板を見上げると、
木村龍治先生の名前は、一番上の段にあって、
一瞬、ビビリながら、古い建物の階段を登り・・・、
古い研究室の一室に、先生はおられました。
先生は私の疑問に対して、すでに、
実験の道具を用意して下さってました。
説明のビデオも用意して下さってました。
・・・・名も無き オバちゃん一人 に説明するために、、、です。
頭が下がりました。
「質問があったら、Faxでお答えしますよ」
と先生がおっしゃたのをいいことに、私は数回、質問状を送りました。
その度に先生は、図入りで丁寧に解説文を送って下さいました。
(当時は、インターネットが普及していませんでした)
今でも、その説明文は大切に保存してあります。・・インクの色はあせたけど。
2度目に先生の研究室をお訪ねしたとき、
先生には持病があって、お薬を呑んでいらっしゃることを知りました。
その日私は、「重力は回転しながら進むことはないか?」
と幼稚な発想を質問したのですが、先生は笑って、
「重力は垂直に働く。重力の周囲に発生するトルクと間違えないように」
と、私の手の触感から得た感想の誤りを戒めたのでした。
私が、先生への感謝の意を口にすると、先生は、
「ボクのような変わり者は、これからはもう出て来ないだろうねえ」
と言い、さらに、
「学生が、あなたのように熱心に食らいついてくれるといいんだけど」
とおっしゃって下さったのが、印象に残っています。
先生が「退職後は、放送大学で物理を講義する」とおっしゃったので、
私はNHKの物理講座を申し込み、テレビで授業を受けることが出来ました。
~~~先生の講義は、単純そうで、相当な労力がつぎ込まれた内容で、
病気をお持ちのお体を心配してしまいました。
私は、先生のご好意に応えたいと思いました。
貴重なご講義が成果として花開き、先生に喜んでいただきたいと思っています。
しかし私は、物理学を感覚的には理解するのですが、
「学問として数理的に理解出来ない」ことが分りました。
折角、先生が熱心さにほだされて、特別授業をして下さったのに、
それに応えることが出来ないことは、心寂しい限りです。
・・・人はそれぞれ、” 得手・不得手" があるのよ、ねえ。
代わりに私は、物理学を正統な学問としてではなく、
人の五感に翻訳して理解するという方法を採ることにしました。
たとえば、
手の触感は、熱の流れ、圧力の方向、流体の動きをセンサーします。
センサーしたものを、物理学の知識を応用して分析し理解します。
・・数理的ではなく、体の現象変化としての分析です。
整体手技は、体の現象変化を捉えながら、それをどう分析し、いかにコントロールするか、の技術が問われます。
そのためには、物理や流体力学の知識が役に立ちます。
今も私は、体の様々な現象に疑問や興味を感じたとき、
「改訂版 流れの科学」の本を読み直すことがあります。
・・つぶさに読んだ筈なのに、目からウロコの発見があったりして・・。
先生は今日も空を見上げながら、
自然界のデータ収集をしておられるかもしれません。
木村龍治先生のご健勝を
心よりお祈り申し上げます。
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