中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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閑話休題:美術展に入選したが・・もう,恥ずかしくって

2010年07月02日 23時21分01秒 | 閑話休題:日々雑感

                      <会場の鎌倉芸術館>

     閑話休題:美術展に入選したが・・もう,恥ずかしくって

           2010年7月2日(金)

 朝から蒸し暑い.
 昨日は,思い切って丹沢の塔ノ岳を往復した.1ヶ月余り間を空けての登山だったので,翌日の今日になって,足が痛くならないか気になっていたが,どうやら危惧に終わった.私の足も,まだ十分とはいえないものの,まあ,まあ肉離れ以前の状態に戻ったようである.こんな嬉しいことはない.
 折角,親から受け継いだ命である.終焉に近いこの命,できるだけ活気に満ちた健康な毎日にしていきたい.そのためにも,また数日中に塔ノ岳に行こうと決心する.とはいえ,無理は禁物.週に1~2度程度かな.そんなわけで,とりあえず今日の所は,塔ノ岳はお休みにしておこう.
 さて,いよいよ,今日から鎌倉美術展である.先日,この展覧会がどんなところか全く知らないまま,無鉄砲に応募した.どうせ落選に決まっていると思っていたが,意外にも運良く入選した.望外の出来事である.同時に,自分の絵を見に美術展の会場に行くのが怖くて堪らない.とはいえ,いつかは見に行かなければならないので,思い切って初日の今日,午後から,会場を訪れることにした.美術展の会場は大船から徒歩7~8分の所にある鎌倉芸術館である.
 雨は降っていないが,梅雨時なので,どんよりと高曇り.やけに蒸し暑い.天気予報では局地的に強い雷雨があると報じている.私は折りたたみ傘と,プリンターインクの空ケースをいくつか持って,家を出る.大船に出る序でに,駅前のY電気に立ち寄って,プリンターインクを買い求める積もりである.
 暑いので,ズルをしてバスに乗る.何時もならば大船までブラブラと歩いていくのだが,今日はその気にならない.
 昼時の今頃,バスの乗客はほとんど高齢者である.バスの手すりに掴まりながら,やっと乗車してくる高齢者を気の毒に思うが,自分だって高齢者じゃないか.端から見たらお前だってヨボヨボして居るぞと言われそうなことに,ハッと気がつく.

 やがて,大船に到着する.まずはY電気でプリンターインクを購入する.何時ものことながら,インクが機種ごとに違うので,どれを購入して良いか何とも紛らわしい.プリンターメーカーも,ただ印刷速度や画質を競争するだけでなく,この面倒臭さをなるべくなくす方向で競争して貰いたいものだ.
 ついでに,夏モデルのパソコンを一通り見て回る.早速店員が近付いてきて,あれこれと説明しはじめる.まだ,パソコンを買い換えてから数ヶ月しか経っていないので,今のところ新しい機種を購入するつもりはない.ただ,どのノート型パソコンも,殆どがテンキー付になってしまったのは残念である.
 私の場合,数字入力などほとんどない.従って,テンキーは不必要だし,テンキーがあることによって,自分の座る位置が,パソコン画面の中心から左に少しずれてしまうのが気になる.

 美術展の会場に早く行きたいが,自分の絵を見るのは,何となく怖い.まるで受験生が合格発表の掲示を見に行くのと同じような気分になる.私は,急ぐような,急がないような,あやふやな気分で,鎌倉芸術館へ向かう.
 会場に入ってビックリした.会場には,平日にもかかわらず沢山の方々が集まっている.私は会場入口に付いた途端に,もう気後れしてしまう.まるでドブネズミのようにオズオズしながら,恐る恐る会場に近付く.



