前回の「熱海編」を読み返してみて「今度こそ本を読もうと」という動機が「電車で熱海に」という結果に結びつくのは、あまりに突飛じゃないのか、我ながら。電車で本を読むとはかどるからって「熱海」まで行かなきゃならない理由は、考えてみたら何もない。こういうことが「考えて」みないとわからないところが、私の不徳の致すところでございます。
伊豆山神社境内からの景色。えらく登ってる。
いろいろ見て回っている内に、ここがパワースポットであると同時に縁結びの神社であることを知る。
なにしろ、ここは源頼朝と政子を結び付けた神社なのだ。北条氏というのは平氏であり、この二人はロミオとジュリエットよりも、もう少し気まずい仲であるはずなのだ。それなのに、ここが逆に結びの神となる。僧兵(ここもまた明治の愚かな神仏分離の影響をうけている)が頼朝を守り、政子さんはここの神木なぎの葉をお守りに二人の仲を祈った、という。
そう言えば、若い女の子の集団が多い。一見東京大神宮のよう。なぎの葉やその苗も売られている。
二人が逢瀬をしたと言われる腰掛け岩。
手水場。
赤が雌龍、白が雄龍。これは真言立川流などでよく見られる。男性を象徴するのが骨と精子であるのに対し、女性を象徴するのは卵子ではなく、肉と経血であった。卵子という概念そのものがなかったのだ。
この山の地下には、雌雄の龍がいるらしい。そして、その口と目と鼻と耳から温泉が噴き出している、という。
神社をあとに、まっすぐに階段を下りる。境内から800段以上ある。階段は海まで続いていて、そこにこの走湯源泉がある。龍の口にあたる。窟の奥からゴボゴボと源泉の湧く音がする。すみません、なんだか怖くて入れませんでした。ここ、なんかものすごい雰囲気があって、チキンなわたしには無理です。一人旅の限界を感じます。
昔の人がこういうのを見て、自分たちの世界とは別の世界の存在を感じ、信仰の対象にしたのも無理はありません。エリアーデを読むまでもなく。
つまり、海岸から立ち上がるこの山そのものが、なにやら別の世界とつながっているような、そんな感じのする場所なのでありました。
まあ、めでたし、めでたし、な旅だった、ここまでは。
ところが、さあ、帰ろうと思ったら、この源泉まで降りちゃうと、もう道がなくなっちゃう。海沿いを歩いて駅へ行こうと思ったんだけれど、海沿いの道は自動車専用道路。再び登らなければならない。いったい今日はどんだけ登ってるんだよ、と、しかも2日続けて。