 受付には,闊達そうなご婦人が,数人座っておられる.記帳する人が数名並んでいる.並んで待つのも面倒なので,種転写一覧表を貰わないまま,ズルズルと会場に入ってしまう.
 いくつかのブースに分かれた会場は,それほど広くはない.今年4月に開催された神奈川美術展に比較すると,規模は何分の1かに過ぎないようである.ただ,展示物を見て驚いた.
 粒ぞろいの作品が2段にビッシリと展示されている.鎌倉地区のローカル新聞によると,今回の鎌倉美術展には,公募を含めて400点ほどの作品が陳列されているようである.
 どの作品も,とにかく素晴らしい.ガ~ンと圧倒される.
 「よくもまあ,こんな素晴らしい作品に混じって,私のヘボ絵が入選したものだ・・」
 私は入選した喜びよりも,劣等感と違和感が先に立ってしまう.そして,この会場で,自分の絵に遭遇するのが,とても怖くなってくる.人物画,静物画,風景画,抽象画などが多いが,私の絵のように山を題材にした絵は,ほんの数枚しかない.題材という点から見ても,私の絵は会場の雰囲気から,大分,浮いた存在のように思えてくる.それに,
 「何と,まあ,貧弱な絵だろう・・私の絵は・・」
 私は会場からそっと消えたくなるほどの劣等感ショックを受ける.“ガ~ン”である.
 大体,私の絵は20号.いかにも小さすぎる.どうせ描くならば30号程度の絵を描かないと・・大きさだけでも,何とも見劣りがしてしまう.それに,私の絵は雑ぱくで,全く迫力がない・・というか,パンチ力という点で,著しく物足りない.
 私は自分の絵を遠くから一瞥しただけで,自分の絵の前に立つのも恥ずかしくなる.こんなヒドイ絵が,よくもまあ入選したものだ!
 「ああ,ハズカシイ! 応募しなければ良かった!!」
私は少なからず後悔する.そしていたたまれないほどの恥ずかしさに苛まれる.
 「あんな絵,直ぐにでも会場から持ち去りたい・・」
と猛烈に思う.
 そのとき,主催者から頂戴した案内書を思い出す.案内書には,
 「入選した作品は会期中には撤去できない・・」
という注意書きがあった.
 多分,今の私と同じような思いに駆られる人が,他にも居るのだろう.だから,こんな注意書きがあるのだろう・・・そう思うと,いくらか気が楽になる.


<ハズカシイ絵>

 ともあれ,こんなハズカシイ絵の前で,顔見知りとは会いたくない.私は,消えるようにスゴスゴと会場を後にする.まるで溜池に嵌った“ずぶ濡れネコ”のような気分である.
 「ああ・・こんなことなら,あちこちにメールをして『見に来て下さい』なんて,言わなければ良かった・・!!」
 できれば,こんな哀れな姿は,誰にも見られたくない.みぞおちの辺りから,変に堅いゴムまりが突き上げてくるような妙な気分になる.
 自分の絵の未熟さ,努力の足りなさ,弱々しい表現,何一つ良いところがない・・私は虚脱状態で蒸し暑い道路に出る.このまま家に帰る気にもならない.私は虚脱感を抱いたまま,隣のイトーヨーカ堂に入る.店内は冷房が効いていて気持ちがよい.特段,買いたいものもないので,ぼんやりとその辺りを眺めながら,店内をさまよう.

 時間が経つと,少し冷静になる.
 「何も恥ずかしがることはないじゃないか.とにかく入選したんだから・・仮に一番ビリでも,入選は入選じゃないか・・・」
と,私の心の奥底に住んでいるもう一人の私が,私を勇気づける.
 「そうだ! 五十三次洛遊会の懇親場の場所を確かめなければ・・・」
私は無理に用事を思い出して,用事以外の雑念を無理矢理どこかへ封じ込める.
 五十三次洛遊会懇親会世話役のAKさんから,会場候補の某イタリアンレストランの場所を,携帯メールで教わっている.文字情報で教わっているので,携帯メールを見ながら,それらしい場所を尋ね歩く.
 場所はすぐに分かった.もう昼時を大分過ぎているが,お店は結構,繁盛している.数名の客が外で順番を待っている.どうやら美術展に関係している方々のようである.
 店先に置いてある料理のメニューを眺める.コース料理は結構高級.私の身の丈には合わない高級店のようである.
 生来,がさつな私には,何とも高級で,落ち着かない勿体ない店のように思える.
 
高級店で飲み食いできるのは幸せといえるだろう.
 「何で,オレは何時も,何時も,ケチケチしているんだろう・・」
と,もう一人の私が,私を罵倒する.そんな自分自身が,とても哀れになる.
 どうやら,このお店の料理は,大変美味しいという評判のようである.


 数日後に,大学時代の友人,I画伯が私の絵を見に来る.ハズカシイ.困ったな.でも,Iさんの忌憚ないご意見も,是非,拝聴したい.
 今回味わっているような,気恥しさも,これからの私の絵のための糧になる筈.そう思うと,いくらか気が楽になる.
 「もっと,もっと,沢山の絵を描いて,努力しなければ・・」
と,今は思っている.

 大船駅前で,またもや行きつけのお店でコーヒーを賞味する.
 「・・お前,ワンパターンだな・・」
と誰かに言われそうである.


                               (おわり)
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